税理士試験 簿記論 講師日記

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社債の問題を解く際に重要な事
打歩発行


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打歩発行

社債の発行形態には、次の三つがあります。

(1)平価発行(額面金額=発行価額)
(2)割引発行(額面金額>発行価額)
(3)打歩発行(額面金額<発行価額)

一般的な社債の発行形態としては、割引発行が多く、そのためか、出題としても割引発行が多くなっています。
私自身が、社債の取引を実際に行う訳ではありませんので、聞いた話ですが、一部の新株予約件付社債では、社債部分が、打歩発行になっているものもあるそうです。
その点を考えると打歩発行も軽めにでもマークしておくべきかもしれません。

打歩発行時の特徴的な点は、償却原価法の適用の仕訳が通常と逆になる点でしょうか。

(割引発行時)
発行:現金預金 90 社  債 90
償却:社債利息  2 社  債  2

(打歩発行時)
発行:現金預金110 社  債110
償却:社  債  2 社債利息  2

打歩発行時の償却の仕訳については、貸方に社債利息が生じますが、これは実際に支払う社債利息からの控除を想定しているからです。
実際に決算において社債利息が貸方に残ることはありません。
 

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(★)社債の問題を解く際に重要な事

新基準以前の(従来的な)個別項目では、割賦販売と社債が難しいという印象がありました。
その一方の社債です。

社債の問題を解く上で必要なのは、償却にしても、社債利息の計算にしても、期間配分の考え方です。
それ以上でも、以下でもありません。
やっていることは、償却や社債利息をどの期間にもっていくかです。
そして、それがわかりにくいとすれば、行われている取引そのものが把握しにくい、または、把握できていないという事ではないでしょうか。

社債の問題を解くためには、いったい何が行われているのかをきちんと把握する事が大事です。
そのためには、次の点に留意するとよいでしょう。

(1)問題をよく読むこと。
(2)慣れるまでは、横線を引いて、いつ何が行われたかを整理すること。

この場合に大事なのは、解答・解説を読んで納得したつもりにならないことです。
自分できちんと問題を把握して、図解するなどして、状況を整理する必要があります。
その整理の仕方が正しかったのかを解答・解説で確認するのはよいでしょう。
ただ、単に解答・解説で計算過程を追うようになっていないでしょうか?
そんな時は、要注意です。
もう一度、問題文を読み返し、状況を「ご自分で」整理する必要があると思います。

これは、必ずしも社債に限った話ではありませんが、状況を自分で整理するように心がける。
これを個別問題レベルできちんと行う事が、総合問題や応用問題を解く上では不可欠といってよいでしょう。

(★)買入償還

市場での買入償還を考えておきましょう。
その前に、社債の一連の処理の処理をきちんと理解しておくことが近道だと思います。


【買入償還の会計処理】
(借)社  債××× (貸)現金預金  ××× →社債=買入償還時償却原価
              社債償還益 ××× →差額


社債の発行は、長期の借金をしたのと変わりません。
社債の償還は、長期の借金を返済したのと変わりません。
借方:社債は、買入償還時の償却原価です。

期間計算は、慎重に行いましょう。
期首から買入償還時までの償却は、問題の指示に従いましょう。

社債償還益は貸借差額です。
借方差額の場合には、社債償還損になります。


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社債の一連の処理

【社債の一連の処理】
社債に関する処理で難解なのは、買入償還でしょう。
しかし、具体的な買入償還の問題の解き方から入るより、地味に社債の一連の処理をこなして、社債の仕組みを理解するのが先決でしょう。

どうも見ていると解き方にこだわるあまりに単なる数字合わせに終わってしまう場合も少なくないようです。
類似問題ではなんとかなるかもしれません。
しかし、極めてオリジナル度の高い問題に対処できない可能性が高いです。
その意味でも一連の処理をしっかりとおさえておきましょう。

社債は負債です。
社債→借入金、社債利息→支払利息と置き換えた場合の考え方は、全く同一です。
「社債の償却」と「社債発行費の償却」は全く別個に考えた方がよいでしょう。


【仕訳処理】
一連の処理を示しておきます。

(1)発行日
(借)現金預金××× (貸)社  債×××

(2)利払日
(借)社債利息××× (貸)現金預金×××

(3)決算日
(借)社債利息××× (貸)社   債××× →償還期限・月割
   社債発行費償却 ×××    社債発行費 ××× →償還期限・利息法・定額法
   社債利息     ×××    未払社債利息××× →利払日(の翌日)から決算日

(4)翌期首
(借)未払社債利息  ××× (貸)社債利息  ×××


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(※)貸方の社債発行差金

(※)社債には、償却原価法が適用されることになりましたので、社債発行差金という繰延資産はなくなりました。

下記記事の内容は現在では古くなっています。



【貸方の社債発行差金】
現実の出題としてはやや考えにくいですが、貸方に生ずる社債発行差金、つまり、打歩発行時(額面金額<発行価額)の社債発行差金について考えてみましょう。

第三問での出題は、事実上、考えられないと思いますが、第一問・第二問では、ありえないことではないと思います(可能性は高くはありませんが)。

社債発行差金の本来の性格は、利息です。

借方にこようと、貸方にこようと利息であることに変りはありません。

その意味でいうと借方・貸方にとらわれない社債発行差金の理解が、会計学的には正しい筈ですが、旧商法は、借方差額の社債発行差金を繰延資産としていました(もっとも計上は任意ですが)。

貸借対照表を眺めてみても借方の繰延資産に対応する貸方項目はありません。

繰延資産の本質が繰延べられた費用(繰延費用)であるとすれば、貸方にくる社債発行差金の性格は、繰延べられた収益(繰延収益)と考える以外にないでしょう。

これがわかりにくいのではないかと思います。

我国では、この繰延収益に相当する項目がないのです。

あえていえば長期前受収益といったところでしょうか。

借方・社債発行差金に整合する貸方・社債発行差金の性格は、長期前受収益といってよいでしょう。



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社債の発行形態

【社債とは】

社債(発行者側)の実質は、(長期)借入金と同じです。

金を借りて、利息を払って、最後に返済する。

違うのは、債権者側(貸付側)で、その権利が証券(紙)として流通する(売買できる)というだけです。

有価証券の一部(満期保有目的の債券とその他有価証券のうちの債券)と債権(売掛金、貸付金等)に同じように償却原価法が適用されるのは、両者が債権の性格を有するからです。

いずれも貸付側からすれば、同じ「債権」(貸した金を返せという権利)なのです。

ただ、債券(公社債)については、それが証券(価値のある紙切れ)であることを優先して有価証券等の勘定で処理されます。


【社債の発行形態】

社債の発行形態には三種あります。


額面金額=発行価額 → 平価発行

額面金額>発行価額 → 割引発行

額面金額<発行価額 → 打歩発行


額面金額と発行価額とが異なる場合は、償却原価法が適用されます。

原則は、利息法で、定額法も許容されています。

我国での普通社債の発行は割引発行が多く、実際の出題もほとんどが割引発行です。
割引発行時の償却を中心に習熟しておきましょう。



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