税理士試験 簿記論 講師日記

税理士試験 簿記論、財務諸表論、簿記検定の問題、学習方法等をアドバイス。

祝「生誕500年」ちょっと!!

複式簿記の誕生は中世のヨーロッパです。

既に500年を超える歴史があることになります。

その間、おどろくほど基本的な仕組みは変わっていないといいます。

激動の時代に長く変らないことが積極的な評価を受けるとは限りませんが、複式簿記がその姿を変えずにいられたのもその基本的な仕組みが、シンプルで、かつ、しっかりしたものだったからでしょう。


複式簿記という器そのものは、時代によりそれほど変わっている訳ではないようですが、そこで記録される企業の活動は大きな変貌を遂げているといってよいかもしれません。

ただ、その企業活動を記録し、これを報告するためのルールがこれまで変革の波にさらされてきたのかというと必ずしもそうではありませんでした。

企業会計原則や商法の計算規定にしても、それほど改正の頻度が高かった訳ではありません。

企業会計原則ですと10年に1度改正があるくらいのものだったのです。

この時代はよかった(←ひとりごとです)。


それがこの数年、新たな会計基準がたてつづけに公表され、商法の改正頻度も激しくなっています。

新基準の中には、すでに改訂されているものすらあります。

なぜこのような事態が生ずるのでしょうか?

