リース基準も読んでみました。

いや、疲れましたよ。

数日後に予想問題を出しますので、それまでにリース基準を結論の背景も含めて全文をよんでおいてください。

ランクA〜Dもつけておきました。

イメージは、AメインでBを1〜2か所程度です。
1項・2項(目的)D
一度くらいはぜひどうぞ。


3項(範囲)C
リース基準は、リース取引に係る会計処理に適用する。
そのままです。
はい。


4項(用語の定義)A
リース取引の定義です。
直接的出題はやや考えにくいですが、当然に知っている必要があります。
短くいうと、
特定物件の所有者である貸手が借手にリース期間にわたり使用収益する権利を与え、借手はリース料を貸手に支払う取引がリース取引です。

リースは賃貸借取引です。
お金(リース料)をやりとりする貸し借り。
それがリース取引です。
借手が支払う対価はリース料ですが、何を得るかというと「リース資産を使用収益する権利」です。
「リース取引」の意味を簡単に整理しておきましょう。


5項 AA
ファイナンス・リース取引とは、リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引で、借手が、当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という。)からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引をいう。

ファイナンス・リース取引の定義です。
リース基準の要は、法的には賃貸借なのに売買処理をする点です。
その売買処理が適用されるリース取引がファイナンス・リース取引です。
この定義が重要でないハズはありません。

いくつかの視点を持って読んでみましょう。
一つは、よくいわれるファイナンス・リースの要件です。
これには2つあります。
(1)ノン・キャンセラブルと(2)フル・ペイアウトです。
(1)ノン・キャンセラブルは、解約ができないこと。
(2)フル・ペイアウトは、コストを借手が負担することです。
解約もできず、借手がコストを負担するようなリース取引は、買ったのも同じではないか。
そんなところからの2要件です。

これを基準に重ねてみましょう。

(1)契約を解除できず、
(2)コストを負担する
リース取引

(2)の手前があります。
経済的利益を享受する→コストを負担する
何故にコストを負担するかといえば、それは自分が利益を受けるからです。
もともとのフルペイアウト要件には当然に含まれているといえるでしょう。
仮に自分は利益を受けないのにコストだけ負担しているとするとそれを資産計上すること自体がおかしいです。

もう一点が資産の発生・消滅の認識です。
資産の消滅の認識に関する移転の考え方には、リスク・経済価値アプローチと財務構成要素アプローチがありました。
リスク・経済価値アプローチは、リスクと経済価値の大部分の移転をもって初めて資産が移転(→消滅)したとする考え方です。
全部アプローチといえるでしょう。
財務構成要素アプローチは、資産の構成要素を考えて、構成要素の部分移転を認める考え方です。
構成要素のうちの一部が移転して、残りはそのまま残ることになります。

金融資産・負債に関しては、取引の経済的な効果を反映するために財務構成要素アプローチがとられます。

金融資産・負債以外には、リスク・経済価値アプローチがとられます。
リースの対象となっている資産は、使用目的の資産(固定資産)です。
固定資産の移転に関しては、リスク・経済価値アプローチがとられます。
この点も軽く視野に入れながら5項は熟読の必要があります。


6項 B
オペレーティング・リース取引は、ファイナンス・リース取引以外のリース取引です。
そのままですね。


7項 B
リース取引開始日は、借手がリース物件を使用収益する権利を行使できることとなった日をいいます。
これもそのままです。
あくまでも「権利を行使できる」タイミングを考えている点に注意でしょうか。


8項(ファイナンス・リース取引の分類)B
リース取引は、所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引とに区分されます。
リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が移転するかどうかが分岐点です。


9項 A
ファイナンス・リース取引については、売買処理が行われます。
正確には、通常の売買処理に係る方法に準じた会計処理ですが、以下でも単に売買処理と賃貸借処理といいます。


