よく似た用語である「返品・値引・割戻・割引」について考えてみました。

【返品・値引・割戻・割引の意義】

基本的事項ですが、細心の注意を払うべきです。

いずれも仕入や売上代金の減額ですが、簡単な内容をおさえましょう。

(意義)
返品……取引の取消
値引……キズ等
割戻……量
割引……期間



【返品・値引・割戻・割引の取扱い】

「返品・値引・割戻」は仕入・売上の控除項目です。

「割引」は、利息の性格を有し、仕入割引(営業外収益)とします。
*売上割引は収益認識基準により収益からの控除に変更されています。

(取扱い)
返品、値引・割戻……売上・仕入から控除
仕入割引……………………営業外収益(仕入割引)


【原価率算定上の取扱い】
*結論は「売上値引・割戻」だけ控除しない

(個別の取扱い)
売上返品……売上から控除
売上値引……売上から控除しない(控除してあれば加算)
売上割戻…… 同上
売上割引……影響しない
仕入返品……仕入から控除
仕入値引…… 同上
仕入割戻…… 同上
仕入割引……影響しない



【売上値引・割戻を控除しない理由】

原価率の算定上の取扱いは、返品、割引はそれぞれ会計処理と同じですが、値引・割戻の取扱いが異なります。

仕入値引・割戻は、会計処理と同一です。

しかし、売上値引・割戻は、これを控除しないで原価率を算出する必要があります。

これは簿記の出題(推定簿記一般)で出さなければならない原価率が「当初の原価率」(予定原価率)のためだからです。

(例)原価80円の商品を100円で販売

もちろん想定される原価率は80%です。

その後に5円の売上値引を行ったとしましょう。

仕訳処理を並べれば、次のとおりです。

(借)仕 入 80 (貸)買掛金 80
(借)売掛金100 (貸)売 上100
(借)売 上  5 (貸)売掛金  5


この段階での売上勘定残は、95円で、仕入勘定残(=売上原価)は80円です。

通常は、問題自体がここからスタートします。

ここから当初の原価率80%を出すには、

売上原価80÷(売上95+売上値引5)=80%

という計算をしなければなりません。

売上値引・割戻が、原価率算定上、加算されることの意味を確認しておきましょう。



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