税理士試験 簿記論 講師日記

税理士試験 簿記論、財務諸表論、簿記検定の問題、学習方法等をアドバイス。

実現

実現とは何か(9)

実現主義は、伝統的には、資産の販売と貨幣性資産の受領をもって収益を計上しようとする考え方を意味します。
しかし、有価証券の評価益を実現概念によって説明するには、実現を実現可能(販売可能)に拡大し、有価証券を貨幣性資産と考える必要があります。
もっとも、なぜ、実現可能が実現と同じなのかといった素朴な疑問は残るでしょうし、また、有価証券を貨幣性資産とは必ずしも言い切れない面もないではありません。
企業会計の全体像を描きながらある特定の出来事を矛盾なく説明するのは、想像以上に難しいことといってよいのかもしれません。

概念フレームワークでは、このような混迷する実現概念の代わりに「リスクからの解放」という考え方を採用しました。
実現に対する混迷を受けて新たな概念を持ち込まれても、へなちょこ講師には、正直、よく分かりません(←こういうときだけ正直なんだよなあ)。
リスクからの解放という考え方が定着していくのかどうかも含めて、今後の課題ということにさせてください。
ただ、あくまでも大事なのは、実現概念そのものが混迷しているという事実そのものであることには充分留意する必要があるのではないかと思います。
わかっていないからこそ大事なこともあるといったところでしょうか。

アメリカにおいて、有価証券に関して原価主義による問題が露呈したのは、今から20年以上も前のことです。
その間、日本では、原価主義が維持された訳ですが、もちろん、時価主義を模索するような議論はありました。
下記のような税理士試験での出題実績は、このような議論の激しさを象徴しているといってよいのではないかと思います(っていうか、出すぎですね)。
ぜひ、模範解答を覚えるといったことではなしに、ご自分の言葉で、解答を考えてみてください。

(平成16年 第二問 問1 (2))
●(金融商品会計)基準が、………(4区分ごとの)評価基準の適用と評価差額の処理を要求しているのはどのような理由によるものか、……有価証券ごとに説明しなさい。

(平成12年 第二問 1 (1))
●収益の認識基準について、売買目的有価証券を例にとり、説明しなさい。

(平成11年 第一問 1)
●有価証券の経済的本質については、貨幣性資産とみる見解があります。この見解について述べなさい。

(平成8年第一問 3)
●市場性ある有価証券等の評価原則として時価主義を採用する考え方があります。これらの資産について、時価主義を求める根拠を述べなさい。

(平成4年 第二問 1)
●あなたは、取引相場のある株式を貨幣性資産であると考えますか、費用性資産と考えますか。いずれかを答案用紙の空欄に入れ、その理由を示しなさい。

実現とは何か(完)

実現とは何か(8)

企業は、出資者から資金(資本)を募り、その調達した資金(資本)を運用することにより、当初の資本よりも多い資本を獲得することを目指しています。
この場合の「当初の資本よりも多く獲得した資本」が利益であり、「その利益の出資者に対する還元」が配当です。
企業活動をこのような資本循環の過程として捉えるとすると、その資本の投下の過程にある資産が、非貨幣性資産であるといってよいでしょう。
そして、このような資本循環は、「販売」を契機に、回収へと姿を変えます。
資本の回収過程にある資産が貨幣性資産であるといってよいでしょう。

現金 → 商品 → <販売> → 売掛債権 → 現金

今、このような資本の循環を考えた場合、これを有価証券に当てはめるとどうなるでしょうか。

現金 → 有価証券 → <譲渡> → 未収金 → 現金

中央の販売と譲渡という言葉は、一般に商品については、販売という言葉を使うという違いがあるだけで、本質的な違いはなさそうです。
このような考え方をとれば、有価証券は、非貨幣性資産だということになりそうです(そう考える方もいます)。

しかし、買ってすぐ売ってしまうような有価証券(売買目的有価証券)について、上記のような商品(や製品)と同じような流れを想定するのはおかしいのではないかと考える人もいます。
むしろ、

