例年、試験前後に受講生から学習の経過や試験の結果のご報告をいただく。

今年ほど、記憶に残る年はない。
私の指導する学習スタイルは、テキストや基本書をきちんと読み、会計基準を参照し、自ら考え、そして書く。

ただ、それだけである。

ブレはない。

試験の傾向にもよるが、むしろ学習期間の長い(半年以上)試験では、その方が良い結果(特に2年目以後)をもたらすのは間違いないだろう。

試験合格後のことも考えればなおさらである。

もっとも受講生のスタイルは様々であり得るし、講師の思う所と同じになるとは限らない。

しかし、受講生の一人、N君はブレなかった。

そんなN君から試験直前にこんな話を聞いた。

どうも、学習スタイルの違う人達に囲まれて、

「そんな勉強の仕方をしてるやつなんかいない。そんな事しなくてもうかる。」

そういわれたらしい。

私自身は、そんな事はほおっておけといつも思っているし、いってもいるが、とにかく悔しかったらしい。

「絶対に負けたくない」という。

「負けたくないです。」

唇を噛みしめながら何度もつぶやくN君が強く印象に残った。

その姿をみて何かが違うと思ったが、その時に違和感の正体はみえなかった。



試験終了後、N君と再会した。

普段、こんなことはいわないんですがと前置きしながら「絶対、受かりました。」と力強く語ってくれた。

件の彼から電話があったようだ。

「試験の問題を見て、頭が真っ白になり、N君の出来そうな問題だと思った」といっていたらしい。

私は、試験の問題を実際にみて、そしてN君からこの連絡を受けたとき、試験前に感じていた違和感の事を急に思い出した。

そしてその正体が見えた気がした。

違うのだ。

学習スタイルは多岐にわたる。

それをどうこういっても始まらない。

しかし、私からみてごく正統なスタイルが異端に映るとすれば、何かがしかも大きく違っているのだ。

少なくとも私はそう思う。

誰に責任があるわけではないのかもしれない。

自ら考え、自らが正しいと思った道を歩む。

各人はそうせざるを得ない。

しかし、ごく正統な学習スタイルが異端視されるような状況があるとすれば、それは改められる必要があるとしか私には思えない。

そんなことを強く感じさせる出来事だった。



発表後、N君から合格の報をもらった。

その声は、ただ輝きに満ちていた。



(追記)

この記事は、試験直後の下書きに発表後の出来事を加筆したものです。