税理士試験 簿記論 講師日記

税理士試験 簿記論、財務諸表論、簿記検定の問題、学習方法等をアドバイス。

退職給付会計

回廊アプローチと重要性基準

数理計算上の処理に関しては回廊アプローチと重要性基準があります。



回廊アプローチ……毎期きちんと計算し、誤差の範囲であれば処理なし

重要性基準…………基礎値をそのまま使い、差異は毎期処理する




回廊アプローチは、退職給付債務を毎期きちんと計算します。

計算はしますが、数理計算上の差異がある程度の幅(たとえば10%等)におさまっているときはムシする方法です。

回廊は、部屋の周りにある廊下です。

今ではあまりないと思いますが、その様子がちょうど許容範囲に近い感じなのでこんな名称がついているのかもしれません。

きちんと計算して、誤差が一定の範囲だったら処理をしないのが回廊アプローチです。



重要性基準では、割引率等に大きな変動がなければ使用していた数値そのまま使用して退職給付債務を計算します。

そのかわり、毎期きちんと数理計算上の差異を計算します。



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退職給付引当金

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退職給付引当金の概要
退職給付制度の仕組み
退職給付会計の一連の会計処理
退職給付引当金の計算
退職給付費用の計算
過去勤務債務
数理計算上の差異
会計基準変更時差異
回廊アプローチと重要性基準

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未認識数理計算上の差異の償却開始年
未認識過去勤務債務の月割計算
会計基準変更時差異


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会計基準変更時差異の留意点

退職給付会計の制度が導入されてから早いものでもう……何年だ?(←わからないのね)。

もう何年かたちますので、会計基準変更時差異が当期に生ずるという出題は考えにくいでしょう。
ただ、まだ、未認識の会計基準変更時差異が残っているという出題は充分考えられます。

他の差異等との取扱いの違いを考えておきましょう。

明確な違いは、次の2点です。

(1)定額法しか認められない点
(2)15年以内の償却を要する点

未認識「数理計算上の差異」と「過去勤務債務」については、定率法による償却も認められます。
これに対して、会計基準変更時差異は、定額法しか認められていません。
したがって、償却方法の指示がない場合には、定額法による償却を行う必要があります。

また、未認識「数理計算上の差異」と「過去勤務債務」については、平均残存勤務期間内の償却が求められますが、どの企業にも共通の「何年」という年数はありません。
会計基準変更時差異のみが具体的な「15年」という年数があります。

会計基準変更時差異は、出題時には、発生が一回で、償却時に、費用が出るというパターンになるでしょう。
数理計算上の差異などと比べるとかなり単純ですので、きっちり合わせられるところだと思います。
やや細かい条件の違いではありますが、おさえておかれるとよろしいのではないでしょうか。


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未認過去勤務債務の月割計算

今回は、未認識過去勤務債務の話です。

「未認識過去勤務債務」は、償却開始年には、「月割」もありです。
知っているかいないかの話なので、おさえておいて損はないと思います。

「未認識数理計算上の差異」の償却の償却の開始は、発生年だけでなく、翌年もありました。
「未認識過去勤務債務」と「未認識会計基準変更時差異」は、発生年からのみの償却です。

「未認識数理計算上の差異」と「会計基準変更時差異」については、発生年度の月割計算は、考えられません。
「過去勤務債務」については、退職給与規程の改訂時期次第で、月割計算もあります。

減価償却計算なんかで月割計算を最初にやったときには、結構、「むむむっ」って思ったんじゃないかと思います。
結構なれたなと思っても何か別の要素が絡んだりすると月割を忘れたり、数え間違えたりは結構あるのではないかと思います。

退職給付引当金の場合にも単純にいかにも月割ありという出題だといいんですが、会計基準変更時差異と面倒な数理計算上の差異の計算があったりすると月割計算自体に意識がいかない場合もあるかと思います。

退職給与規程の改定が期首でない場合には、未認識過去勤務債務の月割計算もありというお話でした。


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未認識数理計算上の差異の償却開始年

退職給付引当金で面倒だなあと思うのが、数理計算上の差異ではないでしょうか。
資料次第ということもありますが。

未認識項目は、3つ。
会計基準変更時差異、数理計算上の差異、過去勤務差異です。
このうち「翌期」からの償却が認められているのは、数理計算上の差異のみです。
数理計算上の差異以外は、指示がなくても発生年からの償却になります。

