第一問〜第七問については、こちらをご覧ください。

平成24年 税理士試験 財務諸表論 出題予想

今年は10問で当てます!(たぶん)

第八問 資産と負債(制限時間20分)

1 資産概念は、これをa「債務の弁済手段」とする考え方からb「将来の収益に対応する費用」とする考え方を経て、今日ではc「将来のキャッシュフロー獲得能力」とする考え方へと変化している。それぞれの資産概念のもとで想定される会計をそれぞれA、B、Cとしたとき、以下の各問に答えなさい。

(1)A及びBにおける計算目的は何かそれぞれ簡潔に述べなさい。

(2)cはbの省察から生じたものであると言われることがある。Bのもとでは資産性を有するが、Cのもとでは資産としての適性に疑義を持たれることがある項目を指摘し、現行の制度会計上の取扱いを簡潔に述べなさい。

(3)Bで成立する利益とCで成立する利益をそれぞれ指摘し、その認識面での違いを簡潔に述べなさい。


2 資産の分類に関連する次の問に答えなさい。

(1)資産を流動資産と固定資産とに区分する基準を2つあげ、その適用順序に留意しながらこれを説明するとともに有形固定資産に関する適用関係を述べなさい。

(2)1Bのもとで資産は貨幣性資産と費用性資産とに分類されるが、売買目的有価証券がいずれに該当すると考えられるかその理由とともに述べなさい。

(3)1Cのもとで資産は金融資産と事業用資産に分類される。棚卸資産が金融資産と事業用資産のいずれに該当するかについてその評価の違いが明らかになるよう留意しながら述べなさい。


3 負債に関連する次の問に答えなさい。

(1)1Bのもとでは負債とされるが1Aのもとでは負債とされない項目を指摘しなさい。

(2)金融商品に関する会計基準では、金融資産・負債を時価評価することとされているが現実には、多くの金融負債は時価評価されていない。その一般的な理由を簡潔に述べるとともに期末に時価評価される負債を指摘しなさい。

(3)金融負債を自身の信用リスクを加味して時価評価した場合、信用リスクの上昇により評価益が生ずることになる。自身の信用リスクの上昇という企業価値の毀損を招く事態の発生により評価損ではなく、評価益が生ずるという一見矛盾した事態を招くのはなぜかその理由を述べなさい。
<出題の根拠>
資産(負債)概念は、時代とともに変遷を遂げています。基本論点として極めて重要です。異なる資産(負債)概念のもとでの違いを中心に出題しました。

<解答>

(1)Aは財産計算により企業の支払能力(債務返済能力)を示すことに目的がある。
Bは収入及び支出を基礎とした適正な期間損益計算により、企業の収益力を示すことに目的がある。<3点、Aランク>

(2)繰延資産である。繰延資産は、制度会計上、原則として費用処理するが、これを資産計上することが認められている。資産計上した場合には、一定の期間内に費用配分することとされている。<3点、Aランク>

(3)Bで成立する利益が純利益、Cで成立する利益が包括利益である。包括利益は純資産の変動額であるが、純利益がそのうちリスクから解放されている(実現している)点が異なっている。<3点、Cランク>


(1)営業循環基準と1年基準である。営業循環基準は、企業の正常な営業循環過程内にある資産を流動資産とし、それ以外の資産を固定資産とする基準である。1年基準とは、営業循環過程にある資産以外の資産について、1年以内に換金化される資産を流動資産とし、それ以外の資産を固定資産とする基準をいう。
有形固定資産は営業循環の過程で長期にわたって使用される資産であり、営業循環基準により固定資産に分類される。<3点、Aランク>

(2)売買目的有価証券は、売却に制約がなく、市場での換金を随時、行うことが可能であり、売却による回収を予定した資産であるため、貨幣性資産に該当すると考えられる。<3点、Bランク>

(3)棚卸資産には、通常の販売目的で保有する棚卸資産とトレーディング目的で保有する棚卸資産がある。通常の販売目的で保有する棚卸資産は、事業資産に該当し、取得原価で評価するが、トレーディング目的で保有する棚卸資産は期末時価で評価する。<3点、Bランク>


