伝統的な(今までの)実現概念は、売上では、商品の販売(より具体的には、商品の引渡)を意味していました。
企業は、商品の販売により、現金や現金等価物を受取ります。

このように売上収益を商品販売時点で計上するのは、収益の計上を確実なもののみに限定したいという制度的な理由からといえるでしょう。

確実な収益を計上するのでなければ、配当や税金の支払いはできません。


しかし、今(前からかな)、この実現概念が揺れています。

概念フレームワークでは、この実現概念に代えて、「リスクからの解放」という考え方を採用しました。

また、それ以前からも実現概念について、上記のような限定された意味(商品引渡+現金等の受領)を拡張しようという試みがなされていました。

「実現概念の拡大」が模索されていたのです。

従来の実現概念では、何がまずかったのでしょうか。

また、従来の実現概念は、必要なくなってしまうのでしょうか。


実現概念は、収益の認識に関する基本的な考え方です。

実現概念を考える際には、損益計算(収益−費用)をどのように考えているかの理解は欠かせません。

企業会計原則の規定(損益計算書原則一A等)をもとに、ややラフに損益計算のあり方を考えてみましょう。

(1)収益・費用を大枠では「発生」で考える。
(2)でも、収益については、「実現」という限定が入る。
(3)実現収益に「対応」する費用が各期に「配分」される。


今、一つの損益計算に対する見方を示せば、こんな感じになるかと思います。

このようなまとまった見方では、説明できない出来事の存在、それが実現概念の拡張・変質を「試みる」、あるいは、「試みなければならない」理由といえます。


それは、資産の評価益の存在です。

より具体的には、有価証券の評価益、あるいは、有価証券を時価評価することを、企業会計上、どのように説明すればよいのか。

有価証券の時価評価を伝統的な損益計算の枠組みの中でどのようにとらえればよいのか。

実現概念を拡張・変質しなければならない「現実的な理由」は有価証券の時価評価にあります。


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