棚卸資産会計基準、読んでますか?

今回は、棚卸資産基準で低価法が強制される基本的な考え方をみておきましょう。

中心となる規定は7項です。

まずは、7項(その後に17項)を読みましょう。

通常の販売目的で保有する棚卸資産の貸借対照表価額は、原価(取得原価)です。

時価(正味売却価額)が取得原価よりも小さいときは、正味売却価額です。

これは従来、低価法と呼ばれていた評価基準です。

棚卸資産基準では、その低価法が強制されることになりました。

もっとも低価法しかないのですから、低価法と呼ぶ必要もなくなります。

でも、便利なのでとりあえず低価法の強制と呼んでおきます。

なぜ、低価法が強制されるのでしょうか?

原価によることは問題ないでしょう。

なぜ、低価なのでしょうか?

なぜ、正味売却価額が原価よりも低いときに、正味売却価額による資産の評価(帳簿価額の切下げ)が行われるのでしょうか。



棚卸資産基準の36項にその理由が説明されています。

端的には、「収益性の低下の帳簿価額への反映」といったところでしょう。

将来の収益に見合う原価だけを資産として将来に繰り越そうという考え方です。

いいかえれば、将来の収益に見合わない(収益性の低下した)原価を当期に切下げる処理が収益性の低下による帳簿価額の切下げです。



企業会計では、損益計算が重視されます。

この損益計算を「投下資金」と「回収した資金」の関係で考えてみましょう。

利益=収益−費用

利益=回収資金−投下資金

たとえば、100円の商品を150円で販売した場合は、次のように説明できます。

投下した資金は100円です。

回収した資金は150円です。

投下した資金(100円)を超えて回収した資金(150円−100円)が利益です。

投下した資金を超えて余りある資金の回収額(回収余剰)が利益です。

仮に100円で買った商品の正味売却価額が80円になってしまった。

150円で売ることをもくろんでいたのが、80円でしか売れそうにない。

この150円→80円が収益性(売上)の低下の意味です。



この場合は、翌期以後に20円の損失が出てしまう可能性が高いです。

回収できないことが明らかな原価(そのままでは将来の損失)を資産として繰り越すべきではない。

棚卸資産に低価法を強制するのは、回収できない原価部分を翌期以後に繰り越さないためです。

回収できない原価まで帳簿価額を切下げる処理が、収益性の低下を反映した帳簿価額の切下げということになるでしょう。


そうだ、会計基準を読もう!!(収益性の低下による簿価切下げの意味を考えておきましょう)



会計基準を読もう!!<目次>