理論学習で大事なのは、対象を一言でいえるほど端的に捉えること。

そのことがなぜ大事なのかを「資産の定義」を例に考えてみました。

(1)一般的な資産の定義

一般的な資産の定義は、概念フレームワークの第3章にあります。

資産とは、過去の取引または事象の結果として報告主体が支配している経済的資源をいう。


資産の定義を書けならこれでよいですが、その可能性はほぼありません(日商一級以上の会計関連の出題で見たことはありません。)。

税理士試験もそうですが、問われるのが資産概念を使って別のことを説明しろという出題だからです。

そんなときに生きるのは、長い定義ではありません。



(2)ズバリを心がける

私なら段階を踏まえます。

1.資産=経済的資源

2.資産=経済的資源、経済的資源=キャッシュの獲得に貢献する便益の源泉

3.資産=「過去の〜。」「経済的資源とは〜」



1.まずはとにかく端的に捉えるのが重要です。

資産が「経済的資源」であることがスタートでしょう。


2.ただ、これでは経済的資源の意味がよく分かりません。

経済的資源がキャッシュフローの獲得能力であることを次におさえるべきです。


3.その上で概念フレームワーク上の定義をきちんとおさえることは全く問題ありません。



(3)なぜめんどくさいことをするのか?

なぜこんなことをするのかを実際の問題に即して考えます。

たとえば、日商簿記一級での繰延税金資産の資産性に関する出題を考えてみましょう。

やや、出題形式が特殊ですが、問いとしては「なぜ繰延税金資産は、経済的資源(経済的便益)として資産性を持つのか」という出題です。

解答としては、「繰延税金資産は、将来の法人税等の前払いであり、キャッシュ・アウトフローの減額をもたらすため」といったあたりでしょうか。

つまりは、繰延税金資産は、将来の「現金支出の減少」が減少するという意味でキャッシュの獲得に貢献するから経済的資源としての資産性を有するわけです。

このニュアンス(現金支出の減の減)は、静態論のもとでは繰延税金資産が資産性を持たないことからも極めて重要です。

このような解答は一般的な資産の定義からは出てきません。

日商の例では字数制限でそもそも書けませんが。

むしろ資産て何(経済的資源)、経済的資源って何(キャッシュの獲得能力を持つもの)といった理解が重要なことが分かります。

逆にきちんとした定義だけでは太刀打ちできないのです。

そこをいくらしっかり覚えて書けるようにしても後から理解がついてくることもありません。

これは日商一級だけではないです。

同様の論点は公認会計士試験でも出題されていますが、定義は問題に示され繰延資産の資産性を説明する問題でした

税理士試験では、繰延税金負債、のれん、自己創設のれん等の出題があります(第70回<2020年>のオペレーティング・リース資産の資産性なんかもそうですね。




(4)ではどうすればよいのか

まずはズバリの一言。

その後にそれをきちんと言うにはどうすればよいのかを心がけるべきでしょう。

会計基準を意味をとりながら読むことの効果は大きいですが、何が大事かを踏まえずにたくさん覚えてもあまり意味がありません。

こんな話は問題を解かないと分からないという声も聞こえてきそうですが、はじめからある程度の想定はできます(想定しようとするだけでかなり違います)。

(1)をガチガチに固めるより(2)1〜2までをしっかりやった方がよいことがある程度わかるようになっていればよいです。

そして、実際の本試験では(2)の2までが勝負です。


会計人コースの付録や超短問題、つながる会計理論等はこの点も踏まえて作成しています。

基本的には、(2)の1.が穴埋め、2.がゴシックになっています。

問題をたくさん解けば、こんなことも見えてきますが、はじめからそれに近い形で学習をすすめられればいいですよね。



まずは、一言。

そのうえで段階を踏まえた学習をこころがけましょう!