現金1 → 貸付金 → 現金2

のように、間にある貸付金は、当初の資本(現金2)とさほど変らない形で存在し、また、すぐに現金2になるんだと考える人の方が多いといってよいでしょう。
このように考えれば、有価証券は、貸付金と同じように貨幣性資産だということになります。
私は、こちらの方が近いのではないかと思っていますが、皆さんはどちらがより正しいと思いますか。
そしてそれは何故ですか(って、聞くのね。こんなとこで聞くのね)。

実現とは何か(9)へ(で、つづくのね)

実現とは何か(7)

伝統的な意味での実現は、売上の場合には、「販売+貨幣性資産の受領」を意味しています。
このような「実現」の考え方では、有価証券の評価益を説明することはできません。
ただし、販売を販売可能に拡張し、有価証券を貨幣性資産と考えることができるなら、有価証券の時価評価を実現概念で説明することが可能でしょう。

それでは、貨幣性資産とは、一体なんでしょうか。
貨幣性というくらいですから、貨幣(現金)に近いものとはいえそうです。
「貨幣性資産」は、貨幣(現金)そのものないしは、将来、貨幣となる資産を意味しているといってよいでしょう。
このことを、商品について、購入(仕入)から売却(販売)までを借方の勘定科目で追って考えてみましょう。

現金1 → 商品(仕入) → <販売> → 売掛金 → 受取手形 →現金2

企業は、現金をもって商品を購入します。
この商品を販売(これが「収益の実現」でした)をもって、売掛金や受取手形という売掛債権を取得し、やがては、現金によって回収されることになります。

当初の現金,魑点にして、販売までが、費用性資産(商品)であり、終点の現金2までの資産が貨幣性資産(売掛金、受取手形)であるといってよいでしょう。
もちろん、現金は、どのような場合でも貨幣性資産です。

そもそも資産を貨幣性資産と非貨幣性資産(費用性資産)とに区分するのは、その資産が、資本の循環過程(上記の矢印のような過程)のどこに位置するのかで、その資産の評価を考えるためです。
資本の回収過程にある資産、すなわち、貨幣性資産であれば、収入額をもとに評価します。
また、資本の投下過程にある資産、非貨幣性資産(費用性資産)であれば、支出額をもとに評価しようと考える訳です。
このような議論を前提とした場合に、有価証券(売買目的)はどのように考えればよいのでしょうか。

実現とは何か(8)へ

実現とは何か(6)

伝統的な実現概念は、売上の場合には、商品の販売(引渡)時点で収益を計上します。
しかし、有価証券の評価益をこのままの形で説明することはできません。
そこで、実現を「実際の販売」だけでなく、「販売可能な状態」にまで広げる考え方、すなわち実現可能性概念が考案されました。

そもそも、実現主義は、その金額の確実性、計上収益の処分可能性を根拠に認められているものです。
現金やこれに準ずる資産(現金等価物)の受領がなければ配当や税金の支払いを行うこともできません。
実現可能性概念(基準)は、このような処分可能性の要請に適うものなのでしょうか。

収益を計上する場合の典型的な仕訳は、次のとおりです。

(借)資産××× (貸)収益×××

実現主義によれば、この借方の資産が、現金や現金に準ずるような資産(現金等価物)である必要があった訳です。
このような資産は、貨幣性資産とも呼ばれています。

有価証券の評価益を計上する場合の仕訳は次のとおりです。

(借)有価証券××× (貸)有価証券評価益×××

この仕訳を実現可能性概念によって説明するならば、借方の有価証券を貨幣性資産として説明する以外にありません。
有価証券を貨幣性資産と考えられるなら、伝統的な実現概念でも、〇饂困糧稜筺焚椎宗法椨貨幣性資産の受領(増加)として、有価証券の評価益そのものをうまいこと説明することができます。
ただ、有価証券が貨幣性資産なのかです。
そもそも貨幣性資産とは何なのでしょうか。
そして、有価証券(売買目的)は、果たして、貨幣性資産と呼べるのでしょうか。

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実現とは何か(5)

実現主義は、収益を実現時点で計上しようとする考え方を意味します。
伝統的に、「実現」とは、売上の場合でいえば、販売等の「具体的な出来事」を意味していました。
販売という外部との取引が行われた段階で収益を計上すれば、その金額は、恣意性の入らない確実なものですし、また、販売等と同時に現金等を受領する訳ですから、配当や税金の支払いに困ることもないからです。