今までは、たまーに変えていればよかったものを、頻繁に変えなければならない。

その理由は、「会計基準」そのものが、「市場」と向き合わなければならなくなったからといってよいのではないでしょうか。


その意味では、「会計基準」も「週間少年ジャンプ」も同じです(って、同じか?)。

市場の声に、「会計」もこたえざるを得ない時代になったといってよいのかもしれません。


次回は、我国の会計基準が市場と向き合わざるを得なくなったいきさつについて、簡単に触れたいと思います(←って、なんか方向性変わってないか)。


カウンターがついに1万の大台目前になりました。

極めて限定された題材しか扱っていないブログをご愛顧いただきまして、本当に感謝しております。

今後ともご愛顧の程、よろしくお願いいたします。

リース取引の意義と分類

【リース取引の意義】

リース取引は、資産の「貸し借り」です。

リース会社(貸手)の処理を問われることはやや少ないので、通常は、資産を借りる行為がリース取引といえるでしょう。

以後の記述でも借手を前提にしている場合があります。

もちろんリース会社は、だだでは貸しません。

お金をとります。

特定者間での有償の貸借取引、つまり、「賃貸借」取引がリース取引です。



【リース取引の分類】

リース取引は、大きく二つに区別されます。

一つが、買ったのと同じじゃね、という取引。

これをファイナンス・リース取引といいます。

もう一つがそれ以外(借りてる)オペレーティング・リース取引です。

それぞれ、実態(売買か、賃貸借か)に応じて、会計処理(売買処理、賃貸借処理)を行うことになります。

(1)ファイナンス・リース取引   → 売買処理

(2)オペレーティング・リース取引 → 賃貸借処理



【ファイナンス・リース取引】

ファイナンス・リース取引は、ラフにいえば、資金を借りて、その資産を買ったのと同様の取引です。


(借)現金預金××× (貸)借 入 金×××

(借)固定資産××× (貸)現金預金×××


資金を借りて、資産を買ったならそのとおりに処理(売買処理)すべきでしょう。

もっとも実際のお金の動きはありません。

現金預金はいらないので次の感じになります。


(借)固定資産××× (貸)借 入 金×××


また、実際には、お金を借りているのではありません(借入金⇒リース債務)。

法的には所有しているわけでもありません(固定資産⇒リース資産)。

で、次の感じになります。


(借)リース資産××× (貸)リース債務×××


借方のリース資産は、備品等の勘定科目を使うこともあります。


やや特異なのが、リース期間終了時に所有権が移転するか否かで若干、取扱いが異なる点です。

リース期間終了時に所有権が移転するリース取引が「所有権移転ファイナンス・リース取引」です。

所有権が移転しないリース取引は、「所有権移転外ファイナンス・リース取引」ですす。

ちと言葉が長いですが、慣れです。

厳しかったら先に20回復唱しましょう。

最終的に所有権が移るかを重視してるんですね。


【オペレーティング・リース】
オペレーティング・リース取引は、純粋に借りている取引です。

単に借りているだけなので、賃借料(支払リース料)を費用処理します。

これは建物を借りているときに「支払家賃」とするのと同じです。



【関連記事】
ファイナンス・リース取引の要件と期中処理
取得価額と支払利息
決算時の処理
オペレーティング・リース取引
セール・アンド・リースバック



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「努力・友情・勝利」とアンケート

もうかなり以前の話になりますが、週間少年ジャンプという少年マンガ誌の発行部数(出版社公表)が、600万部を超えたことがあります。

この600万部という数は、とてつもなく恐ろしい数字です。

三大新聞の一角に食い込むほどの数のジャンプが「毎週」書店や駅から読者の手に渡っていたことになります。

す、すごい。


その前後に元編集者が書いた本を読みました。

手元にその本がないので、確かではありませんが、週間少年ジャンプの編集方針(だったかな)が、タイトルにある「努力・友情・勝利」というキーワードだったそうです。

これに「小学校4年生でもわかる」内容というのが、ジャンプの紙面に載るマンガということのようでした。

典型的なストーリーと徹底的なわかりやすさということでしょうか。


ジャンプ600万部を支えたのが、このような編集方針とはがきによるアンケートのシステムです。

アンケートによる人気投票を紙面にリアルに反映させる訳です。

アンケートで下位が続くと連載打ち切りなんてことになるのでしょう。

ジャンプはこれを徹底してやったようです。

ジャンプ600万部が編集方針とアンケートシステムのみで達成できた訳ではないでしょうが、その大きな要因であったことは間違いないでしょう。


読者(消費者)の要求に適う作品が生き残っていく訳です。

ただ、このようなシステムは、必ずしもマンガに限った話ではなく、様々な商品の販売にも導入されています。

そして、そのスピードは、インターネットの普及によってどんどん加速しているように思います。

それがいい事なのか悪い事なのかはわかりませんが、世の中のうつり変わりに敏感とはいえない私ですら感じることがありますので、きっとものすごいスピードなんでしょう。


さて、こんな視点が簿記会計にもかかわりをもっています。

そんな予備知識をもって、柴先生の本のタイトル「市場化の会計学」を眺めると何かすごいことが書いてありそうな気がしてきます。


ジャンプと柴先生、いや、違うか、

「市場化」と「会計学」の関係については、稿を改めて書きたいと思います。

会計基準変更時差異

【会計基準変更時差異の意味】

「会計基準変更時差異」は、旧基準による「退職給与引当金」と新基準による「退職給付引当金(退職給付債務)」との差額です。

退職給付会計の導入は、平成12年です。

変更時の会計処理を問う出題は考えにくいですが、会計基準変更時差異が処理されずに残っていることは、考えられます。

具体的には、「会計基準変更時の期首退職給付債務から期首年金資産を控除した金額」(退職給付引当金)と「退職給与引当金」の差額が会計基準変更時差異になります。

会計基準変更時差異=期首退職給付引当金−期首退職給与引当金



【会計処理】

償却期間:当期一括償却、15年以内

償却方法:定額法のみ

振替処理:(借)退職給与引当金××× (貸)退職給付引当金×××

償却処理:(借)退職給付費用 ××× (貸)退職給付引当金×××

会計基準変更時差異は、新しい制度に移行する際の旧制度の名残です。

本来は、移行時に一括償却すべきでしょうが、15年以内での償却も認められています。

3つの未認識項目のうち具体的な年数(15)が出てくるのは、この会計基準変更時差異だけになります。

なお、償却方法は定額法のみです。



【関連記事】
退職給付引当金の概要
退職給付制度の仕組み
退職給付会計の一連の会計処理
退職給付引当金の計算
退職給付費用の計算
過去勤務費用
数理計算上の差異



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最強の過去問

最強の過去問をご紹介します。

何が最強かなどと思われるかもしれませんが、問題を見ると「最強だ」と思っていただけるのではないでしょうか。

思わず国語の問題かいとつっこみをいれたくもなります。

とにかく話のタネに一度だけでも問題をちょっと読んでいただけないでしょうか。

解く必要はなくて、ちらっとみてもらうだけです。






いかがでしたでしょうか?

