税理士試験 簿記論 講師日記

税理士試験 簿記論、財務諸表論、簿記検定の問題、学習方法等をアドバイス。

分配可能額

分配可能額と剰余金の配当(完)

会社法では、剰余金の配当や自己株式の取得に一定の金額的な限度を設けました。
剰余金の配当等に対する統一的な財源規制のハードル、それが「分配可能額」です。

分配可能額は、剰余金の額をスタートに計算します。
剰余金の額から一定の控除項目を控除して、分配可能額が計算されます。
分配可能額のスタートともいえる剰余金の額は、その他資本剰余金とその他利益剰余金の合計額です。
その他資本剰余金とその他利益剰余金の額は多分に会計処理の結果を反映したものといえるでしょう。
しかし、会社法では、「剰余金」の額の変動についての規定は設けています。
このことからもわかるように分配可能額は、会社法が自律的に定めているものです。

ここ数年、企業会計の制度は著しい変革を遂げました。
新たな会計基準がたて続けに公表され、その余波は今も続いています。
その変革のスピードには簿記論の講師もビックリです。
会社法は、企業会計制度の改革に対して、個別的な規定をおいて対応することをしませんでした。
むしろ、企業会計の変革に対応しないという形での対応をとったのです。
会社法は、表示以外の会計処理からは緩やかに手を引いたといったところかもしれません。

企業会計の変革から距離を置いた会社法。
その会社法に譲れないものがあるとすれば、それは会計処理ではありません。
それは分配規制です。
分配規制を自律的に会社法が定めている以上、法解釈の段階で、企業会計が口を出すべき余地はないでしょう。

会社法では、剰余金の配当を行った場合には、準備金の計上が義務付けられています。
同様の規定は商法にも存在しました。
商法では、その他に配当可能利益の算出段階で、法定準備金の要積立額を控除することとしていました。
会社法では、分配可能額の計算上のこれに対応する規定はありません。
会社法にこれに対応する規定がない以上、準備金の要計上額を控除する必要はない。
準備金の要計上額を加味して剰余金の配当可能額を求める必要はない。

会社法が苦手であまり好きではない税理士試験の簿記論の講師が出した結論です。

分配可能額と剰余金の配当(完)

分配可能額と剰余金の配当(9)

平成13年の商法改正により減資差益が、資本準備金から外れました。
その結果、それまでは、配当不能であったものが配当可能になったのです。
その後、平成18年に商法は会社法に衣替えをしました。
利益の配当は、剰余金の配当へと姿を変え、配当可能限度額は、自己株式の取得限度額も抱合する分配可能額へと改められています。
剰余金の配当には、従来の利益配当以外にその他資本剰余金の配当も含まれます。

企業会計原則の制定以前、商法は、現在の資本準備金相当額のうち積立限度額(資本金の4分の1)を超える部分を配当可能としていたようです。
それが企業会計原則の制定の翌年(昭和25年)の改正で、これを配当不能としました。
払込資本のうちの資本金超過額の分配の可否については、当時も問題となったようです。
詳細を検討した訳ではありませんが、企業会計原則の論理を商法が受入れたといってよいのかもしれません。

かつて、商法が企業会計原則を受入れたとすれば、これと同じように、今、企業会計は、会社法の論理を消極的にではありながらも受入れているといえるのかもしれません。
分配規制は会社法のみが律する。
企業会計はそれに口を挟むべきではない。
その他資本剰余金とその他利益剰余金の配当をいずれも「剰余金の配当」とする会社法の論理に企業会計が口を挟むべき余地はない。
私にはそう思えます。

実質的な資本の払戻したるその他資本剰余金の配当。
企業が獲得した成果としての利益の処分たるその他利益剰余金の配当。
この異質にしか思えない両者を「剰余金の配当」として会社法は一本化しました。
立法過程においてならいざしらず、法の解釈段階でそのことに企業会計が口を挟むべきではないのでしょう。
会計が口を挟むのは、そのような行為が行われたときに「どのような会計処理を行うのか」だけなのではないでしょうか。

剰余金の配当についも同様に考えざるを得ないように思えます。
分配可能額とは別個に剰余金の配当限度額は存在しない。
会計が顔を出す局面は限定されるハズです。
それは、会社法上の正当な行為が行われた場合に「どのような会計処理を行うのか」だけなのではないでしょうか。

