【概要】
固定資産の取得原価の規定には、購入⇒購入代価、贈与⇒時価があります。

固定資産の低額譲渡(譲受)を受けた場合には、時価で取引が行われ、一部贈与を受けたとみるべきでしょう。

贈与時に時価をとり、対価が1円なら1円が取得原価では明らかに不合理であり、低額譲受の場合には、時価を取得原価とすべきです。

【固定資産の取得原価に関連する規定】

固定資産の取得原価に関連する規定には、次のものがあります。
・連続意見書第三 第一 四
1:購入⇒購入代金+付随費用
5:贈与⇒時価等を基準とした公正な評価額

・企業会計原則 貸借対照表原則
五F:贈与⇒公正な評価額

【取得価額と取得原価】
・購入代価+付随費用=取得価額
*金利を区別した後の金額を取得価額ともいいます。

・取得価額−譲渡原価=取得原価

・金融商品関連では取得価額と取得原価を区別しますが、有形固定資産では両者を区別せず取得原価が一般的です。

・税法では、取得価額のみを使うようです。


【法人・個人】
基本的には、法人を想定した取扱いです。

企業会計原則や企業会計基準は、上場会社を想定しますが、各種資格試験や国家試験でも株式会社企業を想定すればよいでしょう。

日商3級でも株式会社企業が対象です。

税務では個人が絡むと複雑ですので、詳しくは税理士等の専門家にご相談ください。


【低額譲渡】
一般に第三者間で成立した取引金額は適正な時価とみてよいでしょう。

しかし、市場価格等から余りにも離れる場合は、第三者間取引でも適正な時価として受け入れるのは不合理です。

著しく低い価額の譲受であることが明らかであれば、対価ではなく、時価で移転されたとみるべきです。


【取得原価主義の考え方】
資産の評価を取得原価による考え方は取得原価主義と呼ばれます。

取得原価主義の根拠には、これを取引事実に求める考え方(原価即事実説)と取得した資産の価値に求める考え方(原価即価値説)があります。

現行制度上は、原価即価値説(的な考え方)がとられています。


【税理士試験の過去出題】
税理士試験の財務諸表論では、平成8年に贈与時の取得原価が出題されています。

理論的には、取得原価主義を貫けば、対価(つまりゼロ)とする考え方がないわけではありませんが、企業会計原則及び連続意見書の贈与時の時価としていることからも時価が適切と考えられます。