概念フレームワークでは、資産と負債をキャッシュ(現金・資金)に関連付けて定義し、資産と負債の差額を純資産としました。
純資産の変動額は「包括利益」と呼ばれます。
概念フレームワークにおける財産法的な利益、それが「包括利益」です。

このように資産と負債の定義を最初に定める方式は、我国の概念フレームワーク特有のものではありません。
海外の先行する概念フレームワーク等も同様の方式をとっています。
海外の先行する概念フレームワーク等を我国の概念フレームワークが参考にしたという方が適切でしょうか。

このように資産・負債を最初に定める方式は、「資産負債アプローチ」や「資産負債中心観」と呼ばれます。
まずはじめに資産と負債をきっちりと固めるところからこのような呼称がついたのでしょう。
従来よく使われている「主義」や「論」という言葉には、何かそれを貫く筋のようなものが感じられます。
これに対して、「アプローチ」や「観」という言葉は、それによっていることは間違いないのでしょうが、やや距離を置いた印象があります。
新しく登場したこの「資産負債アプローチ」の性格を物語っている部分があるのかもしれません。

資産負債アプローチに対し、従来的な方式(動態論といってもよいでしょう)は「収益費用アプローチ」や「収益費用中心観」と呼ばれます。
これまで我国の制度会計で指導的な役割を果たしてきた企業会計原則は、この収益費用アプローチによっています。
いわゆる新会計基準の多くに資産負債アプローチの考え方が反映されています。
世界の流れをみても時代は、明らかに収益費用アプローチから資産負債アプローチへと移行しつつあります。
少なくともこの流れに抗うことはできないでしょう。
この事は、「事実として」極めて重要です。
先行する海外の動向は、どうやら純資産の変動額としての「包括利益」重視に動きそうな雲行きです。

しかし、我国の概念フレームワークは、これとは異なる道を選びました。
それが、「純利益」重視の道です。

概念フレームワークでは、純資産の変動額を包括利益としました。
そして同じく純資産の変動額から別個の概念である純利益を導き、純利益に関連付けて収益と費用を定義しています。
しかし、同様に純資産の変動額から利益概念を導いているにもかかわらず、概念フレームワークでは、包括利益よりも純利益を重視しています。
海外の概念フレームワークとは異なり、純利益を重視する以上、その理由はあるでしょう。
概念フレームワークの理解には、包括利益と純利益を区別する考え方を知る事が不可欠です。
包括利益から純利益を抜き出す考え方、それが「リスクからの解放」です。

ここでは、このおそらくはなじみのないであろうリスクからの解放について考えてみたいと思います。
またもや長丁場になると思いますが、お付き合いの程、よろしくお願い申し上げます。

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