前回は金融商品会計基準導入以後の制度的な推移を考えました。

今回は、それ以前と最近のお話をちょっと。
すごーく昔、損益計算書の最終値は現在の経常利益でした。

このような経常利益を損益計算書の最終値とする考え方を「当期業績主義」といいます。

経常利益は、期間外損益を排した利益であり、企業の経常的な収益力を示します。

企業の業績を示す利益としては純利益よりもふさわしいといえそうです。

たまたま宝くじに当たったような利益(特別利益)や災害による損失(特別損失)等の期間外損益項目を除いて算出される利益が企業の業績をよりよく示すと考えるのは自然でしょう。

これに対して純利益を損益計算書の最終値として示す考え方が「包括主義」です。


当期業績主義をとった場合は、期間外損益項目は損益計算書に計上されず、剰余金計算書(今の株主資本等変動計算書に近いでしょうか)に直接計上されます。

この場合は、損益計算書を経由せずに剰余金が増えており、クリーン・サープラス関係は害されています。

当期業績主義と包括主義というかつての議論にもクリーン・サープラスの議論が影響します。

もっとも、包括主義でも中途で当期業績主義的な利益(経常利益)の表示は可能です。

現行の損益計算書は、当期純利益を算出する過程で当期業績主義的な利益である経常利益を表示することで折衷的な解決がはかられています。


最近のケースでは、変更誤謬基準によって過年度の財務諸表が直接修正され、クリーン・サープラス関係が害される場合があります。

過去の誤謬の訂正等により過去の財務諸表を直接修正する場合ですね。

過去の誤謬の訂正等による財務諸表への影響は、株主資本等変動計算書で利益剰余金の修正(累積的影響額)として表示されます。

クリーン・サープラス関係を維持して、当期の財務諸表に前期損益修正として表示するのがこれまでの取扱いでした。

この場合は、全体期間を通じたクリーン・サープラス関係は形式的に保たれています。

これに対して遡及処理を行うと全体期間のクリーン・サープラス関係は保たれません。

しかし、当期の利益から当期の業績に関係のない前期損益項目を除外することは当期の業績を表示するという観点からは有益でしょう。

また、開示期間の財務諸表を同一の土俵で比較することもできます。

単一の観点(この場合は全体期間のクリーン・サープラス関係の維持)のみが会計処理や表示の根拠になるわけではない点にも注意が必要です。



クリーン・サープラス関係とは何か(6)



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