まずは基本をしっかりとさせることが重要です。

そこが出題の3分の2は占めるハズ。

そこをクリアした後に控えているのが、そこいったのねというヒネリ部分。

リース基準のヒネリ部分を考えてみました。
(1)資産性・負債性

リース取引は法的には、賃貸借取引です。

ファイナンス・リース取引では、これを売買処理します。

借手の会計処理も資産(リース資産)と負債(リース債務)の両建です。

それぞれの資産性・負債性という視点は重要でしょう。

概念フレームワークの資産・負債概念をおさえるとともに、じゃあこんな場合はどう?という点にも意識を向けましょう。

資産性、負債性に論点がありそうな繰延税金資産・負債、繰延資産、引当金などとのつながりを考えておくとよいかもしれません。


両建で思い出すのが資産除去債務です。

これも、資産(建物等)と負債(資産除去債務)という処理が行われます。

リース基準を聞いておいて、最後にそれ以外に資産と負債を両建て処理することってない?

いや、これも視点としてはありだと思いますが、資産除去債務が昨年に出ているので微妙です。


所有権移転外ファイナンス・リース取引に関しては、特に負債性という切り口が重要です(31項参照)。

軽く意識を向けておきましょう。



(2)資産の発生・消滅の認識

ある取引が売買か、賃貸借かという話は言いかえれば、ある資産の支配が移転するかどうかの問題です。

このような支配の移転に関する考え方には、リスク・経済価値アプローチと財務構成要素アプローチがあります。

金融資産・負債には財務構成要素アプローチがとられ、それ以外の資産(典型は固定資産等)には、リスク・経済価値アプローチがとられます。

ファイナンス・リース取引の定義(5項)をみてもわかるように、リース資産(固定資産)には、リスク・経済価値アプローチがとられています。

この点のヒネリも自在ですが、想定しておくとよいでしょう。

リースはリスク・経済価値アプローチだけどこれとは違う考え方が適用される資産って何?

いや、いいじゃないですか。

一応、これもキープっと。


支配の移転の話は、棚卸資産に関しては、収益の認識の問題として語られてきました。

伝統的な収益の認識規準は、実現主義です。

概念フレームワークでの収益(純利益)の認識は、リスクからの解放です。

収益認識との関連も視野に入れておきましょう。



(3)貸手の会計処理
貸手といっても通常はリース会社ですので細かい会計処理の話という感じではありません(って、昨年の簿記論で出題されていますが)。

計上される資産の話です。

売買処理を行っても所有権移転外では、リース資産の所有権は借手に移転しません。

結局は戻ってくる部分があります。

リース会社でそれを利用するのは難しいでしょうから売却することになるでしょうが、この処分予定価額(見積残存価額)部分が当初に資産を構成する点が他の資産にはみられない特徴です。

所有権移転ではリース債権という金融資産部分だけですが、所有権移転外では見積残存価額部分も含むためリース投資資産と名前が変わります。

貸倒引当金を設定する場合もリース債権は全額を対象にすべきですが、リース投資資産の全額を対象にすべきではありません。

細かい気もしますが、最後のヒネリ部分としてはありでしょう。

貸手で計上される資産の表示科目の名称と貸倒引当金の設定での違いなんてよくないですか。



(4)オペレーティング・リース取引への売買処理の適用

現状ではオペレーティング・リース取引に対しては賃貸借処理が適用されています。

しかし、仮に解約が可能であっても実際に資産をある程度の期間で使用していく予定ならば、その固定資産を使用している事実はファイナンス・リースもオペレーティングリースも変わりありません。

オペレーティング・リース取引にも売買処理が適用される理論的可能性にも目を向けておきましょう。

その場合は、使用権がキーワードです。



(5)リース・バック取引

セール・アンド・リースバック取引は、自己所有の資産をいったん売却し、すぐに賃借する取引です。

制度上は、いったん売却処理を行い、売却損益を繰り延べて、賃貸借取引にリース基準が適用されます。

賃貸借処理がファイナンス・リース取引に該当すればリース・バック取引は売買+取得取引ということになります。

なら何も行わなかったのと同じではないかという考えもありそうです。

その場合には、リース・バック取引はただの資金取引(借入)ということになります。

ここは資産の消滅の認識の考え方(リスク・経済価値アプローチ)とも関連します。



あくまでもリース基準を先行してしっかりやるべきですが、ヒネリ部分にも意識をむけるようにしましょう。