【一連の会計処理】
国庫補助金の圧縮記帳の一連の会計処理(積立金方式)を直接減額方式と同様の事例で考えてみましょう。

(事例)国庫補助金100で、機械300(耐用年数5年、残存価額なし、定額法)を取得

(1)国庫補助金の交付時
(借)現金預金100(貸)国庫補助金収入100

(2)固定資産の取得
(借)機械装置300(貸)現金預金300
※ここまでは、直接減額方式と同様。

(3)決算
(借)減価償却費   60(貸)減価償却累計額 60
   繰越利益剰余金100   国庫補助積立金100 ←積立て
   国庫補助積立金 20   繰越利益剰余金 20 ←取崩し
※減価償却費:取得原価300÷5年=60
 圧縮前の金額が基礎になります。

【積立金方式の考え方】
圧縮記帳の本来的な意味は、取得原価(帳簿価額)の圧縮です。
その点からすれば、取得原価を直接減額する処理(直接減額方式)が想定されているといえるでしょう。
しかし、全く同一の固定資産を取得した場合を考えるとわかるように、国庫補助金を取得したか否かで、取得原価、そしてその後の減価償却費が異なるのは必ずしも理論的ではありません。
以前は、引当金として計上することもありました。
しかし、現行の企業会計原則注解18に照らして、国庫補助金を引当金計上することは妥当ではありません。
直接減額方式、引当金方式ともに、企業会計上(ないしは商法上)は、必ずしも好ましい処理方法とはいえません。
このような事情を踏まえ、税法で、直接減額方式、引当金方式以外に認めているのが、積立金方式です。

剰余金の処分と圧縮記帳は、本来的には、何ら関係がある訳ではありません。
剰余金の処分により、任意積立金を積立てた場合(意思表示をした場合)には、税法上、直接減額方式による圧縮記帳を行ったのと同様の効果を認めているに過ぎません。

積立金方式によれば、固定資産の取得原価は、当初の取得原価のままですから、企業会計上は、その金額を基礎として減価償却を行うことになります。
ただし、税務上は、いずれの方法によっても所得金額は同じになるべきで、積立金方式による減価償却費のままでは、税務上は、多すぎることになります。

直接減額方式による減価償却費相当額(損金算入限度額)と積立金方式による減価償却費相当額(企業の計上した減価償却費)の差額は、税務上は、益金の額に算入されることになります。
積立金の積立てという本来は、当期の損益(所得)に関係のない行為で、損金算入を認めるのですから、その取戻し、つまりは、逆の行為が行われた場合には、全く逆の処理を行うことになります。
つまりは、益金算入と圧縮積立金の取崩しを行います。

積立金の積立て(会計) …… 損金算入(税務)
積立金の取崩し(会計) …… 益金算入(税務)
この二者が、セットで行われます。


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