分配可能額と剰余金の配当(10)

分配可能額と剰余金の配当(8)

平成13年の商法改正により、減資差益(資本金減少差益)が資本準備金ではなくなりました。
資本準備金は、処分不能な法定準備金(現在の準備金)の一つです。
その資本準備金から外れることは配当(当時は利益の配当)の財源にも含まれることを意味します。
減資差益はあきらかに払込資本です。
それが利益配当の原資に含まれる。
その事にとても驚きました。
当時は、自己株式の取得解禁が大きくとりあげられていました。
しかし、この減資差益の資本準備金からの除外の方が会計にとってはより大きなインパクトを持っていたといえるかもしれません。

昭和24年に制定された企業会計原則の一般原則第三は、次のように規定しています。

「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。」

前半は資本取引と損益取引の区別を要求しています。
株主との直接的な取引(資本取引)を通常の営業活動による資本の増加取引(損益取引)としてしまっては困ります。
これは、典型的には資本取引(例えば増資取引)を損益取引(例えば売上)とするのはダメということでしょう。

(1)増資
現金預金××× 資本金×××

(2)売上
現金預金××× 売 上×××

増資と売上を混同すれば、損益計算書も、貸借対照表もメチャクチャです。
とくに資本を収益に計上して、その分の利益が増え、これを配当してしまうのはとてもまずいです。
これはもっともな事でしょう。

後半は、維持すべき資本としての資本剰余金と処分可能な資本としての利益剰余金との混同をきらったものでしょう。
企業活動の成果としての利益と資本を取引段階できっちりと分けなければ、正しい損益計算も正しい財政状態も示すことができません。
そしてその後においても株主からの拠出資本である資本剰余金を利益剰余金と混同して分配するような事があってはならない。
きっとそんな事をいっているのでしょう。

分配可能額と剰余金の配当(9)

分配可能額と剰余金の配当(7)

会社法上、分配可能額は、会計処理とは必ずしもリンクしない金額的ハードルに過ぎません。
これに対して剰余金(その他資本剰余金とその他利益剰余金)の額は、会計処理の結果もたらされるという側面があります。
この点を捉えると繰越利益剰余金やその他資本剰余金を準備金の計上額だけマイナスにするのはおかしいとの考えもあるでしょう。
もちろんそのような配当政策を経営者としてとるべきではないというのも一つの考えです。
また、本来はマイナスが想定しにくい勘定をマイナスにしてまで配当するのはいかがなものかという考え方も大いに頷けます。
剰余金の配当のあるべき姿を語るならばこれらの考え方を考慮する必要はあるかもしれません。
しかし、会社法上、それが許される行為なのか否かは会社法のみをもって語られるべきでしょう。
剰余金の配当そのものが会社法上の行為である以上、剰余金の配当も会社法のみをもって律せられるべきです。
剰余金の配当に関して会計が登場するのは、剰余金の配当が行われた後の会計処理だけではないでしょうか。

分配規制では、会社法の規定は絶対的な意味を持ちますが、その後に行われる会計処理は会計にゆだねているという側面があります。
会社法の許容する範囲(分配可能額)で剰余金の配当を行った。
その結果、その他資本剰余金やその他利益剰余金がマイナスになった。
そのこと自体は、どうでもよい。
会社法の態度は、誤解をおそれずにいえばそんなところではないでしょうか。
その会計処理は、会計の側で考えるべきでしょう。
剰余金の配当という会社法上の行為の限度額を会計の側で律することはできません。
また、その必要もないのではないでしょうか。

同様の問題は、その他利益剰余金内部においても生じ得ます。
その他利益剰余金を細分(別途積立金等と繰越利益剰余金)している場合です。

この点を「解説」では、次のように説明しています。
「実務上は、その他利益剰余金の内訳をさらに細分し、任意積立金(別途積立金その他の名称が付された科目)を計上している場合があり、通常、それについては、剰余金の配当の原資には充てないものとする取扱いがされている。そして、任意積立金以外の部分、すなわち「繰越利益剰余金」が、配当しようとする額に不足している場合には、任意積立金の取崩し……によって、剰余金の配当を行うという場合がある。
しかし、このような行為は、分配可能額の変動とは関係のない行為である点に留意する必要がある。分配可能額の算定における剰余金の取扱いに係る規律は、剰余金全体の額のみを問題とするものであり、その他利益剰余金につき細分された各項目の額については、一切規制を加えるものではないからである。」

