静態論のもとでは、資産は、売却価値を有する財産と考えられました。
売ったらなんぼ、がある物が資産だった訳です。
※静態論及び動態論の資産概念の詳細については、会計学ノート「動態論の資産概念」をご参照ください。

しかし、必ずしも全ての資産の売却価額が明確な訳ではありません。
また、そもそも企業は、所有財産のすべてを売却することを目的に活動している訳でもありません。
企業は継続的な営利目的活動を営んでいるのです。
企業の目的とするところは、利潤の追求にあります。
全ての資産を売却することを目指している訳ではありません。
企業活動を対象とする企業会計もその目的に見合った企業利益を適正に算定することに重点が置かれるべきでしょう。
このような観点からいえば損益計算がもっとも重視されるべきです。

貸借対照表は、損益計算を行った残り(未解決項目)を記載したものと考えたのが動態論です。
動態論の大きな特徴は、収支計算と損益計算の違いに注目し、その差異が貸借対照表にいくと考えた点にあります。
そこでの資産の典型は、「支出未費用」です。

(借)備   品 100 (貸)現  金100
(貸)減価償却費  20 (貸)備  品 20

支出額(100)のうち費用(減価償却費)にならなかった金額、つまり備品の未償却残額が資産と考えたのです。
このような項目が、「支出未費用」とよばれます。
このように将来的に費用になる資産(費用性資産)と現金やこれに近い資産(貨幣性資産)を資産として捉えているのが、動態論といってよいでしょう。
動態論のもとでの資産概念は、ときにサービスポテンシャルズ(用役潜在性、用役可能性)などとも呼ばれます。
将来において収益の獲得に貢献するような潜在的な用役のかたまりが、動態論のもとでの資産です(まあ、自分で言っててわからないですが)。

これに対して概念フレームワークでは、資産を「経済的資源」と定義しました。
そして、その経済的資源は、「将来のキャッシュの獲得に貢献する便益の源泉」と説明されています。
概念フレームワークでは、将来の現金収入に役立つものを資産と考えているのです。

静態論のもとでは売却したら手にするであろう現金が想定されています。
初学者だった私が仕訳を理解するの思い描いた現金は現実にある現金です。
概念フレームワークに登場する現金(キャッシュ)もこれらと本質的に異なる訳ではないでしょう。

しかし、大きな違いがあるようです。
概念フレームワークにおける現金は「将来」を想定しています。
両者(静態論や私と概念フレームワーク)の間の大きな違い、それは「現在」と「将来」の間にあるもの、すなわち「時間」といってよいかもしれません。

って、時間って何だ?

利益とは何か(7)