企業会計の大きな目的は損益計算であり、損益計算を支える極めて重要な原則に費用収益対応の原則があります。

実質的な意味の費用収益対応の原則は、いわば合理的な引き算を要求する原則です。

身長170センチから体重50キロを引いて120?。

こんな計算は誰もしないですよね(って、あたりまえか)。

損益計算上の意味のある引き算(対応)を要求するのが費用収益対応の原則です。

もっとも対応といってもどの程度のつながりを想定するかで随分と意味合いは異なってきます。
たとえば、100円で仕入れた商品を120円で販売する。

この場合の売上収益120円と売上原価100円の間には分かち難い関係があります。

むろん商品を販売をしなければ120円の売上高も100円の売上原価も生じません。

このような一方のみで存在することがありえず、両者が分かち難く結び付けられている関係を一般に個別的対応ないしは直接的対応といいます。

個別的対応は商品を間にはさんだ因果関係です。

一方が他方の存在を前提とする関係といってもよいでしょう。

売上がなければ売上原価もありませんし、その逆もありません。

金額的にも両者のつながりを認めることができます。



もっともこのような意味での対応関係の種類は企業活動を行う上で多くありません。

販売にあたって手数料を支払う。

1個売れたらいくらとかいうタイプの手数料です。

このような売上収益と直接販売費の間にも直接的対応関係があるといえるでしょう。

しかし、それ以外の多くの収益と費用の関係にはこのような意味でのすんごく明確な対応関係を認めることはできません。

売上高と直接販売費以外の販売費及び一般管理費の関係はどうでしょうか。

たとえば販売店舗の従業員の給料を考えてみましょう。

販売店舗に従業員がいなければ商品の販売はできません。

販売店舗の従業員の給料が売上高に貢献していることは間違いないでしょう。

しかし、販売員給料と売上高が何らかの意味で直接的にリンクしているかというとこれも違います。

すごく緩やかには販売員の給料を上げれば、がんばって売ろうとするので売上に何らかの影響はあるかもしれません。

しかし、その影響は金額的に確認できません。

このように売上高と販売員給料との間に何らかの関係があったとしても、その間に必ずしも金額で確認できるような因果関係はないです。

このような多くの収益と費用との関係を期間的対応ないしは間接的対応といいます。

いわば期間をはさんだ収益と費用の関係が期間的対応です。

まあ、それなりの関係はあるけど、結局、同じ期間に計上されるよねって感じでしょうか。

期間的対応のもとでは、両者の間に金額的なつながりを認めることはできません。


このように収益と費用の対応関係には商品等を媒介とした直接的対応と期間を媒介とした間接的対応とがあります。



直接的対応 ⇒ 商品等を経由した関係<売上と売上原価など>

間接的対応 ⇒ 期間を経由した関係<売上と直接販売費以外の販売費など>



対応とは何か(9)