会社法では、分配可能額こそが剰余金の配当等に課せられた唯一の金額的ハードルです。
その結果として行う会計処理は、会社法の関心外にある。
分配可能額の全部を配当すれば、準備金の計上により、その他資本剰余金やその他利益剰余金(繰越利益剰余金)がマイナス(借方残)になることはあり得ます。
その場合にいかなる会計処理を行うかは、企業会計の問題でしょう。
企業会計が顔を見せるのは、剰余金の配当を行った後の会計処理であり、それ以前の金額の決定については、会社法の規定に服するのみというべきでしょう。

分配可能額と剰余金の配当(8)

分配可能額と剰余金の配当(6)

さて、これまでみてきた内容が窺い知れる「解説」の記事を引用しておきましょう。

「……計算規則177条では、剰余金の額について、分配規制の趣旨である、株主と債権者との利害調整という役割に着目しつつ、将来の会計基準等の変更に対しても柔軟に適正な対応(むしろ、会社法としては対応しないという対応)をすることを可能とするため、前記のような、会社が対外的な活動によって上げた利益を源泉とする「その他利益剰余金」と債権者に対して株主に払い戻すことについての承諾を受けているというべき「その他資本剰余金」との合計額をもって算定することとしている。」

「解説」の文章は、会社法446条の規定についてのものです。
会社法では、これまでに設けられていた引当金や繰延資産についての規定を置いていません。
資産や負債の評価にも柔軟な姿勢をみせています。
変革著しい企業会計の制度に応じて個別的な会計処理等の規定を置くことは、もはや困難なのでしょう。
会社法が会計処理から緩やかに手を引いている。
そんな印象を持ちます。
このことはもちろん資本(純資産)についてもいえるでしょう。

会社法上、資本について、重要なのは、資本金、準備金、剰余金というくくりでしょう。
企業会計上は、維持すべき資本と処分可能な利益の区別が重要と説かれます。
会社法では、「その他資本剰余金の配当」と「その他利益剰余金の配当」を「剰余金の配当」と一括しています。
このことからも伺えるように会社法上、重視されているのは、あくまでも「剰余金」というくくりなのです。
そのくくりさえしっかりしていれば、その内訳には、それほど大きな関心を抱いていない。
具体的な会計処理は、会計基準にゆだねる。
それが、会社法のとった道といってよいでしょう。

「解説」110頁に剰余金と分配可能額の関係が説明されています。
やや長くなりますが、引用しておきましょう。

「会社法上の分配可能額の算定に関する規定の構造は、剰余金の額の変動に伴う分配可能額の変動に係る規定と、分配可能額固有の変動事由に係る規定とに分かれている。
そして、剰余金の額に関する会社法446条は、期中の資本取引を含めて、各時点において、剰余金の額、すなわちその他資本剰余金とその他利益剰余金の合計額がどのように変動しているのかということについてのみ規定するものである。したがって、剰余金の額は、会社法の概念というよりも、一定の会計基準等に従って行われる会計処理の結果、決定される概念であるといえる。
他方、分配可能額に関する会社法461条は、分配可能額の算定の基礎となる剰余金の額から、何を減額するのか、またはどのような事態が生じたときに、何を加算しまたは減算するのかという、もっぱら会社法上の政策的な理由により求められる規律についての規定である。
両者が別々に規定されているのは、このような趣旨の違いによる。」

剰余金の額は、その変動が446条に規定されています。
しかし、あくまでも変動が規定されているだけです。
実際のその他利益剰余金やその他資本剰余金がいくらかなのかは多分に会計処理が関連します。
しかし、会社法の大きな関心事は両者の合計額である「剰余金の額」です。
そして分配規制のハードルを規定するのは、ただ会社法のみです。
分配可能額の算定にあたって控除する金額もあくまでも会社法上の規定のみによって規律され得るといってよいでしょう。

分配可能額と剰余金の配当(7)

分配可能額と剰余金の配当

急にはじめました「分配可能額と剰余金の配当」。

最初の記事は、こちらです。

「分配可能額と剰余金の配当(1)」


発端は、このブログで頂いたご質問にあります。

分配可能額と剰余金の配当可能額の問題でした。

会社法は、残念ながら得意ではありません。

しかし、自分が抱いていた認識とまるで異なるのでそのことをまたブログ内でお聞きしました。

そのときの記事は、こちらです。

講師だって教えて欲しい!!(分配可能額と配当可能額?)