実務的には、このバターン(翌年から)が多いと思いますので、第3問での出題時には、ありがちだと思います。
前期の資料から数理計算上の差異を算出する場合は、資料が複雑になりますが、想定しておくべきでしょう。

でも、先入観を持ってはいけませんので、退職給付引当金の本格的出題時には、償却開始年(発生年か、その翌年か)にはくれぐれも注意しましょう。


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会計基準変更時差異

【会計基準変更時差異の意味】

「会計基準変更時差異」は、旧基準による「退職給与引当金」と新基準による「退職給付引当金(退職給付債務)」との差額です。

退職給付会計の導入は、平成12年です。

変更時の会計処理を問う出題は考えにくいですが、会計基準変更時差異が処理されずに残っていることは、考えられます。

具体的には、「会計基準変更時の期首退職給付債務から期首年金資産を控除した金額」(退職給付引当金)と「退職給与引当金」の差額が会計基準変更時差異になります。

会計基準変更時差異=期首退職給付引当金−期首退職給与引当金



【会計処理】

償却期間:当期一括償却、15年以内

償却方法:定額法のみ

振替処理:(借)退職給与引当金××× (貸)退職給付引当金×××

償却処理:(借)退職給付費用 ××× (貸)退職給付引当金×××

会計基準変更時差異は、新しい制度に移行する際の旧制度の名残です。

本来は、移行時に一括償却すべきでしょうが、15年以内での償却も認められています。

3つの未認識項目のうち具体的な年数(15)が出てくるのは、この会計基準変更時差異だけになります。

なお、償却方法は定額法のみです。



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数理計算上の差異

【退職給付引当金における予定計算】

年金資産の評価や退職給付見込額(将来の退職金)の計算において、予定(予想)計算を行います。

退職給付費用=勤務費用+利息費用−期待運用収益

勤務費用=退職給付見込額の当期発生分の割引価値

利息費用=前期末退職給付債務×割引率

期待運用収益=前期末年金資産×期待運用収益率

このうち退職給付見込額(将来の退職金)、割引率、期待運用収益等は、あくまでも将来の予測であり、実際もそうとは限りません。



【数理計算上の差異の意味】
「数理計算上の差異」とは、年金資産の評価や退職給付債務の計算における予定と実績の違いを意味します。

また、割引率等の予定数値を変更することもありますが、このような予定計算を行う場合の数値変更に基づく差額も数理計算上の差異です。

見積段階では、この見積計算と実績計算の違いは、会計処理に反映されていません。

まだ計上されていない数理計算上の差異を、「未認識数理計算上の差異」といいます。

考え方は、過去勤務債務と同様ですが、過去勤務債務が仕訳でいえば、

(借)退職給付費用××× (貸)退職給付引当金×××

というようにほぼ、常に、同じ側にしか生じないのに対し、数理計算上の差異は、単なる予定計算と実績との差異であるため、両方が考えられるため混乱しやすい点でしょう(厳密には、過去勤務債務の逆もあります。)。



【会計処理】

(償却開始)発生年または翌年

(償却期間)平均残存勤務期間

(償却方法)定額法(残存価額ゼロ)、定率法

(会計処理)

