簿記一巡のおおまかな手続は、「開始手続」(開始記入等+再振替)→「期中手続」→「決算手続」からなります。

ここでは、決算手続における英米式と大陸式との違いをみておきましょう。

おおまかな決算手続の流れは次のとおりです。


決算整理 → 決算振替 → 帳簿の締切



【決算整理】

決算整理は、減価償却等の期中ではきちんと損益が算定されていなかった項目について正しい損益や財産を計算するための手続です。



【決算振替】

決算振替は、損益振替と資本振替からなります。

損益振替は、費用・収益の勘定を集合勘定である損益勘定に振替える手続です。

精算表等で損益が算定されても帳簿(元帳)上、損益が示されている訳ではありません。

帳簿上、損益を算定するための手続が損益振替です。

資本振替は、利益を前提とすれば、算定されたフローとしての利益をストックとしての利益である資本の勘定(資本金又は繰越利益剰余金)に振替える手続を意味します(←ってわかりにくいなあ)。

個人企業:(借)損  益××× (貸)資 本 金×××

株式会社:(借)損  益××× (貸)繰越利益剰余金×××



【帳簿の締切】

英米式と大陸式とで違いがあるのは、帳簿の締切です。

英米式では、帳簿(元帳)上、直接、残高の生じている逆側に次期繰越と記入して締め切ります。

仕訳帳への記入は行いません。

ただし、繰越の記入がきちんと行われているかがこれではわかりません。

そこで、繰越試算表を作成してその貸借の一致をもって、繰越処理がきちんと行われていることを確認します。

大陸式の場合(仕訳帳と元帳の合計額の一致)よりもやや緩めのチェックといってよいでしょう。

大陸式では、仕訳→元帳という手順を重視するので、帳簿の締切の段階でも、いきなり帳簿(元帳)上の締切を行うのではなく、必ず仕訳帳を経由します。

そのために、残高勘定という集合勘定を設けて、いったん残高勘定を相手に仕訳を行い、これを転記した上で、元帳を締め切ります。

なお、残高勘定の名称ですが、純大陸式の場合には、開始手続の段階で残高(開始残高)勘定を設けるので、これと区別する意味で、「決算残高」または「閉鎖残高」勘定が設けられることになります。

準大陸式の場合には、開始手続において残高勘定は設けられていないので、ただの「残高」勘定でよいでしょう。



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