しかし、回答はいただけませんでした。

で、自分なりに調べてみました。

それをまとめたのが「分配可能額と剰余金の配当」です。

結論は、分配可能額とは別に剰余金の要計上額を加味した配当可能額はないというものです。

お前の意見は違うというコメントもいただきました。

しかし、どこがどう違うのかわかりません。

とんでもない勘違いをしているのかもしれません。

しかし、仮に間違いだとしても根拠(と思えるもの)を呈示しながらその取扱いを語ることが許されないハズはないと思っています。

具体的なご意見等ございましたらコメント欄にいただると幸いです。

よろしくお願い申し上げます。

分配可能額と剰余金の配当(5)

仮に分配可能額の全額を配当した場合、その他利益剰余金(繰越利益剰余金)やその他資本剰余金は準備金の計上額だけマイナスになります。
会社法はこのような会計処理をどう考えているのでしょうか。

といっても会社法にそのような規定はありません。
会社法の規定や立法担当者の解説からどう考えているだろうかを伺うことができるだけです。

結論的には、会社法は、会計処理の事はあまり真剣に考えていないといってよいように思えます。
真っ先に思い当たる規定は、会社計算規則47条3項です。

「株式会社が自己株式の消却をする場合には、自己株式の消却後のその他資本剰余金の額は、当該自己株式の消却直前の当該額から当該消却する自己株式の帳簿価額を減じて得た額とする。」

自己株式の消却を行った場合の規定です。
自己株式の消却を行った場合は、自己株式の帳簿価額をその他資本剰余金から減額しろといっています。
消却直前のその他資本剰余金の金額がない場合もあるでしょう。
この場合には、「会社法上は」その他資本剰余金の値はマイナスになります。
同様の規定が「自己株式等会計基準11項」にあります。
そして12項にマイナスになった場合の対処規定があります。

会社法上、その他資本剰余金のマイナスがあり得るにもかかわらず、その対処は、極めてぼんやりとした会社計算規則50条3項の規定があるのみです。
このような規定ぶりから想像できるのは、会社法上のある種の無関心ではないでしょうか。
無関心がいいすぎならば、この点の会計処理は会社法以外(つまりは会計基準)にゆだねているといってよさそうです。

自己株式の消却時の会社法の規定を考えると、会社法は会計処理までをも自律的に規定している訳ではないことがわかります。
剰余金の配当時の準備金の計上もこれと同様のスタンスと考えるのが自然でしょう。

この点に関して、会計基準等はありません(たぶん)。
仮に自己株式等会計基準の方式(12項)をあてはめると次のような感じでしょうか。
繰越利益剰余金のマイナスはそのまま。
その他資本剰余金のマイナスは会計期間単位で繰越利益剰余金から減額。

剰余金の配当時の準備金の計上は、かつて準備金の「積立て」と呼ばれていました。
積立という言葉には、例えば手持ちの現金を貯金として積立てるというような「振替え」の要素が感じられます。
これに対して「計上」という語からは、振替え的な要素が後退しているようにも感じられます。
はっきりしたことはいえませんが、「積立」から「計上」への用語の変更には、もしかするとこのような意味も込められているのかもしれません。

分配可能額と剰余金の配当(6)

分配可能額と剰余金の配当(4)

会社法が剰余金の配当等に関して統一的に設けた規制のハードル、それが分配可能額です。
分配可能額と剰余金の配当の関係を具体的な会計処理で考えてみましょう。

繰越利益剰余金が110(繰越利益剰余金は、貸方残)で、同額が分配可能額という前提です。

(1)剰余金の配当を100行う場合
準備金の要計上額を加味して配当を行えば、次のようになります。
110×10/11=100……剰余金の配当
100×1/10=10…………準備金計上額