これはきっと簿記関係の最強の過去問でしょう。

ありえないです。

たぶん公認会計士試験の受験界からも抹殺されてますな。

というか、この問題に関してのご質問は、私の能力外なのでお受けできません。


出題者(笠井昭次先生)の著作を拝見すると試験委員だった当時、直接・間接にずいぶんと文句をいわれたそうです。

それでも3年間、出題を続けたことになります。

出題の意図はわからなくもないのですが………。

というか、問題に書いてあったりもしますが………。

それが国家試験として適切であったかは私にはわかりません(というかそもそも答えがわからない)。

無論、ご本人は、適切だと思っているでしょう。

その真偽は、問題の解答がわからないへなちょこ講師にはもちろんわかりません。

しかし、大事なのは、あからさまな非難の中、3年間、続いたという事実ではないかと思います。


初年度に非難を浴びて、2年度目に軌道修正をするなら、3年目は、修正された路線に近いと考えるべきでしょう。

しかし、2年目に軌道修正しなかったなら、3年目も同じと考えるのが自然です。


さてさて、何かと話題の税理士試験の第2問ですが、これはなかなかのものではないかと思っています。

そして、3年目の今年の軌道修正は、おそらくないでしょう。

そのための心構えはきっと必要で、柴先生のお話は、まだ続くのでした。

数理計算上の差異

【退職給付引当金における予定計算】

年金資産の評価や退職給付見込額(将来の退職金)の計算において、予定(予想)計算を行います。

退職給付費用=勤務費用+利息費用−期待運用収益

勤務費用=退職給付見込額の当期発生分の割引価値

利息費用=前期末退職給付債務×割引率

期待運用収益=前期末年金資産×期待運用収益率

このうち退職給付見込額(将来の退職金)、割引率、期待運用収益等は、あくまでも将来の予測であり、実際もそうとは限りません。



【数理計算上の差異の意味】
「数理計算上の差異」とは、年金資産の評価や退職給付債務の計算における予定と実績の違いを意味します。

また、割引率等の予定数値を変更することもありますが、このような予定計算を行う場合の数値変更に基づく差額も数理計算上の差異です。

見積段階では、この見積計算と実績計算の違いは、会計処理に反映されていません。

まだ計上されていない数理計算上の差異を、「未認識数理計算上の差異」といいます。

考え方は、過去勤務費用と同様ですが、過去勤務費用が仕訳でいえば、

(借)退職給付費用××× (貸)退職給付引当金×××

というようにほぼ、常に、同じ側にしか生じないのに対し、数理計算上の差異は、単なる予定計算と実績との差異であるため、両方が考えられるため混乱しやすい点でしょう(厳密には、過去勤務費用の逆もあります。)。



【会計処理】

(償却開始)発生年または翌年

(償却期間)平均残存勤務期間

(償却方法)定額法(残存価額ゼロ)、定率法

(会計処理)

(借)退職給付費用 ××× (貸)退職給付引当金×××

または退職給付引当金×××    退職給付費用×××

償却の開始は、発生年だけでなくその翌年からも認められているので、注意が必要です。

償却期間、償却方法、会計処理については、過去勤務費用と同様です。



<テキスト記事一覧>
退職給付引当金の概要
退職給付制度の仕組み
退職給付会計の一連の会計処理
退職給付引当金の計算
退職給付費用の計算
過去勤務費用
数理計算上の差異
会計基準変更時差異

<軽めの記事一覧>
未認識数理計算上の差異の償却開始年
未認識過去勤務費用の月割計算
会計基準変更時差異


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簿記作問

問題の作成には気をつかう(←って、間違い多くないか)。

電卓いらずの仕訳問題にしても、

今日は疲れたから短くしておこうとか(←もしもし)。

リンク貼るのめんどうだから参照なしでいいかとか(←おどりゃ)。


問題の作成には気をつかう(←仕切り直しね)。

あまり素直すぎてもいけないし、ひねりすぎても「なんじゃそりゃ」とかのつっこみ攻撃をくらう可能性もある。

案外とつっこみには弱い。

電卓いらずの仕訳問題でも「仕訳なし」というのを出題しているが、「あんた電卓いらずいうたやん」というつっこみが正しい。

待てよ、つっこみの話じゃなかったな。

簿記作問の話でした。


柴先生の本に何か出題につながるヒントはないのかなあと本来の本を読む姿勢ではなく、かなりひん曲がった姿勢で本をみていると、ありますた。

簿記作問の話題です。

といってもただ、簿記作問である先生と意気投合したというだけの記述です。

意気投合したということは、何かが同じってことなんでしょう。

何が同じなんだろう?

これは興味をひきますね。

ただ、残念ながら何も書いてません。


でもピーンときました。

そのある先生は、未確認情報ではありますが、日商の試験委員(検定委員)らしいのです。

ということで簿記論とレベルの近い日商一級の出題を眺めていると商業簿記ではなく、会計学と似ていることに気付きました。

柴先生の出題と日商の会計学の出題が似てる?

