最近の税理士試験の財務諸表論は、穴埋めの出題が2題。

この穴埋め問題の出題について考えてみました。
まずは過去4年の穴埋め問題の傾向を振り返っておきましょう。

平成23年:第一問 会計基準(本文)  第二問 作文

平成22年:第一問 作文  第二問 会計基準(本文)

平成21年:第一問 作文  第二問 会計基準(本文)

平成20年:第一問 会計基準(意見書等)第二問 会計基準(本文)

平成19年:第一問 なし  第二問 会計基準(意見書等)


ざっくりとは、会計基準(本文)からの出題が1題、作文や意見書や結論の背景から1題というパターンが多いことがわかります。

また、本文からの出題がない年(平成19年)もあります。

平成23年の第一問は穴埋めの文章としては想定がしにくく、穴埋め問題集などが存在していても、欠落していた部分が多いと思われます。

穴埋め箇所を想定した問題をやるにしても直接的な効果は低いでしょう。

それを理解のスタートや補足として用い、出たら儲けもの程度の位置付にせざるを得ないことが分かります。



以下、3つの点を指摘しておきましょう。


(1)出題の意図は会計基準をしっかり読めというメッセージ

(2)実際の出題は、会計基準からが1題、作文からの出題が1題

(3)その多くは理解で解答できる




(1)会計基準を読めというメッセージ

会計基準からの穴埋めは続いています。

試験委員が会計基準を大事だと考えていることははっきりしています。

しかし、それは決して会計基準を単に覚えたり、ましてや重要句だけを抜き出してそこだけ覚えることを要求しているわけではありません。

それは学習の参考として会計基準を読めというメッセージです。

それ以外は考えられません(あったら教えてください)。

また、試験戦略としても(2)の理由から穴埋め箇所だけを覚えても、演習レベルではともかく、実際の本試験ではさほど点数は伸びないでしょう。

それは、本試験では作文の出題比率が高く(約50%)、また、会計基準本文からの出題時に想定しにくい箇所からの出題も少なくないからです。



(2)実際の出題は会計基準からが1題、作文からの出題が1題

かつては、理論の2問ともが会計基準からの出題があったこともあります。

しかし、最近の出題は会計基準からの穴埋めの出題が1題、試験委員の作文での出題が1題というのが標準的です。

会計基準本編からの出題時には、想定しにくい文章からも多いです。

会計基準といっても実際にはかなり多いですから、そのすべてを覚えるなんてことはそもそも不可能でしょう。

そんなことを試験委員が要求しているハズはありません。

あらかじめ出題されそうな会計基準がわかれば別ですが、実際に出題を順に追っているとかなりの工夫がなされているのが分かります。

こちらが重要だと指定した程度の量では穴埋めすら解答できなくなりつつあります。

ここは事前の演習とはかなり異なります。

そのことが分かるのが本試験だとマズイので、実際に過去の出題を検討する(解いてみる)のがよいでしょう。

まあ、穴埋め問題集なんてのがあってもそこからほとんど出ないなんてことは十分にあり得ます。



(3)多くは理解で解答できる

さて、それではどうすればよいかですが、実際には多くが理解で解答できます(全部とはいいません)。

実際に出題された穴埋めを検討すると基礎的な理解につながるであろう出題を想定していることがわかります。

ただし、本当に枝を消し切れているかは微妙な問題も少なくありません。

しかし、理解で空欄が埋められるハズの出題が好ましいと考えていることは間違いないでしょう。

その意味では、昨年の第二問の穴埋めは大変すばらしいと思います。

文章が全くの作文でありながら、穴埋めの枝(複数解答)を消してました。

最初に見たときはちょっと唸りましたよ。

この手の問題は私あたりでは作れませんね。

そしてごく一般的には、受験機関でもなかなか作れないと思います。

まあ、会計基準の穴埋めのが無難ですから。




今年の試験委員は2名とも重任です。

穴埋め問題の傾向は去年とそう大きく変わらないハズ。

穴埋め問題はみんな一緒(会計基準のベース規定のみ)なんて思わないで、まずは昨年の穴埋め問題をてがけてみてはいかがでしょうか。

それが傾向と対策の最もホントを物語っていると思います。