(会計処理)
繰越利益剰余金110 未払配当金100
           利益準備金 10

これはいいです。
繰越利益剰余金もちょうどゼロです。

(2)剰余金の配当を110行う場合
準備金の要計上額を加味せずに配当を行えば、次のようになります。
110………………………………剰余金の配当
110×1/10=11…………準備金計上額

(会計処理)
繰越利益剰余金121 未払配当金110
           利益準備金 11

貸方の未払配当金110や利益準備金11はいいとして、問題は借方の繰越利益剰余金121です。
剰余金の配当を行う以前の繰越利益剰余金は110なので、借方残高11になります。
つまりは、剰余金の配当に伴う準備金の計上額だけ繰越利益剰余金がマイナスになります。

仮にその他資本剰余金の全額を配当する場合も同様です。
会計処理は、かなり不自然になります。

簿記の基本を学習しはじめた当初、簿記では例えば、資産勘定をマイナス(貸方残)にすることをしない(嫌う)と習いました。
勘定にはそれぞれの性格があって、その性格に反するような記入を避けたいのかもしれません。
また、複式簿記が基本的には足し算を中心にし、できるだけ引算を減らすことで計算のミスを予防する仕組みをもっていることと関連するかもしれません。
このような計算方法(引算)は時に加法的減法とよばれることもあります。

いや、複式簿記の基本的な仕組みを考えるまでもないのかもしれません。
分配可能額全部の剰余金の配当を行い、繰越利益剰余金やその他資本剰余金がマイナス(借方残)になることは明らかに不自然です。
このような不自然な会計処理を「会社法は」どのように考えているのでしょうか。

分配可能額と剰余金の配当(5)

分配可能額と剰余金の配当(3)

会社法上、準備金の要計上額は、分配可能額の計算に影響しません。
剰余金の配当はあくまでも会社法上の行為です。
会社法(ないしは会社計算規則等)に規定がない以上、準備金の要計上額を配当できない根拠はないでしょう。

しかし、準備金の要計上額を配当できないとする記述は多いです。
以前、このブログでその根拠を教えてくださいとお願いしたのですが、回答はいただけませんでした。
何らかの回答をもとにすると考えやすいですが、ここでは、想定される根拠を考えつつ、検討を加えたいと思います。

まず想定されるのは、分配可能額の計算上、準備金の要計上額が控除されるとするものです。
すでにみてきたとおり会社法にそのような規定は存在しませんので、これは誤解でしょう。
やや紛らわしいのが会社計算規則の178条ですが、これはあくまでも最終事業年度後に行った剰余金の配当に関してのものです。

次に分配可能額の計算上は控除されないもののいわば剰余金の配当可能額が別途存在するとの考えです。
このような考えにも二つを区別する必要があるかもしれません。

一つは、準備金の計上が義務付けられている以上、当然にその分の配当はできないのではないかとする考え方です。
従来のあり方を踏襲すれば、とても自然かもしれません。
しかし、会社法上、準備金の計上と分配可能額が別途規定されている以上、それを勝手にリンクさせることはできません。
かつて配当可能利益の計算上、準備金の要積立額を控除したのは、その規定(商法290条)があったからです。
もちろん同様の規定を置くことは可能だったでしょう。
会社法でそれに該当する規定がない以上、不要と解釈せざるを得ません。

今一つは、会計処理等の会計の事情を加味したものです。
分配可能額は、剰余金の額を基本(スタート)にしています。
剰余金の額(例えばその他利益剰余金→繰越利益剰余金)を全額配当したとすれば、その会計処理はかなり不自然になります。
その他資本剰余金を全額配当した場合も同様で、会計処理に不自然さは残ります。

剰余金の配当は会社法上の制度です。
剰余金の配当を考える場合には、会社法の規定を無視する訳にはいきません。
会社法は、このような処理をどのように考えているのでしょうか。
会計処理を具体的に考えつつ歩みを進めたいと思います。

分配可能額と剰余金の配当(4)

分配可能額と剰余金の配当(2)

