会計基準、読んでますか?

会計基準が過去出題にどのように反映されているのか。

財務諸表論の過去問を小問化してお届けしています。

(問題)
「基準」(意見書)で定められた全体的な会計処理について、費用認識の側面と、負債の認識・測定の側面とを対比しながら、説明しなさい。なお、解答においては、強調したい部分4箇所以内)に下線を引くこと。

(解答)
費用(退職給付費用)は、注解18の考え方に基づいて、当期の労働に基づき認識する。
費用として認識された引当金繰入(退職給付費用)の残高(退職給付引当金)が負債として認識される。
負債(退職給付引当金)は、退職給付債務に未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異を加減した額から年金資産の額を控除した金額として測定される。
退職給付債務は、退職給付のうち認識時点までに発生していると認められるものであり、割引計算により測定される。
年金資産の額は、期末における公正な評価額により測定される。


(関連会計基準)
・退職給付会計基準 意見書四1

・退職給付会計基準

(コメント)
この問題はものすごく力がいると思います。
軽くシビレます。
なかなかそれなりの解答を書くまでには至らないのではないでしょうか。

出題は、会計処理の説明を求めるものです。
しかし、基準(意見書)で定められているという限定があります。
かつ、費用認識の側面と、負債の認識・測定の側面とを対比しながらという限定もあります。
厳しいです。
はい。

認識は、いつの問題です。
費用や負債をいつの財務諸表に計上するのかが認識の問題です。
測定は、いくらの問題です。
この場合は、負債をいくらで貸借対照表に計上するのかが測定の問題です。

退職給付費用××× 退職給付引当金×××

この仕訳を行うタイミング、そしてその結果が財務諸表に計上されます。
費用認識と負債認識の問題は、同じであることがわかります。
意見書では注解18の考え方をとっていますので、認識の問題は原因発生主義をとっているということになるでしょう。

これに対して測定はちょっとやっかいかもしれません。
というのも退職給付引当金は、退職給付債務−年金資産で計算されます。
退職給付債務は、割引計算されます。
年金資産は、時価評価です。

認識の問題は、従来の伝統的な考え方。
退職給付債務は割引現在価値で、年金資産は時価で測定されます。
いわばなんだか???状態です。

つまりは、認識に関しては、これまでのフローを重視した考え方(動態論といってもよいでしょう)に基づいています。
しかし、測定に関しては、新しいストックを重視した考え方(貸借対照表アプローチ)によっています。
このようないわばネジレ現象が生じている訳で、その点の問題意識が持てているかどうかを問う出題といってよいでしょう。

で、レベル高いです。
はい。