工事契約基準のヒネリ部分を考えてみました。
(1)収益の認識基準との関係

工事契約基準では、工事収益と工事原価の認識について扱っています。

伝統的な収益の認識は、実現主義によっていました。

概念フレームワークではリスクからの解放です。

この実現、そしてリスクからの解放の考え方はよく整理しておきましょう。



他の収益認識の問題(特殊商品販売等)なども整理しておくとよいでしょう。

なかでも割賦販売は特徴的なのでしっかりおさえておきましょう。

一般の商品販売が商品の引渡しにより収益を認識するのに対して、工事進行基準ではそれ以前に収益が認識されます。

割賦販売では引渡しの後に収益が認識されるわけですから極めて対照的といえるでしょう。



(2)比較可能性

従来の工事収益の認識は工事進行基準と工事完成基準との選択でした。

この点が比較可能性を欠くものとの認識があったようです。

比較可能性の視点は国際基準において強調されています。

概念フレームでは、必ずしも比較可能性の視点が重視されているとはいい難い(支える特性ではなく、一般的制約)ことからむしろ出題時に注目される可能性があるかもしれません。



(3)工事進行基準

工事進行基準に関して、これまであまりみることのなかった原価比例法以外の方法(施工面積や直接作業時間を基準とする方法)。

原価比例法以外の方法の指摘は、原価比例法が必ずしも合理的でない場合を想起させます。

また、例えば、ある期に作業場のミスなどにより予定よりも原価がかかってしまった。

工事原価総額がその増分だけ増えるとすると工事利益は、その期に多く計上されてしまいます。

大事なのは単純な原価の発生状況そのものではなく、工事の進捗状況である点も意識しておきたいところでしょう。



工事進行基準をとった場合の完成工事未収入金は、法的には債権とはいえません。

このような点を考えると資産負債アプローチの立場からは工事進行基準ってどうよ?という考え方もでてきそうです。

金銭債権に準じて考えるわけですから、貸倒引当金の設定や外貨である場合の換算もあります。

この辺も軽く視野に入れておきましょう。



(4)引当金

工事損失引当金は簿記論での出題事績もあり、要注意です。

一般的な引当金と合わせてしっかり学習しておきましょう。

工事損失引当金の計上のネライは、損失を将来に繰延べないという意味では、棚卸資産の評価や固定資産の減損とも共通します。