会計学の一部の出題と問題の空気といいますか、狙いといいますかが似ているように感じられるのです。


この点に関しては、私の思い込みの可能性もありますので、最近の日商一級と簿記論の両方を受けた方の感想もぜひお聞きしたいです。

簿記論の過去2年の第2問と日商一級の会計学の計算って、似てると思いませんか?
(って、私だけかな)。

過去勤務費用

【過去勤務費用の意味】

「過去勤務費用」とは、退職給与規程が改定される等した場合の退職給付債務の増加(減少)部分をいいます(以下では、増加のケースを想定しています)。

今まで退職給付債務が100円あった。

しかし、退職給与規程の改訂で退職金の支給額が増えて、退職給付債務が120円になったとすれば、この20円部分が、過去勤務費用です。

設定の段階(期首)では、この増加部分は、会計処理に何ら反映されていません。

この会計処理(仕訳)が行われていない部分の過去勤務費用を、「未認識過去勤務費用」といいます。

「認識」は、会計処理が行われていること。

「未認識」は、会計処理が行われていないことです。

未認識過去勤務費用は、発生しちゃってるけど、まだ会計処理(仕訳)として認識されていない過去勤務費用です。

会社上の仕訳処理としては、退職給付債務の増加部分は、次のように認識されます。

(借)退職給付費用100 (貸)退職給付引当金100

この場合、退職給付債務100は、退職給付引当金に反映しています(なお、年金資産等があるため、通常は、退職給付債務と退職給付引当金は、そもそも一致しません)。

仮に年金資産がなかったとしても、未認識過去勤務費用の分だけ退職給付引当金と退職給付債務は一致しないことになります。



【未認識過去勤務費用の会計処理】

(償却開始)発生年

(償却期間)平均残存勤務期間

(償却方法)定額法(残存価額ゼロ)、定率法

(会計処理)退職給付費用××× 退職給付引当金×××

未認識過去勤務費用は、発生年度から、償却を行います。

償却といっても減価償却とは異なり、何もしていない(未認識の)状態から費用処理を行います。

償却の仕訳は、設定の場合と同じです。

(借)退職給付費用×××(貸)退職給付引当金×××

償却期間は、平均残存勤務期間であり、問題に指示される筈です。

また、償却方法としては、定額法(残存価額はゼロ)が一般的だが、定率法の採用も認められているので、問題の指示に従う必要があります。

なお、一括での費用処理(特別損失)も認められています。

問題の指示には、十分注意しましょう。



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退職給付会計の一連の会計処理
退職給付引当金の計算
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市場化の会計学

すごいタイトルをつけてしまいましたが、これは簿記論の試験委員である柴先生の著書のタイトルです。

ちょっと柴先生の話を続けていますんで、しばらく続けられるだけ続けてみようかなと思います。

狙いは、もちろん出題予想にあるのですが、へなちょこ講師が、自分の手には負えないので、情報を開示して皆さんにも予想していただこうというノリだと思ってください。


「市場化の会計学」自体は、私の手には負えません。

これは私のレベルの問題でもありますが、テキストではなく、研究書といってよいと思います。

その奥付に、著書が紹介されています。

「外貨換算会計論」

「テキスト金融情報会計」

「自己株式とストック・オプションの会計」

これにタイトルにあげた「市場化の会計学」が(いずれも税理士試験の簿記論のテキスト等としては、レベルが高すぎると思います)、柴先生の出題のカギを握るといいたいところなのですが、これらからは、まるで出題が(事後的にも)わからないです。

過去の出題を分野分けしてみますと、

平成15年
(1)キャッシュ・フロー見積法(金銭債権)
(2)利息法(有価証券)

平成16年
(3)販売目的のソフトウェアの償却
(4)税効果会計
(5)資本会計

これらについての記述がないんです。

特に平成16年の出題のソフトウェアや税効果会計については、どこに書いてあるのか、状態ですし、資本会計についても、著作は、平成13年の大きな改正前のものです。

つまりは、ヒントがないんです。

これが単なる偶然なのか、あるいは、意図したものなのか(著作からは出題が想定しにくいものを出題しているのか)は、わかりません。

ただ、内容的な話は別として、出題された項目は、特殊なものという訳ではありませんので、3年目も同様の傾向が続くと考えるのが自然かもしれません。

つまり、出題の分野そのものは、通常の簿記論の受験テキスト等でもふれられているものということにはなりそうです。

でもちょっと(かなり)違うというのが、過去2年の柴先生の出題です。

とここからいえることは、うーん、あんましありません。

とりあえずの情報開示でした。
オススメ
税理士財務諸表論穂坂式つながる会計理論【第2版】
穂坂治宏
ネットスクール出版
2021-09-16

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