税理士試験 簿記論 講師日記

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債権債務・手形

債権債務・手形

<記事一覧>
売掛金と未収金
会社負担の社会保険料

約束手形と為替手形
為替手形
営業外支払手形
不渡手形
融通手形
自己宛為替手形と自己受為替手形
名宛人
保証債務


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保証債務

手形割引時等に生ずる「保証債務」。

これがなかなかわかりにくいのではないでしょうか。



簿記論の出題には直接的にかかわりのない理論的背景にも興味のある方は、「続・手形割引の会計処理(1)から(10)」をご覧ください。

ここでは、簿記論に必要な範囲で簡単に考えておきましょう。


仕訳は、

(借)保証債務費用(手形売却損)××× (貸)保証債務×××

です。


基本的には、

(借)貸倒引当金繰入××× (貸)貸倒引当金×××

にきわめて近いと考えるとよいでしょう。


保証債務の金額は、「時価」です。

現実的には、金額を与えるか、手形額面の何%といった出題が想定されます。

この点も貸倒引当金の設定の仕方によく似ています。

とりあえずは貸倒引当金になぞらえておさえておかれるとよいでしょう。


大きく違うのが、設定・取崩しのタイミングです。

貸倒引当金は、決算時に設定されます。

保証債務は、手形割引時等に設定され、決済(不渡)時に取崩しを行います。



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名宛人

約束手形は、「支払約束証券」と呼ばれます。
約束手形において、約束がかわされるのは、「支払」についてです。
約束手形は、支払を約束する訳ですから、約束手形における「名宛人」は、「支払」を受ける人、つまり、「受取人」になります。

為替手形は、「支払委託証券」と呼ばれます。
為替手形においては、支払を委託する訳ですから、為替手形における「名宛人」は、「支払」を行う人、つまり、「支払人」になります。

同様に名宛人といっても約束手形と為替手形とでは、「支払人」と「受取人」と立場が大きく変ります。
それに応じて仕訳も変ってきますので、簡単な仕組みをおさえることが為替手形の攻略の近道といってよいのではないでしょうか。

(関連記事)
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自己宛為替手形と自己受(指図)為替手形

【為替手形の仕組み】
為替手形は、「支払委託証券」と呼ばれます。

振出人が、名宛人(支払人)に対し、指図人(受取人)に一定の金額を支払うように委託した証券です。

手形法上、典型的に想定されているのは、この三者がそれぞれ別個の為替手形です。

手形法上は、これらの者が重複していても問題はありません。

もっとも名宛人(支払人)と指図人(受取人)が同じ手形は、事実上、意味がないので、これは除外して考えてよいでしょう。




【「自己宛為替手形」と「自己受為替手形」】
三者がバラバラな組み合わせ以外には、次の組み合わせが考えられます。

振出人 = 名宛人(支払人) ……自己宛為替手形

振出人 = 指図人(受取人) ……自己指図(受)為替手形

振出人と名宛人(支払人)が同じ手形を(振出人からみて)「自己宛為替手形」といい、振出人と指図人が同じ手形を「自己指図(受)為替手形」といいます。

手形の利用は、法律の規定に反しない限り、利用者が自由に行えばよい訳で、自己宛為替手形や自己指図(受)為替手形という通常の為替手形とは異なる為替手形が存在する訳ではありません。



【為替手形利用の現状】
もっとも、現実的な為替手形の利用はそれほど多くはないようです。

ネット上の決済を想起するまでもなく、支払手段は多様化し、為替手形の利用は著しく減少しています。

国内でもっとも多い為替手形の利用法が、おそらくは、自己受為替手形でしょう。

国内の特定の業種では、仕入代金の支払いを行う者が約束手形を振出さず、受取人が為替手形を振出す慣行があるようです。



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融通手形

【融通手形】
手形の本来的な利用は、何らかの意味での対価の受払いを想定しているでしょう。
しかし、単に資金目的(お金の貸し借り)で手形が利用されることがあります。
典型的には、相互に手形を振出して、両者が受け取った手形を直ちに割り引くのです。

この場合には、商品代金に係る手形債権債務を示す受取手形、支払手形勘定では具合が悪いです。
この場合には、受取融通手形、支払融通手形勘定を使用するのが一般的です。
もっとも、商品売買等のきちんとした取引があって、手形を振出す訳ではないので、それほど感心した取引とはいえず、試験的な重要性もさほど高くないでしょう。


【会計処理】
相互振出時:
(借)受取融通手形××× (貸)支払融通手形×××

割引時:
(借)現金預金 ××× (貸)受取融通手形×××
   手形売却損×××


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不渡手形

【不渡手形とは】

単に不渡手形というと負(マイナス)のイメージを伴いますが、不渡手形勘定は、資産に属する勘定です。

例えば、Aが約束手形をBに対して振出したとしましょう。

A → B

支払期日にAが手形代金を支払えない。

これが不渡です。

手形が不渡になっても「B」は、その金額の全てを直ちに損する訳ではありません。

「A」に「その代金を支払え」とはいえるのです。

この「B」の「A」に対する権利(求償権)を処理する勘定科目が不渡手形勘定です。



【不渡時の会計処理】

(1)自己の所有する手形が不渡となった場合

不渡手形勘定は、BのAに対する権利を示すものであるからその後の代金請求(求償)に要した費用(支払拒絶証書作成費用、その後の利息等)を含んだ金額が不渡手形の金額になります。

