〔第一問〕−25点−
 棚卸資産の会計処理に関する以下の各問について、答案用紙の所定の箇所に解答を記入しなさい。

1 次の文章の空欄( 1 )から( 3 )に適切な用語を記入しなさい。
(ア)低価法を原価法に対する例外と位置付ける考え方は、取得原価基準の本質を、( 1 )の取得原価で据え置くことにあるという理解に基づいたものと思われる。しかし取得原価基準は、将来の( 2 )を生み出すという意味においての有用な原価、すなわち(イ)( 3 )な原価だけを繰り越そうとする考え方であるとみることもできる。


2 これまで下線部(ア)の考え方のもとで低価法の適用は企業の選択に委ねられていました。これは必ずしも低価法が適正な期間損益計算に資するものではなく、むしろ損益計算をゆがめる可能性に配慮したものと考えられます。これまで低価法が許容されていたと考えられる損益計算とは別の視点を端的に指摘しなさい。

3 下線部(イ)の考え方の元における評価は結果として従来の低価法を適用した場合と大きく異なりませんが、その考え方は以前と変化しています。下線部(イ)の考え方が従来の取得原価基準とは変化していることを踏まえ、次の問に答えなさい。
(1) 通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価について簡潔に説明しなさい。
(2) (1)のもとにおける簿価切下げの意味を説明しなさい。

4 3とは異なる評価が行われる棚卸資産の名称を指摘し、(1)そのような評価が行われる前提となる市場について述べるとともに、(2)そのような評価が行われる理由を簡潔に説明しなさい。

5 前期に計上した簿価切下額の戻入れに関しては、当期に戻入れを行う方法(洗替え法)と行わない方法(切放し法)があります。
 (1) 両方法の適用単位について述べなさい。なお、売価の下落要因を区分把握できない場合と区分できる場合に分けてそれぞれ説明すること。
 (2) 収益性の低下に着目した簿価切下げの考え方とより整合的な方法はいずれですか。その理由とともに述べなさい。

6 棚卸資産の評価方法には、個別法、先入先出法等があります。これまで認められていた後入先出法の廃止が予定されていますが、廃止の根拠を3つ指摘しなさい。


第59回(平成21年)第一問 解答用紙

1(       )2(       )3(       )

2 損益計算とは別の視点[        ]


(1)




(2)



4 3と異なる評価が行われる棚卸資産[                ]
(1)


(2)




(1)


(2)




(1)

(2)

(3)
第59回(平成21年)第一問 解答
1 各2点
1名目上 2収益 3回収可能

2 背後にある考え方[保守主義 ]1点

3(1) 3点
 通常の販売目的で保有する棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とする。この場合において、取得原価と当該正味売却価額との差額は当期の費用として処理する。
(2) 2点
 収益性が低下した場合における簿価切下げは、取得原価基準の下で回収可能性を反映させるように、過大な帳簿価額を減額し、将来に損失を繰り延べないために行われる会計処理である。

4 3と異なる評価が行われる棚卸資産[トレーディング目的で保有する棚卸資産 ] 1点
(1) 2点
 活発な取引が行われるよう整備された、購買市場と販売市場とが区別されていない単一の市場
(2) 2点
トレーディング目的で保有する棚卸資産については、投資者にとっての有用な情報は期末時点の市場価格に求められると考えられることから、市場価格に基づく価額をもって貸借対照表価額とする。

5(1) 2点
 売価の下落要因を区分把握できない場合は、棚卸資産の種類ごとに選択適用できる。
 売価の下落要因を区分把握できる場合は、下落要因ごとに選択適用できる。
(2) 2点
 洗替え法の方が、正味売却価額の回復という事実を反映するため、収益性の低下に着目した簿価切下げの考え方と整合的である。

6 4点
? 貸借対照表価額が最近の再調達原価の水準と大幅に乖離してしまう可能性がある。
? 棚卸資産の期末の数量が期首の数量を下回る場合には、期間損益計算から排除されて きた保有損益が当期の損益に計上され、期間損益が変動することとなる。
? 一般的には棚卸資産の実際の流れを忠実に表現しているとはいえない。


第59回(平成21年)第一問 解答

棚卸資産基準36項からの出題です。
棚卸資産基準の学習の中心は7項です。
本文ではその後に17項、結論の背景では、36項、37項、41項あたりが重要性が高いです。
不正解だったかたは、まずは中心となる規定をよく読みましょう。


従来の低価法は、保守主義の観点から認められていたものです。
期間損益計算の観点からは必ずしも合理性を持ちませんが、保守主義という別の視点から原価基準の例外として許容されていた点をおさえておきましょう。

3(1)
棚卸資産の評価を問う出題です。
新しい考え方は当然に新しい基準に反映されています。
棚卸資産基準の7項をしっかり書けるようにしておきましょう。

(2)
収益性が低下した場合の帳簿価額の切下げの意味を問う出題です。
当期の損益計算をしっかり行うためではなく、損失を将来に繰越さないための処理である点をしっかり記述しましょう。


トレーディング目的の棚卸資産の評価を問う出題です。
棚卸資産には、通常の販売目的(事業投資)とトレーディング目的の棚卸資産(金融投資)があることになります。
事業投資と金融投資という視点からの出題も想定しておきましょう。

(1)
トレーディング目的の棚卸資産では、活発で整備された単一の市場の存在が前提となります。

(2)
トレーディング目的の棚卸資産の評価を問う出題です。
理由とともにしっかりと書けるようにしておきましょう。
本問では「評価」が問われています。
評価差額の取扱いについての解答は不要です。
実際の出題は何が問われるかわかりません。
問題をよく読んで対処しましょう。


洗替え法と切放し法を問う出題です。

(1)
そもそも理論的には、洗替え法の方が、時価の回復を反映するため好ましいという考え方があります。
しかし、物理的・経済的に劣化してしまった棚卸資産にそもそも時価の回復はほぼ期待できません。
そこで収益性の低下要因ごとに両方法を選択できることとしています。

(2)
簡単な例で考えておきましょう。
第1期 100円で取得
期 末  90円に下落
第3期 120円で販売

この例では第1期に評価損(→売上原価)が計上されます。
第2期の処理が洗替え法と切放し法で異なります。

第3期の利益は、
洗替え法 120円−100円=20円
切放し法 120円− 90円=30円
です。

洗替え法での利益20円の説明は簡単です。
売った金額から買った金額を控除した金額です。
しかし、切放し法の利益の説明は大変です。
どう考えても合理的ではありません。
このように時価が反騰してしまった場合には、洗替え法の方が合理性を持つ面があります。


後入先出法の廃止が予定されています。
先入先出法と後入先出法とを対比しながら特徴をおさえるとともに廃止理由(要は短所)をしっかりと書けるようにしておきましょう。
簡単には、
(1)貸借対照表価額がおかしい
(2)期末<期首のとき過去の保有損益が計上される