いよいよ試験まであと2週間強ですが、学習は順調でしょうか。

何をすべきかを見失いがちですが、攻める(難しい問題を解く)方が燃える方は難しい問題にも果敢にチャレンジしてよいと思います。

難しい問題にちょっと萎えてしまったという方は、これまでに解いた問題の精度を上げましょう。


理論学習は、これからの時期が効果的です。

ただ、まったく新しい理論に手をつけるのではなく、すでに学習済みの項目の精度を上げるのがよいでしょう。

このブログでもこの時期に奇抜な項目をあげるのは避けますが、よく登場する概念の会計基準での位置づけを確認しておきたいと思います。

それは、「資本取引」です。

まずは、どこで登場するのか?からスタートです。

資本取引といってすぐに思い浮かぶのは、企業会計原則の一般原則第三でしょう。


資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。



前段が資本取引と損益取引を区別することによる適正な期間損益計算を要請した規定です。

後段がこれらの取引の結果生じた剰余金の混同を禁ずる規定です(後段の理解には分岐があるようですが、おいておきましょう)。

同じく企業会計原則の注2にも資本取引が登場します。


「資本剰余金は、資本取引から生じた剰余金であり、利益剰余金は損益取引から生じた剰余金、すなわち利益の留保額であるから、両者が混同されると、、企業の財政状態及び経営成績が適正に示されないことになる。従って、例えば、新株発行による株式払込剰余金から新株発行費用を控除することは許されない。」



株式払込剰余金は、増資等による払込金額のうち資本金に組み入れなかった部分です(資本準備金として処理するのが一般的です)。

資本剰余金は資本取引から生じる。

利益剰余金は損益取引から生じる。

このことは間違いありません。

しかし、資本取引や損益取引の意味がやや明確ではなかった面があったようです。

典型的な増資取引は資本取引。

典型的な経費の発生取引は損益取引。

こんな典型的な取引はよいのですが、ちょっと紛らわしいのが利益配当です。

これは資本取引、損益取引のいずれでしょうか。



利益剰余金は損益取引から生じますが、利益配当は利益剰余金を減らす取引だから損益取引だという考え方があります。

答えを現行の会計基準で探してみましょう。

会計基準は、包括利益の表示に関する会計基準です。

21項は次のように述べています。

包括利益を表示する目的は、期中に認識された取引及び経済的事象(資本取引を除く。)により生じた純資産の変動を報告することである。



同じく注1では、(クリーン・サープラス関係について)次のように述べています。

ある期間における資本の増減(資本取引による増減を除く。)が当該期間の利益と等しくなる関係をいう。



純資産の変動額が包括利益です。

資本の増減が利益と一致する関係がクリーン・サープラス関係です。

いずれにも共通する前提として、資本取引による部分は除く必要があります。

増資により純資産が増えても、これはいかなる意味でも利益ではありません。

ここでの資本取引は、純資産(資本)の持分所有者、つまり、典型的には株主との直接的な取引を意味します(たとえば4項参照)。

利益配当が株主との直接的取引に該当することは間違いないでしょう。

つまり、現行制度上、利益配当は「資本取引」に該当することになります。

企業会計原則では必ずしも明確ではなかった資本取引の意味が実はクリアになっているというお話でした。