10項(借手側)A
借手は、リース取引開始日に、売買処理により、リース資産とリース債務を両建計上します。


11項 A
リース資産及びリース債務の計上額の算定にあたっては、リース料から利息相当額を控除します。
利息相当額は、原則として利息法により配分します。


12項 A
所有権移転ファイナンス・リース取引は、自己所有の固定資産と同一の減価償却方法により償却します。
所有権移転外ファイナンスリース取引では、リース期間を耐用年数、残存価額をゼロとして償却します。


13項(貸手側)B
貸手は、売買処理を行います。
計上される資産が、所有権移転外ファイナンス・リース取引ではリース債権として、所有権移転ファイナンス・リース取引では、リース債権です。
所有権移転外ファイナンス・リース取引では、リース投資資産です。

所有権移転では、結局は、所有権は移転します。
しかし、移転外では、所有権は移転しませんので、いったん売買処理をしても結局は、リース資産が戻ってきます。
移転でのリース投資資産には、この戻ってきた資産の残存価額相当額が含まれます。

ここは出題の可能性が極めて高いという感じではないのですが、資産としてとても面白い性格をもっていますので、出題の目もあるかもしれません。


14項 B
貸手における利息相当額は、リース料と見積残存価額の合計額からリース資産の取得価額を控除して算出します。
借手の場合は、リース料から利息相当額を控除して取得価額相当額を算出していました。
貸手はそのリース資産の取得価額がわかるのですから、その必要はありません。
リースの場合は、「取得価額」という点に特に注意しましょう。

利息相当額を利息法により配分するのは借手と同じです。


15項(オペレーティング・リース取引の会計処理)B
賃貸借処理です。


16項(借手側)A
借手の表示は、原則として、有形・無形の別に一括してリース資産です。
有形・無形固定資産ごとに表示することもできます。


17項 B
リース債務については1年基準の適用があります。


18項(貸手側)C
リース取引の貸手は、借手とは異なり、それを商売として行っていることが多いでしょう。
その場合には、貸手側のリース債権及びリース投資資産は、正常営業循環基準により流動資産とされます。
商売として行っていない場合には、1年基準が適用されます。


19項(借手側)B
借手側は、リース資産について、その内容及び減価償却方法を注記します。
重要性の原則の適用はあります。


20項(貸手側)C
貸手は、
リース料債権、見積残存価額、受取利息額を注記します。
重要性の原則の適用はあります。


21項 B
リース債権およびリース料債権部分の5年以内の1年ごとの回収予定額と5年超の回収予定額を注記します。
重要性の原則の適用はあります。


22項(借手側及び貸手側)B
解約不能の未経過リース料を一年以内の分と一年超の分にわけて注記します。
重要性の原則の適用はあります。


23項(適用時期)D
平成20年4月1日以後開始事業年度から適用です。
早期適用もできます。


24項 C
四半期財務諸表に関しては、平成21年4月1日以後開始事業年度から適用します。
ただし、早期適用もできます。
これはいいかな。


25項 C
早期適用を行う場合には、中間財務諸表には適用しないことができます。
これはいいです。


26項 D
実務指針も読んでねっていう規定です。


27項(議決)略


28項(経緯)B
リース基準の経緯です。
細かい点はいいんですが、一読の価値はあります。
改正リース基準の前のリース基準(平成5年)ができる以前は、リース取引はすべて賃貸借処理が行われていました。
しかし、経済的実態が売買と同様な取引が多い状態が多く、会計処理を考える必要から平成5年のリース基準が検討されました。


29項 AA
リース取引は、法的には賃貸借取引ですが、経済的実態に着目して売買処理を行います。
これはファイナンス・リース取引と資産の割賦売買取引との会計処理の比較可能性を考慮したものです。
この規定は、重要です。


30項 B
改正前の状況です。
改正前基準では、所有権移転外ファイナンス・リース取引に対して注記を要件として賃貸借処理が認められていました。
この例外処理が大半を占めていました。


