前編、「利益とは何か」では、すでに知識としてあるであろう財産法と損益法という利益計算の方式を題材にしました。

そこから、概念フレームワークにおける財務諸表の構成要素を資産概念を中心に概観しました。


そこで浮かび上がってきた課題、「リスクからの解放」がここでのテーマです。

概念フレームワークで、いわば包括利益を純利益に絞り込むためにとった考え方、それが「リスクからの解放」です。


概念フレームワークで、リスクからの解放とは、「投資にあたって期待された成果が事実として確定すること」をいいます。

従来の実現概念と区別する意味で「確定」という表現をとった感じでしょうか。


従来の実現概念やその延長にある実現可能概念とは何が、どう違うのでしょうか。

それとも本質的に違うのでしょうか。

よくわかっていない事をもとに話を進めても意味がありませんので、もう少し前の段階から考えてみましょう。


リスクからの解放にいう投資は、企業の行う投資を指しています。

リスクからの解放は、「投資リスクからの解放」です。

キーワードはどうも「投資(目的)」にありそうです。

株式や社債を売ったり買ったりする「投資」です。

現実の株や社債の購入経験のある方とない方とでは距離感も異なると思います。

投資に対してもしかするとある種の嫌悪感を持っている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、投資に目を向けることは、この「リスクからの解放」を理解するためには不可欠です。


投資家の行う投資と企業の行う投資。

まずは、簡単な投資家と企業の関係、そして、それぞれの狙いを確認しておきたいと思います。


投資家は株式や債券(社債等)を購入することで企業に資金(キャッシュ)を投下します。

その狙いは、実際には様々かもしれませんが、一言でいえばより多くの資金を手にする事でしょう。

これは私のような著名な投資家はもちろん(←著名なのね)、投資家一般についていえるでしょう。

投資家は、自己の資金を投下し、より多くの資金を手にすることを望んでいる訳です。


企業は、投資家から集めた資金をもとに事業活動を行い、より多くの資金を手にすることをもくろんでいます。

当初の集められた資金よりも多く獲得した資金、ざっくりといってしまえば、これが利益です。

投下資金を超える回収資金、つまりは、回収余剰(投下して回収した残り)としての資金が利益です。


まずは、投資家と企業の目的がそれぞれの投下資金(キャッシュ)を増やす事にあることを確認しておきましょう。



リスクからの解放とは何か(3)



リスクからの解放とは何か(1)