(借)退職給付費用 ××× (貸)退職給付引当金×××

または退職給付引当金×××    退職給付費用×××

償却の開始は、発生年だけでなくその翌年からも認められているので、注意が必要です。

償却期間、償却方法、会計処理については、過去勤務債務と同様です。



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過去勤務債務

【過去勤務債務の意味】

「過去勤務債務」とは、退職給与規程が改定される等した場合の退職給付債務の増加(減少)部分をいいます(以下では、増加のケースを想定しています)。

今まで退職給付債務が100円あった。

しかし、退職給与規程の改訂で退職金の支給額が増えて、退職給付債務が120円になったとすれば、この20円部分が、過去勤務債務です。

設定の段階(期首)では、この増加部分は、会計処理に何ら反映されていません。

この会計処理(仕訳)が行われていない部分の過去勤務債務を、「未認識過去勤務債務」といいます。

「認識」は、会計処理が行われていること。

「未認識」は、会計処理が行われていないことです。

未認識過去勤務債務は、発生しちゃってるけど、まだ会計処理(仕訳)として認識されていない過去勤務債務です。

会社上の仕訳処理としては、退職給付債務の増加部分は、次のように認識されます。

(借)退職給付費用100 (貸)退職給付引当金100

この場合、退職給付債務100は、退職給付引当金に反映しています(なお、年金資産等があるため、通常は、退職給付債務と退職給付引当金は、そもそも一致しません)。

仮に年金資産がなかったとしても、未認識過去勤務債務の分だけ退職給付引当金と退職給付債務は一致しないことになります。



【未認識過去勤務債務の会計処理】

(償却開始)発生年

(償却期間)平均残存勤務期間

(償却方法)定額法(残存価額ゼロ)、定率法

(会計処理)退職給付費用××× 退職給付引当金×××

未認識過去勤務債務は、発生年度から、償却を行います。

償却といっても減価償却とは異なり、何もしていない(未認識の)状態から費用処理を行います。

償却の仕訳は、設定の場合と同じです。

(借)退職給付費用×××(貸)退職給付引当金×××

償却期間は、平均残存勤務期間であり、問題に指示される筈です。

また、償却方法としては、定額法(残存価額はゼロ)が一般的だが、定率法の採用も認められているので、問題の指示に従う必要があります。

なお、一括での費用処理(特別損失)も認められています。

問題の指示には、十分注意しましょう。



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退職給付費用の計算

【退職給付費用の計算と設定】

退職給付費用(退職給付引当金繰入)は、勤務費用に利息費用を足して、期待運用収益相当額を引いて算出します。

退職給付費用=勤務費用+利息費用−期待運用収益相当額

設定時(通常は、期首)の仕訳は次のとおりです。

(借)退職給付費用××× (貸)退職給付引当金×××



【勤務費用】

勤務費用の金額は与えられている出題が多いようです。

会計基準で触れられている程度(このブログで説明している程度)は、できればおさえておきましょう。

勤務費用は、退職給付見込額(将来の退職金)のうち、当期に発生した部分の割引現在価値相当額です。

(1)退職給付見込額(仮に363万円とする)。

(2)当期発生額

退職給付見込額のうち、当期に発生した金額を求める。

仮に、第1期の期首に入社、退職までの期間3年とする。

(第1期)当期発生額 363万×1年/3年=121万円

(第2期)同じ

(3)割引計算

当期発生額を現在価値に割り引く。

いま割引率を10%とすると、

(第1期)退職まであと2年(割るのも2回)121万÷(1+0.1)2=100万

(第2期)退職まであと1年(割るのは1回)121万÷(1+0.1)=110万



【利息費用】

利息費用は、前期末の退職給付債務(未払退職金)について、当期に発生した利息を意味します。

利息費用=前期末退職給付債務×割引率

さきほどの例(退職金363万円、3年勤務、割引率10%)で、第2期の利息費用を考えてみましょう。

第1期末 退職給付債務 363万円×1年/3年÷(1+0.1)2=100万

第2期 利息費用 100万×10%=10万



【まとめ】

(第1期)
前期末退職給付債務 なし

当期勤務費用    100万=363万×1年/3年÷(1+0.1)2

当期利息費用    なし

(第2期)
前期末退職給付債務 100万=363万×1年/3年÷(1+0.1)2

当期勤務費用     110万=363万×1年/3年÷(1+0.1)

当期利息費用     10万=100万×10%

当期退職給付費用  120万=110万+10万

(第3期)
前期末退職給付債務 220万=363万×2年/3年÷(1+0.1)

当期勤務費用     121万=363万×1年/3年

当期利息費用     22万=220万×10%

当期退職給付費用  143万=121万+22万

設定の仕訳処理のみを並べてみると、

(第1期)退職給付費用100万 退職給付引当金100万

(第2期)退職給付費用120万 退職給付引当金120万

(第3期)退職給付費用143万 退職給付引当金143万

となり、合計は、363万です。

逆にいえば、将来の363万円の退職金を手前の期に利息を加味して割り振るとだんだん大きくなるように割り振られています。

退職給付債務(未払退職金)は、だんだんと大きくなるので、利息もだんだん大きくなります。

これが、リースの場合であれば、リース債務は、返済により段々小さくなるので、リースの場合の利息費用ともいうべき支払利息は、だんたんと小さくなるという違いで、基本的な考え方は変りません。

もう一度、退職給付費用の中身を抜き出してみましょう。

(第1期)退職給付費用100万(勤務費用100万)

(第2期)退職給付費用120万(勤務費用110万+利息費用10万)

(第3期)退職給付費用143万(勤務費用121万+利息費用22万)

