「収益認識基準」における収益認識は、財・サービス(資産)の移転のタイミングで対価の額により測定して行います。

資産が移転するのは、顧客が資産に対する「支配を獲得」したときです。

「投資のリスクからの解放」や「実現主義」という考え方は、取引(収益)の確定(実現)をきっかけに収益を認識しました。

このような収益認識は、フローを基礎としており、「収益費用アプローチ」による収益認識といえるでしょう。

これに対して「収益認識基準」での収益認識は、「資産負債アプローチによる収益認識」といわれることがあります。

ここでは収益認識には話を限定せず、この「資産負債アプローチ」の意味をもう少し考えておきましょう。
「資産負債アプローチ」という場合、やや異なる2つの意味を持って使われることがあります。

一つは利益の測定面にも及ぶ場合ともう一つは定義面のみにとどまる場合です。


(利益の測定面における資産負債アプローチ)

まずは、利益の測定面における資産負債アプローチをみておきましょう。

会計上、資産や負債というストック項目を重視し、その差額としての純資産の変動額たる包括利益を企業活動の成果たる利益として重視する考え方を資産負債アプローチということがあります。

ごく一般に資産負債アプローチといった場合には(例えば新聞記事等)、こちらを意識している場合が多いように思います。

このような意味での資産負債アプローチでは、資産・負債そのものないしその差額(純資産)としての企業価値の把握に重点が置かれています。


(定義面における資産負債アプローチ)

これに対して現行制度上の資産負債アプローチの意味はかなり違います。

概念フレームワークでは、財務諸表の構成要素の定義を資産、負債からはじめ、資産と負債を他の構成要素の定義に依存せず、独立して定義しています。

このように資産と負債から定義するのは、資産と負債が特に重要だからではなく、資産と負債が具体性を持つため、その作業が容易だからです。

概念フレームワークにおける「資産負債アプローチ」は、資産負債を他の構成要素に比して重要とするものではありません。

また、一定の利益の見方を前提としたものでもなく、定義面だけのものといえます。

もっとも、あくまでも形式面だけにとどまるかといえば必ずしもそうではありません。

資産と負債を言葉として定義する以上、その内容を制限し、会計処理にも影響を及ぼします(収益性が低下した棚卸資産の簿価切下げ等)。


それでは収益認識基準における収益認識は、どのような意味なのでしょうか?

収益認識基準は、これまでの収益認識との関係を検討せずに国際会計基準の規定を丸のみしたものであり、必ずしも明確な結論は出ないかもしれません。

仮に包括利益を重視した収益認識であるなら、資産や負債の価値(時価)の変動に着目する必要があります。

この意味で「収益認識基準」による収益認識が資産負債アプローチによるという場合の資産負債アプローチは、利益の測定面にまで及ぶものとはいえません。

収益認識を企業に着目して行うのではなく、相手先への資産の移転に着目して行うという意味で資産負債アプローチ的なのであって、これが利益の測定面に及ぶとは思えないのです。

確かに収益を認識する契機についての考え方が資産に着目している以上、これまでの収益認識と変わっていることは確かです。

ではどのような意味での収益認識というべきなのでしょうか。

従来の取引を基礎としたアプローチ(収益費用アプローチ)とはどのような関係にあるのでしょうか。

収益認識基準に具体的な考え方の検討がない以上、収益認識基準で新たにとられた会計処理を具体的に検討する必要があるようです。

無念です(意味不明)。


収益認識基準入門(その7)


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収益認識基準入門(その1)