【自己創設のれん】

1 対価性のないのれんである自己創設のれんの計上は、企業の自己評価・自己申告であり、財務報告の目的に反し、認められない。

2 自己創設のれんを計上し、収益を認識することは収益の認識基準としての実現主義に反する。

1 対価性のないのれんである自己創設のれんの計上は、企業の自己評価・自己申告であり、財務報告の目的に反し、認められない。

対価性のないのれんである自己創設のれんの計上は、企業の自己評価・自己申告を意味し、財務報告の目的に反するため、認められません。

資産をのれん価値を含んで評価するには、使用価値を出す必要があります。

算出された使用価値から時価を控除した金額がのれん価値です。

こののれん価値に対して対価を支払えば、それが買入のれんです。

しかし、対価性のないのれんを計上することは、企業が自らの将来キャッシュ・フローを予想し、企業価値を評価し、それを自己申告することを意味します。

財務報告の目的は、あくまでも事実の開示に限られ、企業の自己評価・自己申告を意味する自己創設のれんの計上は認められません。

なお、概念フレームワークでは、自己創設のれんの計上が認められないことに関して、測定の客観性がない等の理由を根拠としていません。


簡単な例で考えてみましょう。

今、タクシー会社を定年でやめ、個人タクシーをはじめるとします。

タクシーの時価(当初の取得原価)は300万円でそれ以外の資産等は無視します。

そのタクシーを利用して今後3年間で450万円を稼ぐとします。

他の収入や経費、そして面倒なので利息も考えなければ(割引計算しなければ)、これが使用価値です。

使用価値450万円−時価300万円=150万円がのれんです。

300万円を払ってタクシーを買った段階でこの150万円ののれんを計上すればそれが「自己創設のれん」です(計上しませんが)。

仮に第三者が個人事業としてまるごと450万円で買うというのであれば、計上されるのれんは、制度上認められる買入のれんになります(これは計上されますが、450万円を出す人がいないかもしれません。)。



2 自己創設のれんを計上し、収益を認識することは収益の認識基準としての実現主義に反する。

自己創設のれんを計上し、収益を認識することは、収益の認識基準としての実現主義に反しています。

上記の例でいえば300万円のタクシーを買った段階で150万円の利益を計上しようというのですから、いろんな意味でダメです。

概念フレームワークでは、自己創設のれんの計上がそもそも財務報告の目的に反すると考えており、収益の認識として相応しいか否かといった視点では検討していません。