【質問】
貸倒懸念債権のキャッシュフロー見積もり法のところです。
たとえば貸付金100000(利息5% 利払日3末 返済日*3年3末)を*1年3末に条件緩和の申し出を受けて3%に引下げに合意した。
解)
これの仕訳ですが
*1年3末
貸倒引当金繰入額3719 / 貸倒引当金 3719
*2年3末
現金預金 3000 / 受取利息 3000
貸倒引当金1814 / 受取利息 1814
*3年3末
現金預金 3000 / 受取利息 3000
現金預金 100000 / 貸付金 100000
貸倒引当金1905 / 受取利息 1905

というようになるとおもいます。
疑問に思うのは5%→3%に引下げたということは回収期間を通して、利息の差額2000円ずつ、各期で損をしているはずです。
しかし上記の仕訳を見てみると、確かに貸倒引当金繰入額3719と緩和時に費用処理していますが各回収期間を通じて
受取利息 1814(2000÷1.05÷1.05)
受取利息 1905(2000÷1.05)
と合計3719分収益として回収しているから全期間を通してみると結局損得0ということになっています。
経済的実態を見ると1814+1905損しているはずなのにどうしてそうなるのかわからなくなってきました。教えてください。
【回答】
結局は、初年度の貸倒引当金の設定部分(繰入)とその後の戻入の考え方が全く逆の関係にある訳ではないというあたりに原因がありそうです。
全く逆の関係にあるならおっしゃるとおり、各期で収益と費用を相殺すれば、損益はトントンです。
しかし、両者の性格・意味が異なれば、それは必ずしも相殺して考えるべきではないことになります。

(1)初年度の貸倒引当金の設定分の損 → 金利が引き下げられたことによる債権の評価減
(2)2年度目以降の貸倒引当金戻入益 → 切下げられた債権に対する受取利息

キャッシュ・フロー見積法とよく似た方法に利息法による償却原価法があります。
計算構造は、なんと「同じ」です。
キャッシュ・フロー見積法は、債権(貸付金)の評価を貸倒引当金の設定を通じて行います。
これに対して割引取得した債券(社債等)には、利息法による償却原価法が適用されます。
債権(貸付金等)に対するキャッシュ・フロー見積法の適用は、債券(社債等)に対して、利息法による償却原価法を適用した場合と同じ効果を狙っていることになります。

次のように考えるとよいかもしれません。
利息の切下時点で、切下げられた2%分に見合う債権の価値は少なくなっている筈です。
これを貸倒引当金の繰入という形で対処したのがキャッシュ・フロー見積法の初年度です。

これは、ちょうど社債などの債券を割引取得するケースと似ています。

(1)額面10万円 表面金利5%の社債
(2)額面10万円 表面金利3%の社債

(1)と(2)では条件が違いますので、(2)を(1)と合せるには、発行価額を引き下げる必要があります。
それが、10万−(1,905+1,814)=96,281 です。
2%の利息をもらわなくてもいい分、発行価額を引き下げる訳です。

この96,281(社債の発行価額)と額面金額(10万)の差額は、償却原価法を適用し、次のように処理しました。

×2年3末 投資有価証券1,814 有価証券利息1,814
×3年3末 投資有価証券1,905 有価証券利息1,905

キャッシュ・フロー見積法は、厳密には、何らかの意味での貸倒を見積っている訳ではないことがわかります。
有価証券の償却原価法による評価とバランスをとるために、その手当を引当金の設定という形で対処しているという方が正確かもしれません。
同条件の社債を割引購入した場合の金額まで債権の金額の評価を切下げるのが、初年度の貸倒引当金の設定の意味です。
これに対して、2年度目以降の貸倒引当金の戻入は、割引取得した社債の帳簿価額を償却原価法によって持ち上げる処理と同じです。
切下げられた後の帳簿価額に対する利息が、貸倒引当金の戻入です。

(1)初年度の貸倒引当金の設定分の損 → 金利が引き下げられたことによる債権の評価減
(2)2年度目以降の貸倒引当金戻入益 → 切下げられた債権に対する受取利息

って、最初と一緒ですが。
キャッシュ・フローはとてもわかりにくいですが、残念ながら(これは私も残念ですが)、各種試験では、本格的出題がなされています。
ので、重要性は、高いといえるでしょう。

(関連記事)
キャッシュ・フロー見積法