【資産負債法と繰延法】

税効果会計の考え方には、資産負債法と繰延法(費用収益法)があります(かなり財表チックなので、簿記論のみ受講の方は流してください)。

将来減算一時差異を例にとれば、次の処理を行います。

(借)繰延税金資産××× (貸)法人税等調整額×××

「資産負債法」は、いわば、借方・繰延税金資産(税金の前払)をきちんと計上しようとする考え方です。

「繰延法」は、貸方・法人税等調整額(法人税等とセットでの費用としての税金)をきちんと計上しようとする考え方です。

通常は、どちらの考え方によっても結果は変わりませんが、次の点で違いがあります。

(1)有価証券の取扱い

(2)税率の考え方

(3)繰越欠損金の取扱い



【有価証券の取扱い】

有価証券の取扱いをみておきましょう。

売買目的有価証券は、税務上も時価評価が原則であり、税効果会計の適用はありません。

満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式に、評価上の差異は生じません。
税効果会計の適用があるのは、その他有価証券です。



【全部純資産直入法】
(1)貸方差額の場合
(借)投資有価証券××× (貸)その他有価証券評価差額金×××
               繰延税金負債        ××× ←差異×税率

(2)借方差額の場合
(借)その他有価証券評価差額金××× (貸)投資有価証券 ×××
   繰延税金資産        ×××        ←差異×税率

つまりは、評価差額を、その他有価証券評価差額金(株式等評価差額金)と税効果部分(借方は繰延税金「資産」、貸方は繰延税金「負債」)です。


【部分純資産直入法】
部分純資産直入法採用時の評価損(借方差額)は、税務上、損金算入が認められていないので、通常どおり税効果会計を適用します(将来減算一時差異に該当する)。

(1)貸方差額の場合……全部純資産直入法と同様
(借)投資有価証券××× (貸)その他有価証券評価差額金×××
               繰延税金負債        ××× ←差異×税率

(2)借方差額の場合
(借)投資有価証券評価損××× (貸)投資有価証券 ×××
   繰延税金資産     ×××    法人税等調整額××× ←差異×税率


【翌期の処理】

その他有価証券については、洗替方式が適用されるため、翌期首に逆仕訳が行われます(振戻処理等と呼ばれます)。

決算整理段階で、この処理が行われていなければ、行う必要があります。



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