【償却原価法の意義】

「償却原価法」は、債権や公社債等の取得価額と額面金額が異なる場合に、その差額を取得時から弁済(償還)時までに配分し、その分の帳簿価額を増減させる方法です。

償却原価法には、「利息法」と「定額法」があります。

利息法が原則的方法です。



【定額法と利息法】

定額法は、取得価額と額面金額の差額を償還(貸付)期間にわたって、均等額ずつ配分する方法で、利息法は、複利を加味して配分する方法です。

(償却額の具体的計算方法)

定額法 → (取得価額−額面金額)÷期間

利息法 → 直前簿価×実効利子率



【具体的処理例(定額法)】

取得価額と額面金額の差額が、金利である以上、利息法が合理性を有しています。

なかなか数字を使った説明が(私の能力では)難しいですが、やってみましょう。

まずは、定額法です。

(1)社債の場合

社債の発行条件等:

額面価額100円  発行価額 95円  償還期間  5年

上記社債を当期首に満期保有目的で取得


取 得 時:(借)投資有価証券95 (貸)現金預金95

1〜5年目:(借)投資有価証券 1 (貸)有価証券利息1


計算は、(額面金額100−発行価額95)÷償還期間=1 とやっています。


(2)貸付金の場合
償却原価法は、社債等の債券だけでなく、貸付金等の債権にも適用があります(差額が金利の調整時)。

貸付条件等:
貸付金100円(額面)を95円で当期首に取得した。

(または、100円貸すけど、5円は利息として天引きして、95円を払った)。

残貸付期間 5年


取 得 時:(借)貸付金95 (貸)現金預金95

1〜5年目:(借)貸付金 1 (貸)受取利息1



【具体的処理例(利息法)】

問題はこの95円という貸付金が、毎年1円ずつ、増えていく(定額法)のが、合理的かどうかです。

結論的には、やや合理性を欠きます。

通常は、95円の貸付金(預金でも同じです)に利息がつきます。

初年度にその利息を「受取っていれば」同様に2年目も95円の貸付金に利息がつきます。

利息を受取っているならいいです。

しかし、実際には、利息分(5円)は、最後にいっぺんに受取るのです。

そうすると、

1年目  95円の利息

2年目 (95円と1年目の利息)の利息

でなければおかしいでしょう。

少なくとも利息の金額は、だんだんと増えていくハズです。

とすると最初の95円に対する利息は1円より小さくていいハズです。

この利息(利率)の計算が数学的には、レベルが高いです。

私には、皆目できませんが、簿記でこの計算は必要ないのでちょっと一安心。

この利率が「実効利子率」と呼ばれます。

実効利子率は、その利子率をかけて利息法を適用していくと、最後には、貸付金(投資有価証券)がちょうど額面金額になる利率を意味します。

いや、これは不思議ですよね。

具体的な計算は、直前の帳簿価額に実効利子率をかける。

これだけです。

この実効利子率ってのは、債券や株式投資をなさっている方の「実質利回り」に等しいです。


【償却原価法の雑感】

実効利子率を算出できる必要はありません。

しかし、その基本的な考え方は知っている必要があります。

この辺は、試験委員もそう考えているハズです。

ただし、実際の出題の難易度が高すぎると合否に影響を与えない場合もあるでしょう(後述日商参照←むずい)。

税理士試験でも第53回に出題があります。

利息法の一般的学習及び問題演習が終わった後にぜひ手がけてみてください。


【参照問題】

日商一級 第102回 会計学 第2問

税理士試験 第53回(平成15年)第2問



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