31項 AA
改正前基準に対する委員会の問題意識は次の2点にありました。
(1)情報開示の観点からは借手は、リース資産・リース負債を認識する必要があります。
とくに借手は使用の有無にかかわらず、キャッシュ・フローが固定されているため、債務を計上すべきです。
(2)代替的な会計処理が認められるのは、代替的な処理を認めることによって、事実を適切に伝えられる場合のハズです。
例外処理が大半を占めている状態は異常で、早期に是正すべきです。

ここは重要です。
(2)の方もおさえてほしいですが、(1)が特に注目です。

リース基準では、29項で取引の経済的実態に着目していたり、割賦売買取引との比較可能性に考慮したためといった根拠が語られています。
つまりは、「取引の実質」を考えることがその根拠として想定されているのです。
必ずしも、リース資産やリース債務を認識すべきだからというスタンスをとっている訳ではありません。

しかし、31項では、何らかの意味で借手は「負債」を計上すべきことが語られているわけです。
この点は、注目したいと思います。


32項 B
我国のリース取引には、資金の融通(融資)ではなく、物の融通(物融)の側面があり、賃貸借としての性格が強い面があり、例外処理は存続すべきとの意見があります。
また、リースビジネスが税制と関連しており、会計だけで結論を得ることは難しい課題でした。

後半は、税務と実務がくっついていて会計だけの論理をおしつけるのが難しいといった極めて実際的な理由ですので、試験的にややどうかなという面があります。
しかし、前半の「物融」。
これは試験傾向からいってアリです。
我国のリース取引には、物の融通(物融)としての側面が強い点はおさえておきましょう(例外処理を存続すべきとする理由)。


33項 D
基準改定の経緯です。
一読でいいです。


34項 B
コンバージェンスの関係です。
基本は流してよいですが、一点だけ注目したいです。
それは、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の区別をなくし、使用権を資産計上することが検討されているという記述です。

リースに対する考え方には変遷があるようで、ざっくりとは資産(所有権)の売買→使用権の売買という変化をとげています。
しかも当初はリース資産やリース債務そのものに着目するというよりも取引の実態に着目する考え方が強かったようです。
改訂リース基準は、リースに対する考え方の流れの中ではまだ過渡的な基準といえそうです。

使用権の売買という考え方をおしすすめていくと、オペレーティング・リース取引も使ってるんじゃねえ、という考えはでてきそうです。
つまりは、オペレーティング・リース取引に対して、売買処理を適用すべきという考え方もあってよさそうです。

34項にはこのような考え方があることが指摘されていて、ヒネリ部分としてはよさげです。
実際に今後適用されるようになるのかもわかりませんが、考え方として存在することはおさえておくべきでしょう。


35項 C
リース取引の定義や分類については、改正前基準と大きな変更はありません。


36項 B
ノンキャンセラブルとフルペイアウト要件の補足です。
法形式は解約可能でも違約金が高い等の理由で事実上解約不能なケースも含まれます。
経済的利益を享受することの意味は、リース物件を自己で所有した場合に期待される経済的利益を享受することをいいます。
コストを負担するとは、リース物件の取得価額相当額、維持管理等の費用、陳腐化によるリスク等のほとんどすべてのコストを負担することをいいます。


37項 B
リース取引開始日とは、リース物件を使用収益する権利を行使することができることとなった日をいい、一般には、借受証に記載された借受日が該当します。


38項 AA
ファイナンス・リース取引については、売買処理が行われます。
所有権移転外ファイナンス・リース取引については、所有権移転ファイナンス・リース取引と次の点で異なります。
(1)経済的には、売買+融資、法的には、賃貸借、役務提供が組み合わされる場合が多く複合的な性格を有する。
(2)物件の耐用年数とリース期間が異なる場合が多く、リース物件の返還も行われるため、使用権の売買に近い。
(3)借手が資産の使用に必要なコストを、契約期間にわたる定額のキャッシュ・フローとして固定する。
このような特徴から、リース資産の減価償却等にあたって異なる点が生じます。