(1)債務性のない引当金<1点、Aランク>

(2)金融負債の多くは、清算に事業遂行上の制約があり、また、市場での取引が行われておらず、市場での清算も目的としていないため債務額で評価する。時価評価される金融負債には、デリバティブ取引により生じる正味の債務がある。<3点、Bランク>

(3)信用リスクの上昇による負債の評価益以上にオフバランスとなっている自己創設のれんに毀損が生じているが、これが会計上反映されないためである。<3点、Cランク>

<解説>

(1)Aが静態論であり、Bが動態論です。
静態論は、債権者保護に資するため、貸借対照表における資産を換金価値がある財産に限り、また、負債を法的な債務に限定することにより、企業の支払能力を示すことが目的です。
動態論は、投資家保護に資するため、収入及び費用を基礎とした適正な期間損益計算を行うことにより、企業の収益力を示すことが目的です。

(2)動態論のもとでは収入及び支出を基礎とした期間損益計算の適正化に重点が置かれ、そこでの貸借対照表は、収入及び支出を収益及び費用に変換する際に生じた未解決項目の一覧表と位置付けることができます。
動態論のもとでは、財産価値を有しない計算擬制的な資産、すなわち繰延資産が計上されます。
B(この場合は収益費用アプローチないし収益費用中心観)のもとでの利益が純利益(当期純利益)であり、C(資産負債アプローチないし資産負債中心観)のもとでの利益が包括利益です。
純利益は、収益−費用で計算されますが、包括利益のうちリスクから解放された(実現した)利益ということもできます。
認識(タイミング)に着目していえば、リスクから解放されているか(実現しているか)否かが包括利益と純利益の違いです。


(1)資産を流動資産と固定資産とに区分する基準には営業循環基準(正常営業循環基準)と1年基準があります。
適用にあたっては、まず営業循環基準が適用され、営業循環基準が適用されない資産に1年基準が適用されます。
固定資産については、営業循環基準により固定資産とされる点に留意しましょう。
流動固定分類は、企業の支払能力の表示に役立ちます。
なお、繰延資産はそもそも換金価値を有しない資産であり、流動固定分類になじまない資産といえるでしょう。

(2)資産は貨幣性資産と費用性資産とに分類されます。
貨幣性資産とは、文字どおり貨幣ないし貨幣として回収することを予定している資産をいい、費用性資産とは、後に費用となる資産をいいます。
売買目的有価証券は、時価の変動による利益獲得をめざした有価証券であり、売却にあたっての制約はなく、市場で随時、換金することが可能であり、売却による回収を予定した資産である貨幣性資産に該当するといえるでしょう。

(3)棚卸資産には、通常の販売目的で保有する棚卸資産とトレーディング目的で保有する棚卸資産があります。
これを企業が行う投資の種類にあてはめれば前者が事業投資、後者が金融投資に該当します。
事業投資は、企業が行う一般的な事業に対する投資であり、金融投資は時価変動をめざす投資です。
一般的には、事業投資のネライは事業活動に使用することによるキャッシュの獲得であり、その間も事業用資産は使い続けるのですから原価評価されます。
金融投資は時価変動をめざすものであり、時価評価され、評価差額は損益とされます。


(1)静態論と動態論のもとでの大きな違いが繰延資産とともに引当金といえます。
もっとも債務性のない引当金が解答となる点に注意しましょう。

(2)負債は原則として債務額で評価します。
時価で評価されるのは、デリバティブ取引により生じた正味の債務です。

(3)負債を自己の信用リスクを加味して評価した場合、信用リスクの上昇により、負債の評価額は小さくなり、評価益が計上されます。
自らの価値の下落を意味する信用リスクの上昇により評価益(利益)が生ずることとなります。
これは、実際には貸借対照表に計上されていない資産(自己創設のれん)に負債の評価益以上の価値の下落が生じているものの、それが会計上は反映されていないためと考えられます。