今年の大本命「棚卸資産基準」のヒネリ部分を考えてみました。
棚卸資産基準の本文の中心は7項、17項です。

まずはしっかりと両既定を読みましょう。

結論の背景は36項、37項、41項あたりでしょうか。

62もかな。

このあたりの理解をしっかりさせておくことが試験的にも最も重要です。

その後にヒネリ部分です。


(1)棚卸資産の定義・範囲
我国の棚卸資産は、国際的な基準と消耗品等の部分だけ異なります。

それほど重要性が高い感じではありませんが、出題の可能性はあるかと思います。

企業会計のネライが適正な損益計算にあるんなら貸借対照表項目の考え方も損益計算のあり方に応じた方がよいというのも一つの考えでしょう。



(2)取得原価基準の考え方
これまでの原価基準の考え方は、純粋な意味での「原価」に近いものでした。

取得原価基準の元でその原価が補正されるのは、そんだけ違ったらマズイやろ。

といった大きな時価下落等の場合に限られていました。


原価=対価(補正は著しい下落時のみ)


棚卸資産基準での原価基準の考え方は、原価を有用なものに限定しています。

回収可能な原価、それが棚卸資産基準のもとでの原価です。


原価=回収可能な原価(正味売却価額が低いときは補正)


単に原価といってもいくつかの考え方があることを意識しておきましょう。


(3)時価
時価についても整理しておくとよいでしょう。

出題の切り口次第という気もしますが、正味売却価額と再調達原価はその定義も含めてしっかりさせておきましょう。

その他に時価評価される資産なんて切り口もいいですね。

また、トレーディング目的の棚卸資産の取扱いは、売買目的有価証券と同じです。

おさえることは負担にはならないと思いますので、目をとおしておきましょう。

15項、19項です。

棚卸資産の中にも有価証券(売買目的有価証券)と同様の評価を行うものがある点を意識しておきましょう。

収益性の低下を反映した処理としては固定資産の減損会計があります。

減損会計との類似点や相違点について考えておきましょう。

いずれも収益性の低下を反映した処理です。

判定の段階で減損の場合は、割引前のCFを利用します。

これに対して棚卸資産は、正味売却価額が帳簿価額を下回ったら評価損をたてます。

減損の方が判定が緩い分、戻しいれを行なうことはありません。

これに対して棚卸資産には、洗替処理が認められています。

従来の低価基準についての基本的な考え方は保守主義です。

この点、新しい棚卸資産の評価とは考え方が基本的に異なりますので注意しましょう。


(5)先入先出法と後入先出法
まだ先の話ですが後入先出法の廃止が予定されています。

評価方法との関連(先入先出法と後入先出法等)にも注目しましょう。

まずは、先入先出法と後入先出法を対比して、一般的な物の流れ、貸借対照表価額、損益計算の3つの面で違いをまとめておきましょう。

後入先出法の廃止理由としては、

(イ)貸借対照表の評価額が期末の物価水準と離れる

(ロ)期末数量が期首数量より少ないときに過去の保有損益が損益計算に混入する

(ハ)物の流れにマッチしていない

等があります。


(6)洗替え方式と切放し方式
期末に正味売却価額で評価した場合の翌期の処理には洗い替え方式と切放し方式があります。

洗い替え方式は、棚卸資産の正味売却価額が反騰した場合にその影響を反映することができます。



(7)正味売却価額がマイナスになる場合
正味売却価額は、売価−追加原価・追加販売費です。

売価よりも追加原価や追加販売費が大きければ正味売却価額がマイナスになることもありえます。

棚卸資産はあくまでも資産ですから、正味売却価額がマイナスでも資産の部にマイナス表示はないでしょう。

正味売却価額がマイナスになる場合には、引当金の設定を考慮する必要があります。

このような考え方は、ちょうど工事損失引当金と同じです。

工事損失引当金の考え方と合わせて確認しておきましょう。