会社法上、剰余金の配当を定めているのは、453条です。

「株式会社は、その株主……に対し、剰余金の配当をすることができる。」

また、445条4項では次のように規定されています。

「剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金(以下「準備金」と総称する。)として計上しなければならない。」

剰余金の配当を行う場合には、配当財産の種類及び帳簿価額の総額を定めることとされています(会社法454条1項)。
この帳簿価額の総額は、分配可能額を超えることはできません(会社法461条)。
つまりは、分配可能額を超える剰余金の配当はできないことになります。

しかし、剰余金の配当を行う場合にこれに伴う準備金の計上額を分配可能額の計算上、控除しなければならないという規定はありません。
このような規定がない以上、分配可能額の計算上、剰余金の配当に伴う準備金の計上額を控除する必要はありません。

「解説」では、このことは、77頁において次のように説明されています。
「ソ猗金の計上と分配可能額
現行商法290条1項3号では、積み立てるべき準備金の額も配当可能利益から控除されていたが、会社法では、そのような手当てはされていない。」

旧商法では、配当可能利益(現在の分配可能額に相当)の規定と準備金の積立ての規定が別途存在していました。
その両方に準備金の積立てが登場しています。
会社法にも分配可能額の規定(461条)と準備金の計上の規定(445条4項)があります。
その一方(準備金の計上)のみでしか準備金が登場しない以上、分配可能額の計算上、準備金の要計上額が控除されることがないのは当然でしょう。

もっとも剰余金の配当に伴う準備金の計上により同額の剰余金の額は減少します。
ので、その後の分配可能額を計算する際にはその分だけスタートの剰余金の額が減少することになります(会社計算規則178条1項2号)。
分配可能額の全額を剰余金の配当として処分した場合は、剰余金の配当直後の分配可能額は準備金の計上額だけマイナス(欠損)になります(これが意外ですが、アリです)。

会社法では、剰余金の配当の際に準備金の計上を義務づけています。
しかし、準備金の要計上額は、分配可能額に影響しないことを再確認しておきます。

分配可能額と剰余金の配当(3)

分配可能額と剰余金の配当(1)

会社法では、剰余金の配当や自己株式の取得等に対して統一的な財源規制を課しています。
剰余金の配当等に関して金額的な限度を定めている訳です。
会社法における剰余金の配当等の統一的な財源規制のハードル、それが「分配可能額」です。

税理士試験でも財務諸表論や公認会計士試験、日商一級でも出題の可能性は高いでしょう。
簿記論の守備範囲からはややはずれていると思います。
そのためこれまでこのブログではとりあげてきませんでした。
基本的なスタンスは今後も大きく変わりません。
しかし、一点だけものすごく気になっています。
それは、分配可能額と実際の剰余金の配当との関係です。

端的には分配可能額とは別に剰余金の配当の限度があり得るのかです。
剰余金の配当段階では、準備金の計上が義務付けられています。
その分を実際の剰余金の配当にあたって考慮する必要があるのか。
関心はその一点です。

剰余金が110万円であった場合(分配可能額の計算上の控除額はなし)で考えてみましょう。
以下では、準備金は、要計上額を加味しても限度額(資本金の4分の1)に達しない状況を想定します。
仮に100万円の剰余金の配当を行えばその10分の1の10万円の準備金を計上する必要があります。
その場合に、実際に配当ができるのは、110万円なのか。
準備金の計上額を加味した100万円なのかです。

この点について、会社法、会社計算規則そして会計基準を参考にしながら考えてみたいと思います。
もっとも特に会社法については、私が微妙なので以下の書籍を参考にさせていただきました。

法務大臣官房参事官相澤哲編著 別冊商事法務「立法担当者による新会社法関係法務省令の解説」(以下「解説」と称します)。

まずは、きわめてラフに会社法の規定をみておきましょう。

会社法461条
「次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等……の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。
一〜七 略
八 剰余金の配当」

会社法461条では、剰余金の配当等を行う場合の金額的制限を定めています。
その金額的制限が「分配可能額」です。

第2項が具体的な分配可能額の計算に関する規定です。
臨時計算書類を作成せず、会社の保有する財産が仮に現金のみであり、最終事業年度の末日後に何らの行為も行っていない場合を考えると分配可能額は、一号の「剰余金」になります。

