資産を売却し、売却した資産を賃借する取引が「セール・アンド・リースバック取引」です。

【セール・アンド・リースバックの意義】
「セール・アンド・リースバック」とは、借り手が、所有物件をリース会社等に売却し、そのリース会社等からその物件のリースを受ける取引です。

固定資産を売却後、直ちに借りる取引がリース・バック取引です。



【ファイナンス・リースの会計処理】
(1)資産売却日

減価償却累計額××× 固定資産  ×××
現金預金   ××× 長期前受収益×××

※通常の売却益→長期前受収益

売却損の場合は、長期前払費用



(2)リース開始日
固定資産××× リース債務×××

※取得価額……売却価額



(3)リース料支払日

リース債務××× 現金預金×××
支払利息 ×××


(4)決算日
減価償却費 ××× 減価償却累計額×××
長期前受収益××× 減価償却費  ×××

※下の仕訳は、次の二行で行う場合もあります。
長期前受収益  ××× 長期前受収益償却×××
長期前受収益償却××× 減価償却費   ×××



【オペレーティング・リースの会計処理】
(1)資産売却日
減価償却累計額××× 固定資産  ×××
現金預金   ××× 長期前受収益×××


(2)リース開始日
仕訳なし


(3)リース料支払日
支払リース料××× 現金預金×××


(4)決算日
長期前受収益××× 支払リース料×××



【会計処理の考え方】
やや、長くなりますが、一つずつみていきましょう。

(1)資産売却日の処理
リース・バック取引は、資産を売却し、ただちに賃借する取引です。

法的な所有権は移転しますが、実質的に資産を使用し続けるという事実は変りません。

リース・バックの会計処理は、損益面で「売却→賃借」がなかった場合と同じ効果を狙っています。

取引そのものはあったても、損益をドンとたてる(特に利益をドンとたてる)のはダメですよね。

そのスタートは、売却損益を繰延べる処理にはじまります。

資産を売却した段階での売却益は、長期前受収益(売却損は、長期前払費用)として、将来の期間に繰延べます。


(2)リース開始日・(3)リース料支払日の処理

基本的な考え方は、通常のリース取引と同じます。

ただし、リース資産の計上金額は、所有物件の売却価額(所有権移転外ファイナンス・リースの場合には、割引現在価値との低い金額)とします。


(4)決算日

所有権移転ファイナンス・リースについては、残存価額を「当初の」取得価額の10%として減価償却を行います。

同時に繰延べられた損益(長期前受収益)を減価償却と相殺する処理を行います。

この結果、最終的な減価償却費が、リースバックを行わなかった場合の減価償却費と基本的には、等しくなる点を確認しておきましょう。



【関連記事】
リース取引の意義と分類
ファイナンス・リースの要件と期中処理
取得原価と支払利息
決算時の処理
オペレーティング・リース



税理士試験 簿記論 講師日記 全テキスト記事一覧