しかし、アメリカにおいて、現実的な問題(有価証券を運用する一部企業の破綻)から有価証券を時価評価することになりました。
しかし、その根拠付けの理論がきちんと整理されていたのかというと、必ずしもそうではありません。
もちろん、現実的な不都合があって、有価証券を時価評価する以上、後追いであったにせよ、今までの損益計算の論理からその有価証券の時価評価を説明する努力は必要でしょう。
そして、その動きは、ありました。

一つの試みは、有価証券の時価評価(特に評価益の計上)を実現概念(の延長)で説明しようとするものです。
伝統的な実現は、「資産の引渡+現金等の受領」で収益が実現したと考える訳ですが、この論理を有価証券の評価にもあてはまるように、実現概念をゆるやかに解釈しようとする試みです。
このような考え方は、実現可能性概念(基準)などと呼ばれます。
実現を「販売」ではなく、「販売可能」という状態にまで拡張したのです。
有価証券について、取引市場があれば、売れるということは間違いないでしょう(もちろん値段の問題はあります)。
そして売却することに何らの制約(子会社の株式を簡単に売る訳にはいきません)もなければ、もはや「実現」と同じではないか、というのが実現可能性概念(基準)の基本的な考え方といってよいでしょう。
実現可能性、うーん(←唸ってます)。
実現可能ってのは、実現と同じなんでしょうか?
実現可能は、実現なんでしょうか?(←誰に聞いてるんだか)。

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実現とは何か(4)

企業会計上、費用及び収益は、その発生時点で計上されます。
ただし、収益については、実現主義が適用されます。
売上の場合でいえば、商品の販売(引渡)と現金等の受領のタイミングで収益が実現したことになります。
収益について、実現主義が適用されるのは、収益について、処分可能なもの、確実なものを計上しなければならないという制度上の要請があるからです。
このような損益計算の体系のもとで、未実現利益が計上されることはありません。
いいかえれば、未実現利益を計上しないことが、実現主義であるといってもよいでしょう。

今まで、企業会計の一側面、財務諸表でいえば、損益計算書の面を考えてきました。
では、もう一つの財務諸表である貸借対照表の面から眺めるとどうなるでしょうか。
企業会計上の重要な課題の一つに資産(負債)の評価額をどうするかという問題があります。
伝統的な(今までの)企業会計では、資産を取得原価で評価することとされていました。
このような考え方は、原価主義(取得原価主義)と呼ばれます。
取得原価主義によれば、資産の評価額は、取得原価を基礎に算定されますので、評価益(つまりは、未実現利益)が計上されることはありません。
取得原価主義は、未実現利益(評価益)を計上しないことを根拠に採用されているといってもよいかもしれません。
取得原価主義は、実現主義との相性がよく、このことを、「原価−実現主義」と呼ぶ人もいます。

資産が取得原価で評価され、それで大きな問題がないならば、それでよいでしょう(ちょっと前まではそれでよかった訳です)。
しかし、現実に大きな問題が起こりました。
原価主義は、取得原価を資産の評価額とする方法ですから、多少、資産の値段が下がっても、その資産を売却しない限り、損が出ることはありません(低価法や減損の話はひとまずおいておきます)。
このことを悪用していた企業が巨額の含み損を抱えて、相次いで破綻するという事例がアメリカで起こったのです。
この出来事をきっかけにアメリカでは、有価証券をはじめとする金融商品を時価評価するという方向に動きました。

有価証券を時価評価するという話は、必ずしも理論上、そうすべきだというところからスタートした訳ではありません。
現実に不具合が生じたから有価証券を時価評価することになったのです。
それに対する理論は、いわば後付です。
その後付けの理論の整備が困難を極めています。
意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、未だに、誰もが納得いく形で体系的な整理がされている訳ではないのです。
ですから、実現に対する理解も、この整理されていないという状況を整理することこそ大事なのだということは、知っておくべきかもしれません。

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       <管理人の記事掲載号>  会計人コース2011年9月号-                  会計人コース2008年02月号                  会計人コース2008年01月号                  会計人コース2007年09月号 <管理人の本>
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