実現主義は、伝統的には、資産の販売と貨幣性資産の受領をもって収益を計上しようとする考え方を意味します。

しかし、有価証券の評価益を実現概念によって説明するには、実現を実現可能(販売可能)に拡大し、有価証券を貨幣性資産と考える必要があります。

もっとも、なぜ、実現可能が実現と同じなのかといった素朴な疑問は残るでしょうし、また、有価証券を貨幣性資産とは必ずしも言い切れない面もないではありません。

企業会計の全体像を描きながらある特定の出来事を矛盾なく説明するのは、想像以上に難しいことといってよいのかもしれません。

概念フレームワークでは、このような混迷する実現概念の代わりに「リスクからの解放」という考え方を採用しました。

実現に対する混迷を受けて新たな概念を持ち込まれても、へなちょこ講師には、正直、よく分かりません(←こういうときだけ正直なんだよなあ)。

リスクからの解放という考え方が定着していくのかどうかも含めて、今後の課題ということにさせてください。

ただ、あくまでも大事なのは、実現概念そのものが混迷しているという事実そのものであることには充分留意する必要があるのではないかと思います。

わかっていないからこそ大事なこともあるといったところでしょうか。


アメリカにおいて、有価証券に関して原価主義による問題が露呈したのは、今から20年以上も前のことです。

その間、日本では、原価主義が維持された訳ですが、もちろん、時価主義を模索するような議論はありました。

下記のような税理士試験での出題実績は、このような議論の激しさを象徴しているといってよいのではないかと思います(っていうか、出すぎですね)。

ぜひ、模範解答を覚えるといったことではなしに、ご自分の言葉で、解答を考えてみてください。

(平成4年 第二問 1)
あなたは、取引相場のある株式を貨幣性資産であると考えますか、費用性資産と考えますか。いずれかを答案用紙の空欄に入れ、その理由を示しなさい。


(平成8年第一問 3)
市場性ある有価証券等の評価原則として時価主義を採用する考え方があります。これらの資産について、時価主義を求める根拠を述べなさい。


(平成11年 第一問 1)
有価証券の経済的本質については、貨幣性資産とみる見解があります。この見解について述べなさい。


(平成12年 第二問 1 (1))
収益の認識基準について、売買目的有価証券を例にとり、説明しなさい。


(平成16年 第二問 問1 (2))
(金融商品会計)基準が、………(4区分ごとの)評価基準の適用と評価差額の処理を要求しているのはどのような理由によるものか、……有価証券ごとに説明しなさい。


(平成18年 第一問 4)
金融商品に関する会計基準(以下「基準」という。)においては、売買目的有価証券について時価をもって貸借対照表価額とし、その評価差額は当期の損益として処理することとされている。「基準」で示されるこうした会計処理の根拠を、下線部(ア)で要求された会計処理と関連させながら論じなさい。
*下線部(ア)⇒実現主義


(平成26年 第二問 3)
「金融商品に関する会計基準」におけるすべての有価証券の評価は同一ではない。「金融商品に関する会計基準」における下線部(ア)に関して、売買目的有価証券は、期末時点で時価が有用な情報と考えられ、かつその評価差額は当期の損益として処理されているが、その理由を説明しなさい。
*下線部(ア)⇒売買目的有価証券の会計処理


(平成28年 第一問 4)
売買目的有価証券の評価差額を当期の損益としてとして処理する一方で、その他有価証券の評価差額を、連結財務諸表上はその他の包括利益累計額(個別財務諸表上は評価・換算差額等)に計上するか、又は、時価が取得原価を上回る評価差額を連結財務諸表上はその他の包括利益累計額(個別財務諸表上は評価・換算差額等)に計上し時価が取得原価を下回る評価差額を当期の損失として処理することになっている。このように、有価証券の評価差額の処理方法が売買目的有価証券とそのた有価証券とで異なる理由と、その他有価証券の時価が取得原価を下回る評価差額の処理方法が2種類ある理由を述べなさい。




実現とは何か(完)