最後になりましたが、試験的に重要だろう点を中心にまとめておきます。
クリーン・サープラス関係は、資本取引以外の「資本の増減=利益」という関係です。

これまで「株主資本と純利益」の間で成立していたクリーン・サープラス関係は、包括利益の表示の導入により、連結財務諸表において「純資産と包括利益」の間でも成立することになりました。


クリーン・サープラス関係の成立は、会計情報の信頼性を高め、企業評価に役立ちます。

会計上の利益は、キャッシュ・フローに根差したもの。

たとえばリサイクリングを行わず、一致の原則を満たさない利益情報は、その信頼性を損ない、企業評価にも役立たない可能性があります。

日本基準ではフロー情報として包括利益よりもその有用性に勝るだろう純利益を重視しており、「株主資本と純利益」とのクリーン・サープラス関係は特に重要です。


クリーン・サープラス関係の制度的な推移は次のとおりです。

(1)当期業績主義(PLの最終値が経常利益)が採用されていた時代 ⇒ 成立せず

(2)純資産直入がなかった時代 ⇒ 純資産と純利益の間で成立

(3)純資産直入の登場した時代 ⇒ 成立せず

(4)純資産基準の創設 ⇒ 株主資本と純利益の間で成立

(5)包括利益基準の創設 ⇒ 株主資本と純利益、純資産と包括利益(連結)で成立

なお、現在、過去の誤謬の訂正等により過去の財務諸表が直接修正される場合もクリーン・サープラス関係が害されているとはいえるでしょう。


包括利益は資産負債アプローチ的な利益であり、純利益は収益費用アプローチ的な利益です。

わが国の概念フレームワークは、定義面で資産負債アプローチをとりました。

しかし、測定面では一つの測定値に依存しない多面的なアプローチがとられています。

フロー情報として重視しているのは包括利益ではなく、純利益です。

包括利益を純利益と併せて表示するために必要なのがリサイクリングです。

現状では、このリサイクリングが存在し、クリーン・サープラス関係が二重に構築され、複雑な感は否定できません。

しかし、概念フレームワークが大きくスタンスを変えることはおそらくないでしょう。

貸借対照表の資産・負債の測定値を統一することに意味がある。

その差額である純資産の変動額(包括利益)に純利益を上回る役立ちが期待される。

このうちのいずれかが確認されない限り、そのスタンスを変えることは多分ありません。

いや、そもそもそれは簡単に結論の出せる問題などではないのでしょう。

地味な検証作業を続けながら確認していく以外に道はない。

本来の学習スタンスにも共通するであろうそんな結論が概念フレームワークからも見て取れる点を指摘して長かった記事を終わりにします。

お付き合いいただき有り難うございました。

直前期の冗長な記事が、本試験で少しでもお役に立てればと願っています。



クリーン・サープラス関係とは何か(完)




<参考文献等>

参考文献等を提示しておきます。徐々に難易度が上がっていきます。

(1)クリーン・サープラス関係の一般的な理解を標準的なテキストで確認しておきましょう。




(2)わが国におけるクリーン・サープラス関係の理解を知るために初代企業会計基準委員会の委員長であった斎藤静樹先生の概説書及び研究書です。ちょっとハードです。




(3)テキストとしてはもっともクリーン・サープラス関係に関する記述が詳しいでしょうか。ストック面に関する記述はかなり独特かもしれません。



(4)包括利益と純利益の実証研究書です。猛者の方はどうぞ。