この3点は、しっかりおさえておきましょう。
出題傾向からすると1つだけをしぼって書かせる(たとえば取引の性格(1)とか)のもありです。


39項 AA
所有権移転ファイナンス・リース取引については、リース物件の取得と同様の取引と考えるため、自己所有の固定資産と同一の方法により減価償却費を算定します。

移転については、資産の取得と同じなので減価償却方法も自己所有と同じです。
シンプルですが、傾向的には、ありです。

所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース物件を使用できる期間がリース期間に限定されるため、リース資産の償却期間はリース期間として、残存価額はゼロとします。

移転外の償却期間と残存価額についても、その理由(使用がリース期間に限定)もしっかりおさえましょう。

償却方法については次の観点から自己所有の固定資産と異なる償却方法を採用することができることとしました。
(1)所有権移転外ファイナンス・リース取引がリース物件の取得とは異なる性質も有すること
(2)旧定率法を適用することが困難なこと

旧定率法は、償却を継続することで耐用年数到来時に残存価額が一定額(通常は取得原価の1割)になるような率を毎期期首未償却残高に乗じていく方法です。
残存価額をゼロとする旧定率法の適用はできない(100%をかけないとゼロにならない)というのが(2)の理由ですが、これはやや薄めかもしれません。
むしろ38項とあわせて(1)をしっかり考えておきましょう。


40項(貸手における会計処理)B
所有権移転ファイナンス・リース取引の場合は、貸手は、借手からのリース料と割安購入選択権の行使価額で回収します。
所有権移転外ファイナンス・リース取引の場合は、リース料と見積残存価額の価値で回収します。
このような差異から移転では、リース債権を計上します。
移転外では、リース投資資産を計上します。
リース投資資産は、リース料を収受する権利と見積残存価額から構成される複合的な資産です。

貸手の細かい会計処理までは不要と思っていますが、この計上資産の性格が変わる点はおさえておきたいです。
傾向的には、資産の名称を指摘させるなんてのもありだと思っています。

移転の場合には、借手に資産が移ってしまいます。
でも移転外では、実際には借手に移りません。
ですので最後にはリース資産がかえってきて、それを売却することも可能です。
そのときの見積残存価額部分は、明らかにリース料を受け取る権利とは性格が異なります。
ですのでそれを一括して「債権」と呼ぶには無理があります。
そこでリース投資資産と呼んでいるわけです。

リース投資資産は、リース料を収受する権利(リース料債権)と見積残存価額とから構成される複合的な資産です。


41項 B
リース債権とリース投資資産のうちのリース料債権部分は金融商品的な性格を有します。
貸倒見積高の算定において注意が必要です。
リース債権とリース投資資産の貸倒引当金設定の上での違いを述べなさい、なんてよくないですか。


42項 A
借手のリース資産は、有形・無形の別に一括表示されます。
これは、リース資産の合計額を示すためと実務上の加重負担に配慮したためです。

それぞれの科目に含めることもできます。
また、移転・移転外の別に表示を適用することもできます。


43項 C
借手はリース資産の内容と減価償却方法を注記します。
コストベネフィットの観点から勘定科目別ではなく、主な資産の種類等を記載することでかまいません。


44項 C
貸手は、一般的な流動資産の区分基準(正常営業循環基準)によって流動・固定を区分します。


45項 C
リース投資資産に含まれるリース料債権部分と見積残存価額部分では性格が異なるため、注記を要します。

リース料債権部分と見積残存価額部分の利息控除前の金額とリース投資資産との関係を明らかにするために受取利息相当額を注記します。

リース債権・リース投資資産については、通常は流動資産に表示されますが、通常は回収が長期にわたることから5年以内の1年ごとの回収予定額と5年超の回収予定額を注記します。


46項(適用時期)D
平成21年4月1日以後開始事業年度からの適用ですが、円滑な適用のため、四半期財務諸表に関しては、適用を1年遅らせています。


47項 D
早期適用の場合には、中間財務諸表に適用しないことができることとし、首尾一貫性の注記は要しません。