このような数字の小さな事例で、数字の相互関係をよく把握することが大事です。
差異の計算等は、その後の話ではないかと思います。



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退職給付引当金の計算

退職給付引当金=退職給付債務−年金資産 です。

今、ある時点(当期末)の退職給付引当金の計算を具体的にみてみましょう。


【退職給付債務の計算】

退職給付債務は、次のような手順で計算します。

(1)退職給付見込額の計算

退職給付見込額は、将来の退職金(退職一時金+退職年金)の予想額です。

この予想は、とても難しいです。

簿記論で、退職給付見込額を計算させることは、やや考えにくいです。


(2)当期までの発生額の計算

例えば、第1期入社から3年後に退社予定(早っ)のA氏の3年後の退職金予想額(退職給付見込額)が363万円とします。

今、A氏の第1期末までに発生している退職給付見込額は、363万円×1年/3年=121万円と計算されます。


(3)発生額の割引計算

ただ、退職給付見込額は、あくまでも将来の支払額です。

同じ121万円でも現在(第1期末)とその2年後(第3期末)の価値は異なります。

それを現在時点で計上する訳ですから、利息部分は小さくていいハズです。

つまりは、将来の退職給付を割り引いて計算します。

これを割引計算すると、

121万円÷(1.1)2=100万円



【年金資産の計算】

当期末の年金資産=前期末の年金資産+期待運用収益額

または、

当期末の年金資産=前期末の年金資産×(1+期待運用収益率)

です。

年金資産は、退職金の支払に特定された準備預金(のようなもの)でした。

前期までの年金資産の金額は、前期に計算済です。

これに収益(受取利息等)を加えます。

これが、期待運用収益額と呼ばれます。

期待運用収益額は、

前期末の年金資産×(1+期待運用収益率)

で計算されます。

ここで注意したいのは、あくまでも「期待」運用収益額(率)である点です。

退職給付引当金は、期首時点で、期末時点の事を考えて設定されるのが一般的です。

この場合の「期待」運用収益額(率)は、あくまでも期首時点での予想に過ぎません。

もちろん実際(実績)と異なる事が考えられます(というか、通常は異なります)が、その取扱いは、後日ふれます。



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退職給付会計の一連の処理

【一連の会計処理】

一連の会計処理を示しておきましょう。

(1)期首(期末)

