有価証券は、保有目的ごとにその評価が異なります。

その保有目的を変更した場合の取扱いを考えてみました。


【基本的取扱い】
金融商品会計基準では、保有目的に応じて有価証券を4つに区分し、それぞれに応じて評価します。

保有目的区分に応じて評価及び評価差額の取扱いが異なるので、保有目的区分の変更は原則として認められません。

しかし、資金運用方針の変更等の一定の場合に限り、保有目的区分の変更が認められます。

保有目的区分の変更を行った場合は、その時点での変更前の評価基準による評価を行います。


【考え方】
いったん変更前の保有目的区分による評価を行い、変更後の保有目的区分の勘定科目に振替える処理を行うと考えるとよいでしょう。

例えば、「売買」→「その他」(簿価100、時価90)の例で考えてみましょう(?と?は考え方です)。

(1)評価替
(借)有価証券    90 (貸)有価証券100
   有価証券評価損益10

(2)科目の振替
(借)投資有価証券90 (貸)有価証券90

(3)相殺(←結果として、この処理を行えばよい)
(借)投資有価証券  90 (貸)有価証券100
   有価証券評価損益10


【その他→売買】
「その他」→「売買」に関しては、例外的に、変更後(つまり、売買)の評価基準による評価を行うこととされます。

「その他」も、「売買」も時価評価である点は変りません。

「その他」については、原則として、評価差額が資本直入されており、この取扱いに配慮したものといってよいでしょう。


「その他」→「売買」(簿価100、時価90)の例で考えてみましょう。
(取扱い)
(借)有価証券    90 (貸)投資有価証券100
   有価証券評価損益10

※この有価証券評価損益は、「投資有価証券」を「売買目的有価証券」の評価基準で評価したものであり、「投資有価証券評価損益」である。

では、何故、変更前の評価基準でいかないのかというと、うまいこといかないからです。
具体的に考えてみましょう。

(1)評価替
(借)投資有価証券  90 (貸)投資有価証券100
   有価証券評価差額10

(2)科目の振替
 A 有価証券 90 投資有価証券  90 →これだと評価差額10が残ってしまう
 B 有価証券100 投資有価証券  90 →これだと簿価で振替えてることになる
         有価証券評価差額10

そもそもの原因は、その他有価証券の評価差額が、純資産直入されることにあるといってよいでしょう。

これが、評価損益であれば、何ら問題はありません(って、それじゃ売買と同じか)。


【関連記事】
有価証券の増加を記録するタイミング
有価証券の評価指標と評価差額の取扱い
有価証券の勘定科目
洗替処理と切放処理
有価証券利息
償却原価法
定額法と利息法
純資産直入法とは何か
部分純資産直入法
減損処理
保有目的区分の変更の取扱い
保有目的の変更の会計処理
有価証券の差入等


有価証券<目次>

テキスト記事一覧