税効果会計に関連する下記の問に答えなさい。

問1 税効果会計に係る会計基準(以下、「税効果会計に係る会計基準の設定について」を含めて「基準」という。)では、法人税をどのような性格を有するものと考えていますか。端的に指摘しなさい。

問2 税効果会計の方法には、2つが区別されます。それぞれの名称を指摘するとともに「基準」が採用する方法の内容を簡記しなさい。

問3 「基準」を前提とした場合に税効果会計の適用がない項目を次の中から選び、番号で答えなさい(複数回答可)。また、各項目の具体例をそれぞれ1つずつ指摘しなさい。
(1)永久差異
(2)将来減算一時差異
(3)将来加算一時差異

問4 「基準」を前提として、繰越欠損金に税効果会計を適用する場合の条件を簡潔に指摘しなさい。

問5 資産を「過去の取引または事象の結果として報告主体が支配している経済的資源」とし、経済的資源を「将来のキャッシュの獲得に貢献する便益の源泉」とした場合、繰延税金資産の資産性はどのように説明されますか。また、このような考え方のもとにおける繰延税金資産の理論的測定指標を指摘しなさい。

問6 問5における資産概念を前提とした場合、企業会計原則の注解15における「将来の期間に影響する特定の費用」の資産性をあなたはどう考えますか。

(解答欄)
問1(1行)

問2
基準が採用する方法(1語)
その他の方法(1語)
基準が採用する方法の説明(3行)

問3
項目(番号)
永久差異の具体例(1行)
将来減算一時差異の具体例(1行)
将来加算一時差異の具体例(1行)

問4(1行)

問5
資産性(3行)
理論的測定指標(1語)

問6(3行)

(解答)
問1(2点)
収益を獲得するための犠牲としての費用と考えている。

問2(方法名各1点、説明4点)
基準が採用する方法(資産負債法
その他の方法(繰延法
基準が採用する方法の説明(資産負債法とは、企業会計上の資産・負債と課税所得計算上の資産・負債の差額に予測税率を適用した額を税効果額とする方法である。

問3(各1点)
項目(1)
永久差異の具体例(交際費の損金不算入額
将来減算一時差異の具体例(引当金の繰入限度超過額
将来加算一時差異の具体例(剰余金の処分による圧縮記帳の損金算入額

問4(2点)
将来の課税所得と相殺可能であること

問5(資産性4点、理論的測定指標2点)
資産性(繰延税金資産は、一般的には、法人税等の前払額に相当し、将来の税金の支払というキャッシュ・アウト・フローを減額する効果があり、将来のキャッシュの獲得に貢献すると考えられるため資産性を有する。
理論的測定指標(割引現在価値

問6(4点)
次のいずれか。
(a)(「将来の資産に影響する特定の費用」は、換金価値という面からは必ずしも資産性を有するとはいえないものの将来の収益の獲得に対する貢献を考慮すれば、資産性が認められる。
(b)(資産を経済的資源とし、経済的資源を将来のキャッシュの獲得に貢献する便益の源泉と定義した場合、直接的に将来のキヤッシュの獲得に貢献する訳ではない「将来の期間に影響する特定の費用」の資産性には疑問がある。

(解説)
問1
法人税等の性格については、費用説と利益処分説とがあります。
法人税等を費用と考えることではじめて税効果会計の適用があることになります。
「基準」での法人税等についても確認しておきましょう。

問2
税効果会計の方法には、資産負債法と繰延法とがあります。
税効果会計基準では、資産負債法をとっています。
両説の考え方及びその背後にある会計観(資産負債アプローチと収益費用アプローチ)との関連も想定しておきましょう。

問3
税効果会計の適用がある差異は、一時差異です。
永久差異に、税効果会計の適用はありません。
差異の種類等を簡単に整理しておきましょう。

問4
資産負債法をとった場合に繰越欠損金等に税効果会計の適用があります。
この場合は、その繰越欠損金が将来の課税所得から控除できることが税効果会計適用の条件になります。

問5
概念フレームワークのもとでの繰延税金資産の資産性について簡単に説明できるようにしておきましょう。
また、将来のキャッシュとの関連で資産性を考えた場合は、理論的測定指標が割引現在価値になります。
現行制度上は、割引計算は行われていませんが、長期の繰延税金資産について、割引計算が理論的には、ありうる点を理解しておきましょう。

問6
資産の本質を将来のキャッシュの獲得に対する貢献とする考えを強調するなら、資産性に疑問ありという解答になります。
また、現実的には、資産性を容認しているところから、将来の収益獲得に貢献→資産性ありという考え方もあるでしょう。
結論そのものよりも論理が一貫していることが重要だと思います。