概念フレームワークでは、財務報告の目的を投資意思決定におきました。

そして、投資家が投資の意思決定を行うために有用な情報であることを会計情報の質として最も重視しています。


投資家は企業に資金を投じます。

企業はその資金をさらに事業に投下して、利益(それは究極的には、キャッシュの増加でもあります)の獲得を目指しています。

このような企業の行った投資の状態(ポジション)とその成果をありのままに報告することが、財務報告に求められるのです。


企業は様々な事業に資金を投下します。

そしてその事業に投下された資金は、一つの事業の中でも様々な形態(ポジション)をとります。

たこ焼屋でいえば、屋台であったり、小麦粉やタコという原材料になっていきます。

ぶっちゃけ、お金が屋台やたこ焼に化ける訳です。

そして、最終的には、たこ焼を売って、現金になって返ってくるのでしょう。

このような企業の行った「投資のポジション」(化けた屋台や小麦粉やタコ)を示す財務諸表が貸借対照表です。

そして、「投資の成果」、つまりは「利益」を示す財務諸表が損益計算書です。


投資家は、自ら企業の成果に関する予想を行い、投資判断の材料にします。

一定期間の後にその判断(予想)が正しかったのかを検証することになります。

その判断材料が、会計情報です。


そのために会計情報に求められるのは、予想ではありません。

企業がどれだけ儲かるであろうかではなく、どれだけ儲かったのか。

投資家が究極的に求めるのは予想でしょう。

しかし、財務報告に求められるのは、企業の行っている投資のポジションと成果というあくまでも結果としての事実です。

結果としての成果(業績)を示すもの、それが「純利益」です。


リスクからの解放とは、財産法的な包括利益をこのような企業の業績指標としての利益(純利益)にしぼりこむための考え方です。

投資の成果は、投資の目的に応じて考えられるべきでしょう。

概念フレームワークでは、投資目的に対して期待どおりの確定した成果があがった段階で成果(利益)を把握すべきだと考えた訳です。


企業の活動、それは、投資家から集めたキャッシュを何らかの事業に投下し、運用して増やす事を意味します。

同様に資金を投入するといっても、たこ焼事業に進出するのと資金を株式で運用するのとでは意味が違うでしょう。

前者(事業投資)は、いわば一般の事業会社における本業で、よい物やサービスを適時に提供することに主眼がおかれるでしょう。


これに対して企業の行う金融投資(株式投資等)は、その性格がやや異なります。

一般的な事業のように製造や販売における努力を要しません。


たこ焼を一生懸命焼いて得た利益と株を買ったら値段が上がって儲かった利益。

この二つの利益に対して異なる考え方がとられるべきだと概念フレームワークは考えました。


一般の事業投資については、従来の実現の考え方と結果として何ら異なりません。

金融投資について、このリスクからの解放の考え方が生きてくるといってよいでしょう。

そう、問題なのは、金融投資(株等)なのです。



リスクからの解放とは何か(6)



リスクからの解放とは何か(1)