【対象=簿記論、制限時間10分、難易度B】

(問題)
次の各文章について、正しいものには○、誤っているものには×を付すとき、正しい組合せの番号を一つ選びなさい。

ア.簿記では、取引の仕訳と主要簿への記帳が正しく行われていることを確かめるために、総勘定元帳の勘定記録を集計して、定期的に試算表の作成が行われる。
試算表は、複式簿記における貸借平均の原理に基づいて、取引の仕訳や主要簿への記帳に誤りがないかどうかをチェックする役割りを果たす。
ただし、試算表のこのような役割はあくまでも貸借平均の原理に基づくものにすぎず、試算表の作成によってたとえ誤りが発見されない場合でも、そのことは取引の仕訳や主要簿への記帳にまったく誤りがないことを100%保証するものではない。

イ.個人企業の簿記では、損益計算書と貸借対照表は当期純損益(当期純利益または当期純損失)の金額を通して関係づけられており、当期純損失の金額を損益勘定から資本金勘定へ振り替えるための決算振替手続が、フローの勘定とストックの勘定を結びつける役割を果たしている。
これに対して、株式会社の簿記では、損益計算書と貸借対照表は当期未処分損益(当期未処分利益または当期未処理損失)の金額を通して関係づけられているため、当期純損益の金額を損益勘定から未処分損益勘定(未処分利益勘定または未処理損失勘定)へ振り替えるための決算振替手続は、フローの勘定とストックの勘定を結びつける役割を果たしていない。

ウ.連結財務諸表を作成する場合には、連結会社相互間の内部取引を相殺消去するとともに、連結会社相互間の売買取引から生じる未実現損益を消去しなければならない。
ただし、連結財務諸表は、基準性の原則に基づき、連結会社の個別財務諸表を基礎として作成されるものであるため、内部取引の相殺消去や未実現損益の消去に係る仕訳が連結会社の会計帳簿に記入されることはない。
一方、本支店会計においても、本支店合併財務諸表を作成する場合には、本支店相互間(本支店間または支店相互間)の内部利益を相殺消去するとともに、本支店間の売買取引から生じる内部利益を除去しなければならない。
この場合も、本支店合併財務諸表は、本支店の個々の財務諸表を基礎として作成されるものであるため、内部取引の相殺消去に係る仕訳が本支店の会計帳簿に記入されることはない。

エ.大陸式決算法と英米式決算法の主な違いは、貸借対照表勘定の締切方法にある。大陸式決算法では、貸借対照表勘定の締切にあたって、残高勘定のような一定の決算集合勘定を用いて決算振替仕訳を行い、これを転記することにより資産、負債、および資本の各勘定の締切が行われる。
これに対して、英米式決算法では、貸借対照表勘定の締切に当たって、特に決算振替仕訳は行わず、資産、負債、および資本の各勘定に残高の金額を直接記入することにより締切が行われる。
なお、英米式決算法では、直接記入された残高の金額の正しさを検証するために、繰越試算表と呼ばれる一種の残高試算表が作成される。

オ.一定の継続的な役務提供契約から生じる費用や収益については、決算に当たり、見越しまたは繰延べと呼ばれる決算整理が実施される。
このような決算整理から生じる資産または負債の勘定のことを総称して経過勘定という。
具体的には、費用の見越しを表す前受収益、費用の繰り延べを表す未払費用、および収益の繰り延べを表す未収収益の四つがこれに該当する。
なお、経過勘定については、通常、次年度の初めに、その残高の金額を関連する費用または収益の勘定に振り戻す記帳が行われる。

1.ア○  イ○  ウ○  エ×  オ○
2.ア×  イ×  ウ○  エ×  オ×
3.ア○  イ×  ウ×  エ○  オ×
4.ア×  イ○  ウ×  エ○  オ○
5.ア○  イ×  ウ○  エ○  オ×

(解答)


(解説)
平成17年度 公認会計士試験(短答式) 問題2 です。

ア ○
仕訳そのものの誤りや勘定科目のみの誤転記は、試算表からは検出できません。

イ ×
株式会社における資本振替(損益××× 未処分利益×××)は、まさにフローとしての利益をストックとしての利益に振替える手続であり、フロー勘定とストック勘定を結びつける役割を果たしています。

ウ ×
連結財務諸表の作成においては、連結にかかる仕訳が会計帳簿に記録されることはありません。
これに対して、本支店会計では、内部利益の除去に係る仕訳(繰延内部利益控除××× 繰延内部利益×××)が会計帳簿に記録されることになります。

エ ○

オ ×
「見越し」と「繰り延べ」が逆です。