配当可能額はない。

そう結論づける過程で会社法や会社計算規則(やその解説の本)をずいぶん読みました。

会社法や会社計算規則がどう考えているか。

そんな視点で会社法や会社計算規則を眺めていると会社法は、分配規制で以前よりもアメリカの制度を参考にしているように思えます。

アメリカの制度自体はしょぼしょぼですが、国内の本から知りえた事をもとにちょっと考えてみました。


以前このブログでカリフォルニアに資本金がないことをご紹介しました。

カリフォルニアの資本金


アメリカの分配規制は州によって大きく異なるようです。

大きな特徴は、貸借対照表の資本項目(貸方項目)を利用していない州が多い点でしょう。

多くの州で資本金制度そのものが撤廃されているらしいです。

そのきっかけはカリフォルニア州ですが、今ではアメリカのモデル会社法ともいうべき模範会社法も資本金制度を採用していません。

カリフォルニア州法では、かろうじて拠出資本と留保利益の区別はありますが、模範会社法では、この区分すら用いていません。

中には、累積の欠損があっても当期の利益を配当できるというおそろしい制度を採用している州(デラウェア州)もあるそうです。

このような先行する事例をみると「資本金って何?」、「累積の欠損って何?」と思わざるを得ません。

もっともまったく自由に配当ができる訳ではありません。

別の基準を設けています。

基準自体は、それぞれの州固有のようですが、資本金をはじめとする資本項目を配当規制に利用しない可能性がアメリカの制度からみてとれます。



会社法をつくる段階では、このようなアメリカでの分配規制のあり方も検討されたでしょう。

なにしろ日本が学ぶべきことが多いアメリカで、配当に制限をかけるのに資本金すら利用していない州があるのですから。

結果として会社法は、従来とは大きく異ならない分配規制の制度をとりました。

しかし、分配規制を単一の金額的ハードル(分配可能額)としたことで形式的には、配当規制を資本項目から切り離すことも可能になっています。

あくまでも形式的にはということで、今すぐにそういう制度に移行するという話ではありませんが。

しかし、このようなアメリカ型の分配規制を参考にしているであろうことは会社法の規定を考える場合にも参考になる気はします。

資本と利益の源泉別の区分に関しても、もとでとしての払込資本の維持を念頭においているとは考えにくいのではないでしょうか。

アメリカ型の考え方を下敷きにしている(分配規制は別)と考える方が会社法や会社計算規則の規定を整合的に説明できると思います。

もちろん立法論は別です。

分配規制がどうあるべきかの議論は、これとは別にあってよいです。

従来のもとで(払込資本)を維持すべきだという考え方もあるでしょう。

しかし、会社法や会社計算規則からもとで(払込資本)を維持すべきだという考え方は必ずしも伺えない。

会社法を理解するにあたって意識しておく必要があるかもしれません。