(問題)動態論のもとで重視される財務諸表は何か。

(解答)
解答は一番下です。


(コメント)
動態論では、投資者に目がむけられ、損益計算書で収益力を示すことに重点がおかれます。


今、仮に企業の全生涯を考え、最初に現金の出資、最後に現金での清算が行われるとすれば、全体期間の損益は、次のとおり計算されます。


収入−支出=純利益


企業の全生涯を仮定すれば、収入=収益、支出=費用という関係が成り立ちます。

継続企業を想定すれば、損益計算を企業の全生涯を通して行うことはできず、一定の期間(会計期間)を区切って、行う以外にありません。

この場合は、期間的には、収入=収益、支出=費用という関係は成り立ちません。


収入≠収益  支出≠費用  収入−支出≠純利益


そこで、収入をてがかりに収益を計上し、支出をてがかりに費用を計上する方法がとられます。


収入→収益  支出→費用  収益−費用=純利益


このような形での損益計算が、動態論のもとでの損益計算です。

収入を収益に変換し、支出を費用に変換する形で損益計算が行われます。

このように損益計算を行うために、収入を収益に直したり、支出を費用に直したりする過程で生ずる項目をおさめたのが貸借対照表です。

動態論のもとでの貸借対照表は、単なる財産の一覧表ではなく、収支を損益に変換する仮定で生じた未解決項目を収容したものです。

簡単な例で考えておきましょう。


(消耗品の購入)消 耗 品100 現  金100

(未使用が30)消 耗 品 30 消耗品費 30


消耗品100円を購入し、決算で未使用分30円をたてたケースです。

この場合の消耗品30円は、いったん支出があったけれども(支出)、費用になっていない(未費用)項目(「支出未費用」といいます。)です。

このような当期の損益計算を行う際に生じた未解決項目を収容するのが貸借対照表です。

ここでの貸借対照表は、当期の損益計算と翌期以降の損益計算をつなぐ「かけはし」の役割を果たしています。

動態論のもとでの貸借対照表は時に連結環と呼ばれますが、このような貸借対照表の役割に注目してのことでしょう。



財務会計講義<第24版>
・なし


つながる会計理論<第2版>
・なし


(関連問題)
問題11(金融商品取引会計の主要機能)
問題13(動態論の中心的利害関係者)


(解答)
損益計算書