自転車に乗れるようになるには、実際に自転車に乗るのが一番。

いくらハンドルを握り、サドルに跨って、ペダルをこぐシュミレーションを繰り返しても、自転車に乗れるとは限りません。

文章を書くのもたぶん同じです。

自転車に乗るコツがあるように、文章を書くにもコツがあるハズ。

誰しも文章は読めるでしょう。

実際に書いてみて、それを見直し、修正するだけでも、コツは少しずつ見えてきます。



理論学習のはじめの一歩は、対象の本質を「一言で捉えること」でした。

初期の理論学習では、講義を受け、テキストを読んだりすると思いますが、その段階で最も大事です。

これを第1ステップとするなら、次になすべきが、第2ステップである「書くこと」といえるでしょう。
ここで言う「書くこと」は、定型の文章(模範解答等)を覚えて書くことを意味しません。

大づかみに把握した「一言」をもとにドンドン実際に問題(穴埋めや○×等の小さな問題が良)を解いたり、まとめたりという行為を意味します。

短く言ってみるのもいいですね。

とても大事なことを把握したからといって文章なんかまだ書けないよ。

そんな声も聞こえてきそうです。

でも、いいんです。

最初は「○○は、<重要句>である。」でいいんです。

見直しの際に重要句が入っていなければ、それを加える。

余りにも短いなら、もう一つ異なる重要句を加えてみる。

そんな感じでいいんです。

最初は、想定される模範解答の10%のできで構いません。

そこから10%ずつでも上げていけばいいんです。

いわゆる模範解答の50〜60%も書けるようになれば、十分です。

大事なのは途中で模範解答に乗り換えないこと。

途中で乗り換えては少しずつ仕上げていった意味がありません。

第一、その問題と同じ問題が出ることは考えにくく、文章を覚える意味は大きくありません(昨年の第二問などは3分の2が想定できない感じの問題です)。

逆に自分が覚えたことに自信があると解答要求ではないことを自信を持って書くなんてことになりかねません(←本当に多いです。)。

実際の試験で不正解を書く練習を一生懸命するなんてことは避けたいです。

完全な文章は、「覚えなくてもよい」のではなく、「覚えない方がよい」のです。

それでも仮に、模範解答に近づけたいなら最後の1〜2か月で十分でしょう。

私は今の出題傾向ならその必要もないと思っています。

むしろその分を会計基準(特に結論の背景や意見書)を読むのにあてたり、他項目との関連を考える方が力もつくし、実際の合格にも近いハズ。

これで十分、合格に必要な力がつきます。



ちょっと長いですが実際の例で考えてみましょう。


問「実現主義の意義とその要請される根拠を述べなさい。」

答「実現主義は、収益を実現時点で認識する基準である。収益の実現とは、販売等の取引の実現を意味するが、商品等を引渡し、現金や現金等価物を受領した段階で収益は実現する。このように、確実、かつ、客観的な収益を計上することができるため収益の認識基準として実現主義が採用されている。」



題意は「実現主義の意義」と「実現主義の根拠」です。



まずは、大事な一言です(第一ステップ)。

意義⇒収益の認識基準

根拠⇒確実で客観的


これだけで文章をつくったっていいです。


「実現主義は収益の認識基準である。実現主義は、確実で客観的なため採用される。」


まあ、なんとなくそれっぽいじゃないですか。

でも、考えてみると実現のタイミングで収益を認識するってのが抜けてます。

「実現主義は実現の時点で収益を認識する基準である。実現主義は、確実で客観的なため採用される。」


実現の要件も入れといた方がいいでしょう。

「実現主義は実現時点で収益を認識する基準である。収益は、商品等を引渡し、現金等を受領した段階で実現する。実現主義によれば、確実、かつ客観的な収益を認識することができるために採用されている。」


ここまでくるとそろそろ勝負になりそうな答案ですよね。

解答は、わざと文章をそれぞれ少し変えています。

後は商品だけじゃなくて、サービスも入れるとか、精度を少しずつあげていけば別に無理なく、合格答案ができるハズ。

これは完成されいる必要はなく、毎回、文章として違っていて全くオッケーです。

というか違っているべきです。

何か面倒くさいと思われるかもしれません。

でも、大事な基礎概念は、この位のことをしておいた方が合格には近いでしょう。

経験的には、こんな学習をしているとどんなことがあっても大事な一言は忘れません。

それはそれが自分のものになったという証でもあるのです。


「実現主義は収益の認識基準であり、確実で客観的であるが故に採用される」


定型的な文章を覚えていれば、その文章は再現できるかもしれません。

しかし、経験的にも、自分の中に残るのはその表現された文章であって、意味内容ではありません。

それではその文章がいつまでも覚えた文章として自分の中で他の孤立したままのハズです。

それを応用できる局面は限られています。

例えば税法の事例問題などでは有効かもしれません。

しかし、財務諸表論でそれをいかす局面はほとんどないといってもよいハズです。

じっくりとやっていると仮に細かい話は忘れても自分の中に残るものがある。

それこそが大事です。

そして、その残ったものを他の項目とつなげることができるか。

財表の理論で問われているのは、定型文を残すことなどではありません。

過去問をしっかりみてください。

誰も覚えた答えを吐き出せなんて言ってません。

出題者がききたいのは、「わかっているのか」、「知識が孤立せず、つながっているか」なんです。

では、つなげるにはどうすればよいのか?

それが次の最重要、かつ、難解な課題です(って、今度で最後です)。



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