(借)不渡手形××× (貸)受取手形×××


(2)遡及義務を有する手形が不渡となった場合
次のケースはどうでしょうか。

Bは、Aから受け取った約束手形をCに裏書譲渡した。

A → B →C

AがCに期日に手形代金を支払うことができなければ、不渡です。

この場合、CはBに対して、手形代金を請求することができます。

Bが手形代金を支払った場合、これをAに請求できます(支払いの可能性は薄いかもしれませんが)。

その求償権をあらわしたのが不渡手形です。

(借)不渡手形××× (貸)現金預金×××

なお、手形割引・裏書時に保証債務を計上していた場合には、その保証債務を取崩す処理を行います。



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会社負担の社会保険料

【会社負担の社会保険料】

検定試験ではさほど出題実績のない項目の一つに社会保険料があります。

税理士試験の第3問は、実務家の出題で、やや実務的な項目が出題される傾向があります。

それほどメイン項目ではありませんが、簡単な処理はおさえておきましょう。

実務に携わっている人は、それほど違和感を感じないでしょうが、実務未経験の方は、初めてかもしれません。

社会保険料(健康保険料及び厚生年金保険料)は、従業員と会社負担が同額で、従業員負担分は、給料支払時に天引きします(預り金勘定で処理)。

会社負担の社会保険料は、「法定福利費勘定」で処理されます(福利厚生費もセーフでしょうか)。

なお、預り金勘定は、社会保険料預り金勘定等が用いられる場合もあります。



【社会保険料の会計処理】
(社会保険料預時の処理……給料日)
(借)給  料×××(貸)現金預金×××
             預 り 金100

(社会保険料納付時の処理……その月末)
(借)預 り 金 100(貸)現金預金200
   法定福利費100


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営業外支払手形

【営業外支払手形の意義】
「営業外支払手形」とは、主たる営業活動以外の活動(固定資産の購入等)により生じた手形債務を処理する勘定科目です。

商品販売等により生じた営業債権は「売掛金勘定」で処理し、固定資産の売却等により生じた営業外債権は「未収金勘定」で処理します。

同様に約束手形を受け取った場合には、これが商品代金であれば、「受取手形勘定」ですが、固定資産の売却等であれば、「営業外受取手形勘定」で処理します。

現実的には、債務の側での利用が多いと思いますが、商品の仕入代金ならば、「支払手形勘定」を使うし、固定資産の購入の場合は、「営業外支払手形」(固定資産購入支払手形)勘定で処理します。


【まとめ】
商品代金(手形) → 支払手形
商品代金(以外) → 買掛金
備品代金(手形) → 営業外支払手形
備品代金(以外) → 未払金



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売掛金と未収金

【売掛金と未収金】

資産の売却に話を限定すれば、商品の売却代金の未収は「売掛金勘定」で処理します。

有形固定資産を売却した場合の未収は「未収金勘定」で処理します。

同様に土地を売却した場合でも、販売目的で所有する土地の未収は「売掛金勘定」で処理し、使用目的で所有する土地の未収は「未収金勘定」で処理します。

売掛金 → 商品販売代金等の未収
未収金 → 固定資産譲渡代金等の未収



【売掛金と立替金】
簿記論ではさほどお目にかかりませんが、得意先(売掛先)に対する費用の立替えも売掛金勘定で処理することも多いようです。

簿記の基本原理からいえば、立替金でしょう。

しかし、請求(請求書や補助簿)のことを考えれば、売掛金に含めてしまった方が便利といった所でしょうか。

日商での過去の出題をみると、売掛金に含める処理を軸に考えているようです。



【売掛金・買掛金のマイナス残高】
売掛金残が、相手先別にみて、貸方残である場合は、前受金勘定で処理します。

また、買掛金残が、相手先別にみて、借方残である場合は、前渡金(前払金)勘定で処理します。

具体的な仕訳で考えてみましょう。

(売掛金の貸方残の場合の決算整理仕訳)

(借)売掛金××× (貸)前受金×××

(買掛金の借方残の場合の決算整理仕訳)

(借)前渡金××× (貸)買掛金×××



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為替手形

近時、送金手段は多様化し、手形の役割は昔よりも低くなっています。

特に特為替手形の利用の減少は顕著なようで、減少の一途をたどっています。

もともと手形当事者(振出人、名宛人、名指人)三者が異なる国内における為替手形の利用は皆無に近いようです。

振出した手形が取引の結果として返ってくることは、実際には考えにくいでしょう。

本試験でこのような非現実的な設定に基づいた出題があるとすれば、首を傾げざるを得ません。

しかし、なんか答練なんかでは、よく出たりするので困ったものです。


【約束手形の回収時】

約束手形振出時(掛代金の支払)には、次の処理を行います。


(借)買掛金××× (貸)支払手形×××


ので、この手形が戻ってきた(売掛金の回収)ときには、次の処理が行われます。


(借)支払手形××× (借)売掛金×××



【為替手形の回収時】

為替手形振出時(掛代金の支払)には、次の処理が行われます。


(借)買掛金××× (貸)売掛金×××


その手形が戻ってきた(売掛金の回収)としても、借方は、支払手形ではありません。

為替手形における手形債務者(名宛人)は、振出人とは別に存在するので、次の処理が行われます。

(借)受取手形××× (貸)売掛金×××



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約束手形と為替手形

【約束手形】

約束手形は「支払約束証券」と呼ばれます。

作成者(振出人)からみて、名宛人(受取人)に支払を約束するのが約束手形です。

約束手形を振出したら、振出人には、手形債務(支払手形勘定で処理)が生じます。

振出人=支払人……貸方・支払手形
名宛人=受取人……借方・受取手形



【為替手形】

為替手形は「支払委託証券」と呼ばれます。

作成者(振出人)が、名宛人(支払人)に支払を依頼するのが為替手形です。

振出人………………手形債権債務は生じない
名宛人=支払人……貸方・支払手形
名指人=受取人……借方・受取手形

約束手形と為替手形とでは、名宛人の位置付けが異なりますので、注意しましょう。



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