資産とは何かの話を続けています。

前回は、簡単な資産の定義の類型を3つ示しました。
定義といっても、いろいろな本に書いてあったものを抜書きして、それをグループ分けし、やや不正確ながら単純化したものです。

(1)プラスの財産
(2)お金(に近いもの)と費用の前払い
(3)なんか有利そうなもの

(1)の類型は案外と多くて、資産の具体的な種類をあげた後に、「もの(財貨)と権利」を資産というという記述は割と多かったと思います。
一般に財産といった場合には、マイナスの財産、つまり、負債も含めることが多いので、それと区別する意味で、「プラス」といってみたり、「ものと権利」という表現をとっているのかもしれません。
簿記の初歩的な本に多かったと思います。

(2)は、より正確にいうと「貨幣性資産と費用性資産」といった方がよいかもしれません。
「貨幣ないしはそれに近い性格をもつもの」と「費用性資産」とが資産という記述です。
(1)が会計の知識がなくてもそれなりにアプローチできると思えるのに対して、これは特に費用性資産というのが、会計の知識がないとアプローチしにくいかもしれません。
これは当時の会計学の本にも結構、多かったと思います。

(3)の類型、というよりも、一言で「資産とは、………である」というタイプです。
もちろんそれ以外の修飾はあるんですが、例えば、経済的便益とか、用役潜在能力などといった訳のわからない(←会計学の先生ごめんなさい)表現がこのタイプに属するでしょうか。
以前にご紹介した概念フレームワークでは、「経済的資源」という表現をとっていました。

さて、もう、勘のよい方は、気づかれたと思いますが、これらの類型は、以前にご紹介した「静態論」、「動態論」、「新静態論」にゆるやかにリンクしているといってよいと思います。
というよりも資産を定義するのに、その前提として、会計をどう考えるかがなければ、きちんとした定義はできないといった方がよいのかもしれません。

この作業を経て、なんか会計学が少しわかった気がしました。
しかし、大きかったのは、静態論のもとでは、資産はこうだというような記述をただ単に追っていただけでは、平板な知識に終わっていたのではないかと思える点です。
もう少し言えば、それまで、覚えたことを書く事はできても、キーワードをつなげて自分の言葉で書くということはできなかった気がします。
それができるきっかけ(の一つ)になったのではないかなあと振返ると思えるのです。

資産とは何か、もう少し続きます。