剰余金の額については、会社法446条(や会社計算規則177条)に規定されています。
規定はかなり複雑ですが、結論的には、その他資本剰余金とその他利益剰余金の合計額になります(「解説」111頁参照)。

ちょっと特殊な項目(これが多いですが)を除けば、剰余金(その他資本剰余金とその他利益剰余金)の額が分配可能額になります。

分配可能額と剰余金の配当(2)

講師だって教えて欲しい!!(分配可能額と配当可能額?三回目)

分配可能額(会社法461条)と配当可能額?の関係について3回目のお願いです。

初回の記事は、こちらです。

分配可能額とは別に配当可能額があるか?(×10/11等の必要があるか)についてです。

分配可能額とは別に配当可能額はないと思います。

しかし、会社法施行後の新しい簿記会計の書籍等でも、別途配当可能額を求めるとの記述が多くなっているようです(かなり驚いています)。

なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか?

よくわかりません。

別に自分の考えが正しいことを力説したい訳ではありません。

もし、考え違いがあるなら教えて欲しいです。

もし今、出回っている記述(別途、配当可能額を求めるとの記述)が誤りなら、無用な混乱は早期に回避すべきだと思います。

それだけです。


この点については、会計処理がかなり興味深いです。

記事にしようとも思うのですが、その前提をはっきりさせる方が先決でしょう。

どなたか何故、こんなことになってしまったのかについてのご意見でもかまいませんので、コメント等いただけると助かります。

よろしくお願い申し上げます。

講師だって教えて欲しい!!(分配可能額と配当可能額?再び)

以前、分配可能額(会社法461条)と配当可能額?の関係についてお聞きしました(以前の記事はこちらです)。

分配可能額とは別に配当可能額があるか?(×10/11等の必要があるか)についてです。

まだ、わかっておりません。

どなたか会社法にお詳しい方のご教示の程、どうかよろしくお願いいたします。



その後も継続的にみてはいますが、よくわかりません。

会社法関連のものでは分配可能額の記述しかあるものしかみたことがありません。

配当可能額についての記述があるのは、簿記会計関連のみのようです。

しかも割と多いので驚いています。

自分の理解は、これまでの配当可能限度額や自己株式の取得限度額などを一本化したものが分配可能額。

配当に限定すれば、分配可能額以内ならよいというものです。

会社法(会社計算規則)を素直に読む限り、そう思えます。

会社法は、会計処理に口を出していない。

積立金の要積立(計上)額を分配可能額から控除して配当限度額を別途求める必要はない。

そう思えます。


ここにきちんとでているよというような情報でもかまいませんので、よろしくお願いいたします。

講師だって教えて欲しい!!(分配可能額と配当可能額?)

講師だって教えて欲しい!!

今回は、会社法の話です。

税理士試験簿記論で、必要とは言いがたいですが、分配可能額(会社法461条)についてです。

端的には、分配可能額とは別に配当可能額があるのでしょうか?

このままでは会社法がもっと嫌いになってしまいそうな講師にご教示くだされば幸いです。




先日、このブログ内でご質問を受け、そもそもの前提が自分の認識と違っているので、びっくりしました。

自分の理解は、これまでの配当可能限度額や自己株式の取得限度額などを一本化したものが分配可能額。

配当に限定すれば、分配可能額以内ならよいというものです。


しかし、どうやら配当の場合には、さらに準備金の計上を考慮しなければならないとする記述が多いようです。

分配可能額や剰余金の配当自体は会社法の考え方です。

で、会社法(や会社計算規則)をみましたが、よくわかりません。

たしかに、会社法445条では、準備金の計上が要求されています。

しかし、旧商法のように限度額計算に影響させる規定(旧商法290条)はありません。

会社法の規定を素直に読むと従来のような×10/11等の計算(準備金の積立分の考慮)が必要とは思えません。

確かにその後の会計処理を考えると???というケースがあるようには思います。

しかし、そのことと会社法における分配可能額ないしは実際の配当と関係があるというのがよくわかりません。

分配可能額と実際の剰余金の配当(可能)額との関係についてどうか教えてください。

よろしくお願いいたします。
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