(借)退職給付費用 ××× (貸)退職給付引当金×××


(2)退職金支払時

(借)退職給付引当金××× (貸)現金預金×××


(3)年金資産からの拠出時

仕訳なし


(4)年金資産への拠出時

(借)退職給付引当金××× (貸)現金預金×××



【期首(期末)】

(借)退職給付費用××× (貸)退職給付引当金(退職給付債務)×××

退職給付引当金の設定は、通常、期首に行われます。

これは、退職給付引当金の計算が端的には、面倒なためです。

実際の出題では、極めて自然な形での未設定(未処理)もあるので、問題をよく読んで対処しましょう。

貸方の退職給付引当金は、退職給付債務(未払退職金)そのものです。



【退職金支払時】

(借)退職給付引当金(退職給付債務)××× (貸)現金預金×××

これは、退職給付債務(未払退職金)を支払っている仕訳です。



【年金資産からの拠出時】

仕訳なし

これがわかりにくいかもしれません。

仮に仕訳で示すとすると、

(借)退職給付債務××× (貸)年金資産×××

という意味です。

退職給付引当金=退職給付債務−年金資産

ですから、実際には、

(借)退職給付引当金××× (貸)退職給付引当金×××

というか、借方と貸方が同じなので、「仕訳なし」です。

ここは、とても勘違いの多いところなので、十分に注意しましょう。



【年金資産への拠出時】

(借)退職給付引当金(年金資産)××× (貸)現金預金×××

これは、年金資産(準備預金)への預入れです。



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退職給付制度の仕組み

退職給付(退職金)制度の仕組みを簡単にみておきましょう。

【支払の方法(一時金と年金)】

退職金は、退職時に支払う「後払の給与」です。

退職金の支給(受給)のタイプには、一括して支払う場合(一時金)と分割(年)で支払うタイプ(年金)があります。

一時金や年金は、本来は、支払(受取)の方法を意味します。



【準備の形態】

退職金は、長期の勤務の後に支払うので、金額も大きいです。

そのために企業も何らかの準備を行う場合が多く、そのタイプに、内部引当と外部積立があります。

「内部引当」は、例えば、準備預金をする等の内部的な手当を行うことをいいます。

この区別は、外部的に何か準備しているかどうかの違いで説明されることが多いので、結局は何も準備をしていないケースも内部積立になります。

「外部積立」とは、実際に、外部(例えば信託銀行や生命保険会社等)に資金を委ね、その外部者に退職金の支払いも行ってもらうという制度です。

退職金の支払い専用の預金みたいなものです。

退職給付引当金ができる以前は、

内部引当 → 引当金

外部積立 → 費用処理

という形で対処していましたが、退職給付会計のもとでは、これを一緒に考えることになりました。



【制度の想定】

実際には、退職金の制度は、かなり複雑で、様々な組み合わせ等が考えられますが、典型的には、

退職一時金 → 内部引当

退職年金   → 外部積立

という形で役割分担している形を考えるとよいでしょう。

つまりは、一時金で支払う分は、自分で準備し(準備といっても、何もしなくても内部積立ですが)、退職年金については、外部に準備預金をして、そこから支払ってもらう感じです。

この準備預金が「年金資産」に該当します。



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退職給付会計の概要

【退職給付引当金の設定】

退職給付引当金の設定時の仕訳は、次のとおりです。


(借)退職給付費用××× (貸)退職給付引当金×××


やや、正確性を欠きますが、この仕訳は、


(借)退職金××× (貸)現金預金×××


という将来の退職金の支給を先取りしたものです。

実際に現金預金を払ってませんので、


(借)退職金(費用)××× (貸)未払金(負債)×××


をイメージするとよいでしょう。



【退職給付引当金の設定の根拠】

3年後に退職金300万を支払う。


(1)1〜2年目 仕訳なし

(2)3年目    退職金300万 現金預金300万


とやるよりも(3年目がちとインチキくさいですが)、


(1)1年目 退職給付費用100万 退職給付引当金100万

(2)2年目 退職給付費用100万 退職給付引当金100万

(2)3年目 退職給付費用100万 退職給付引当金100万
         退職給付引当金300万 現金預金300万



こうやった方が合理的ではないのか?

これが退職給付引当金(引当金全般)の考え方です。



【退職給付引当金(貸借対照表の考え方)】

退職給付引当金でわかりにくいのは、現在価値の考え方でしょう。

とりあえず、それを除いたところで、退職給付引当金の仕組みを考えましょう。

まずは、貸借対照表項目(退職給付引当金そのもの)です。


退職給付引当金=退職給付債務-年金資産


「退職給付債務」は、未払の退職金です。

「年金資産」は、退職金にあてるための準備預金のようなものです。

退職給付債務(未払退職金)が300あるけど、年金資産(準備預金)が100あれば、実際の退職給付引当金(未払退職金)は300ー100=200でいいです。

つまり、純額です。

純額の負債、いわば「純負債」です。

退職給付債務を負債として計上し、年金資産を資産として計上するというのも考え方(あくまでも考え方)としてはあるでしょう。

しかし、現行は、どうせ年金資産は、退職金の支払にしかあてられないので、差し引いて、純額で示しています。

考え方としては、

退職給付債務(負債)300
年金資産(資産)  100

というのも考えられなくはないけど、

退職給付債務(負債)300 ー 年金資産(負債のマイナス)100
=退職給付引当金200

とした訳です。


【退職給付費用(損益計算書の考え方)】

退職給付費用(退職給付引当金繰入)は、

勤務費用 + 利息費用 ー 期待運用収益

で計算されます。

退職給付引当金を退職給付債務と年金資産を相殺して純額で示したように、損益(費用と収益)の側も関連する項目の純額です。

「勤務費用」は、退職金の本体部分に相当します。

退職金は、従業員の給料の後払いであり、その先取りです。

もちろん費用です。

退職給付引当金 = 退職給付債務 ー 年金資産

この退職給付債務はいわば未払退職金でしたが、これに利息がつくと考えた場合の利息が「利息費用」です。

これももちろん費用です。

「期待運用収益」は、年金資産(準備預金)につく利息等です。

もともとは年金資産は、資産だから、銀行に預けているのと同様に利息等の収益が生じます。
これは、退職給付費用の計算上、マイナス(費用のマイナス)します。



(まとめ)
【貸借対照表関係】退職給付引当金=退職給付債務ー年金資産

【損益計算書関係】退職給付費用=勤務費用+利息費用ー期待運用収益額




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